第四章 第四話 殴るもの、癒すもの、奇抜なもの
森から、モノリスの丘に戻ってきた俺たち。
早速舞先生が、アイテムを購入していた。
「これでよし……明、正座!」
正座させられる、明。
そして、舞先生が購入した「首掛け看板」が吊るされる。
そこには「私はパーティーを全滅させかけました」と記されていた。
「おい! この扱いはねえだろう!」
明の叫びに対し、漣とメアは冷たい視線を送る。
「妥当なラインだと、判断します。何ならば、介錯を行いますか?」
「まあ、当然の結果ね。個人的には、石を抱かせてもいいと思うけれども」
漣とメア、どちらのセリフも恐ろしい。
もっとも、二人とも死にそうな目に遭ったのだから、このくらいは言う権利があるだろう。
この世界では、回復魔法を使うキャラクターは、刃物を装備できないという制限は課されていない。
そのため、漣が前衛寄りの武器を選ぶこと自体は、十分に可能だ。
……恐らく首狩りに適したスキルを持っていないため、確実に首を落とすのは難しいだろうが。
「全く、反省していないわね。ゲームマスター、明に強制チュートリアルをお願いするわ」
舞先生が、空に向かって叫ぶ。
いわゆる「運営への呼びかけ」というものだ。
空から天使が二体降りてきて、明の両腕を掴み、飛び去ろうとする。
「あ、ごめん。連れていくのは30分後にしてちょうだい」
「この石畳の上で、30分の正座?!」
天使が、空に帰っていく。
30分後に、また来るのだろう。
「なんていうか……個性的な人たち、だね」
ニカの言葉が、俺たちに突き刺さった。
確かに、個性的すぎる。
「とりあえず、三人とも初期装備ではどうしようもないと思うから……それぞれのクラスを教えてちょうだい」
それぞれが、クラスを説明する。
明のクラスは『ストライカー』だ。
格闘家の亜種で、打撃に特化したタイプだ。
一般的には、格闘家の上位クラスとされている。
漣のクラスは『アコライト』である。
僧侶系統の初期クラスで、ここからさまざまな方向に特化していくのだ。
ただ、漣の場合は上位の『プリースト』が使う『ヒール・ウェーブ』が使えるという、特別な仕様になっている。
その代わり、通常の『ライトヒール』は使えないようだ。
瞬間的な回復力では、通常のアコライトに劣る。
その代わり、持続的な回復が可能であるため、最終的な回復量は凌駕する。
かなり面白い構成だと、俺は感じた。
メアのクラスは『トリックスター』となっていた。
これは『シーフ』の上級職で、手数と引き出しの多さが特徴的だ。
その分、事前準備が大事であり……初期状態で森に行くはめになったのは、不幸としかいいようがない。
「とりあえず、今のプレイ時間でも受け取れる範囲の、中級クラス装備カタログを渡すわね。一日にプレゼントできる金額が、決まっているみたいだから」
プレイ時間に応じて、プレゼントとして受け取れる範囲が変わってくる。
初心者プレイヤーに高級な装備を持たせて、一気にレベリングすることを防ぐという目的が大きい。
逆に、初心者プレイヤーに持たせた高級装備を、盗賊タイプのプレイヤーが「強奪」する抜け道を防ぐという目的もあるようだ。
盗賊タイプのプレイヤーは、高額なアイテムを盗むことに成功することで、経験値を得ることができる。
だが、困難を乗り越えてこそ経験になるのであり、このような「経験値稼ぎ」は許さないというのが運営の方針のようだ。
それぞれがカタログを開き、あれでもないこれでもないと装備を選ぶ。
かなりの時間が過ぎて、ようやく決まったようだ。
「よし! せっかくだから、俺はこの赤のとび……ぐおっ」
「なるほど。トリックスターの能力は、こうやって使うのね」
メアが早速、新しい装備で使えるようになったスキルを試す。
発動したのは『ロックプレート』。
頭上から落としたり、ダメージ軽減用の盾にしたりと、使い勝手の良いスキルだ。
それを、正座している明の膝の上に発生させたのだ。
明らかに明は、危険な発言をしようとしていた。
それを察知し、防止するために使ったようである。
「うごごご……これは、キツイ……」
「使い方が上手ね。もしかして、前に似たゲームをやったことがあるのかしら?」
明のうめき声を無視して、舞先生がメアに語りかける。
「いいえ。普段使っている機体が、似たようなタイプなので」
確かに、おもちゃの武器で戦う機体。
これは『トリックスター』以外のクラスを当てはめる方が、不自然であろう。
「私は……こんな武器にしてみました」
漣は、巫女っぽい服装に薙刀を装備していた。
接近戦もこなせるよう、工夫したようである。
「俺も、早く選ばせて……おや?」
どうやら、30分が経過したようである。
明の元に、再び二体の天使がやってきた。
両腕を掴み、飛び立つ天使たち。
「あ、足がしびれる……助けてくれ~!」
明の声に、応えるものは誰もいなかった。




