第三章 閑話その2 ヒーロー科二年生の戦い
関西弁には詳しくないため、楓の言動に違和感を感じるかもしれませんが、ご容赦ください。
Side:ヒーロー科二年生
「これで……終わりだよ!」
僕の攻撃で、最後に残っていた『クイーンホッパー』に大穴が開く。
それが、とどめとなった。
統率を失い、混乱する『ホッパー』たち。
「俺の、見せ所だな!」
二丁拳銃を装備した機体が、ホッパーの群れに襲い掛かる。
乱射に見えて、着実に相手を削り、とどめを刺していくその姿は、頼もしい。
「どっ……せい!!」
巨体の機体が、道路標識を武器にホッパーたちを薙ぎ払う。
一撃で、数体のホッパーが吹き飛ばされ、戦闘不能となる。
「隙を狙おうとしたようだけれども……甘い!」
巨体の機体に、襲い掛かろうとしていたホッパー。
しかし、両手にナイフを持った機体が確実に仕留め、攻撃を許さない。
「逃がしはせんで。結界陣『落葉』や!」
離散しようとしたホッパーが、見えない壁にぶつかって墜落する。
そこに拳銃、道路標識、そして僕の棍がとどめを刺していく。
こちら側の負傷は、ごく軽い。
完全勝利といっても、過言ではないだろう。
「ふぅ……飛び回るのは、少し厄介だったな」
二丁拳銃の機体から、声が漏れる。
僕も、同感だ。
「お疲れ。バグの反応はもうない。除装していいぞ」
守先生の声が、現場に響いた。
僕たちは、機体を送還する。
「少し、汗をかいちゃった。学校でシャワーを浴びようっと」
僕の名前は「ミーシャ」。
「ミーシャ=ラビ」が、正確な名前だ。
頭の上には、ウサ耳のデバイスが搭載されている。
ネット上で知り合った友人から、贈られた大切なもの。
脳波によって、ピクピク動くところも気に入っている。
「こちらは何とかなったけど、一年生が心配や」
結界を構築した女性が、出撃した一年生を案じる。
彼女の名前は「楓」。
「神宮寺楓」という、仰々しい名字がついている。
カンサイでは有名な家系らしく、結界や治療はお手の物だ。
「まあ、こちらは数だけという感じだったからな」
少し軽薄そうな、二丁拳銃を扱っていた男が軽口をたたく。
彼の名前は「実」。
「佐藤実」という名前で、年子の妹は別の学校に通っていると聞いたことがある。
「ということは、こちらは足止め。一年生たちの向かったほうが、本命なのかな?」
ナイフを持っていた機体から、少し小柄な少年が現れる。
名前は「良」。
「葛葉良」といい、兄の「優」にコンプレックスを抱いているらしい。
「この機体、もう少し動ける範囲をとれないか?」
最後に、巨体の機体から現れた人物が、文句を言う。
名前は「ガイン」。
「ガインナッセ=クラッシュボルト」が正式な名前らしい。
まあ、正しい名前で呼ばれたのは、入学式の時くらいだけれども。
黒い肌に、スキンヘッドという強烈な姿は、一度見たら忘れられないだろう。
僕とガインは、外国からニホンにやってきた。
スパイとして報告するよう命じられたが、あんな国に報告する義理はない。
ガインも同様のようで、今ではニホンにすっかりなじんでいる。
「お前の体格は、機体の規格外だからな。どうしようもないだろう」
最後に、先生が除装した。
古賀守先生。
兄の「大河」は、三年生が行方不明となった時に、共に姿を消している。
「速報が入ったよ! 一年生たち、るくるに向かったみたい!」
良が、スマートフォンをかざす。
ヒーロー専用の報道アプリで、状況が示されていた。
小学生の社会科見学という、最悪のタイミングでバグが発生。
しかも、施設を挟むように二か所で現れるという、最悪の状態だ。
「一般人に、けが人はなし。機体の損傷も軽微……ほんまかいな?」
楓が、訝しむ。
当然だろう。
このような状況を、ほぼ無傷で乗り切ることができるとしたら……。
「一年生たち、俺たちよりも優秀かもな」
実が、久しぶりに真面目な顔を見せる。
いつもそうしていれば、少しはモテると思うのに。
「もうすぐ、実力は分かるぞ。確か5月に、俺たちとの戦いが待っているはずだからな」
ガインが、両拳を目の前で打ち付ける。
やる気に満ちたその姿は、頼もしい。
「とりあえず、学校で入浴なりシャワーなり、好きにしてくれ。その後は自由行動とする」
守先生が、僕たちに声をかける。
それに従って、僕たちは学校に戻った。
シャワーを浴びて、さっぱりする。
お風呂もいいけれども、僕はこちらの方が好きだ。
「なんや。もう終わったのかいな」
楓の声に、僕は頷いた。
あ、言い忘れていた。
僕は、女の子だからそのつもりで接してね。




