第三章 第十九話 未来への契約
舞先生とともに、体育館に行くと……みかんが、真剣な目でメアの機体をチェックしていた。
そして、手元にある手帳に色々と書き込んでいる。
見た目はネコのイラストがついた、可愛らしいものであるが……果たしてどのようなことが書かれているのだろうか?
「にゃ。おおむねの解析は終わったにゃ」
「え、どういうこと?!」
舞先生が、驚きの声を上げる。
俺も、気になった。
「このバリア、機体によって使えるかどうかが分かれるにゃ」
そうして、体育館のホワイトボードに表形式で分類を書き込んでいった。
それによると、こうなっている。
白バリアのみ:結希、明
黒バリアのみ:漣、奏
併用可能:みかん、舞、メア
「これは、属性が関係するにゃ」
みかんの説明によると、機体には「属性」が存在するとのことである。
結希の機体は、光。
俺の機体は、闇。
明の機体は、火。
漣の機体は、水。
みかんの機体は、陰陽。
舞の機体は、風。
メアの機体は、土。
奏の機体は、漣と同じ水。
「この属性によって、使えるバリアが変わってくるにゃ」
白バリアは、光、火、風属性と相性が良い。
逆に黒バリアは、闇、水、土属性と相性が良い。
併用可能なのは、特殊属性「陰陽」を持つみかん、魔力操作が得意な舞、機体そのものの構成がそうなっているメアの三人だけ。
「これで、無駄な試行錯誤をすることは無いにゃ!」
俺たちは、唖然としてしまった。
舞先生も、同じように唖然としていた。
「すごいわね。下手をすると来月くらいには、各機体に合わせた試作型バリアが使えるかも」
メアも、絶賛していた。
「みかん、真剣な話があるのだけれども」
舞先生が、みかんに問いかける。
「藤花コーポレーションの、技術顧問として採用したい。年収2,000万円に加えて、成果報酬」
これは、高校生が稼げる金額ではない。
しかも、成果報酬が加わるのだ。
「条件があるにゃ。学校優先、社内食堂の利用許可。成果報酬は、ストックオプションによる会社の株式。どうにゃ?」
「交渉成立! よろしくね!」
とんでもないことになった。
藤花コーポレーションへの、直々のスカウト。
あまりの事態に、俺は声を出すことすらできない。
「ついでに、久郎にも声をかけてみたら?」
メアが、舞先生に声をかける。
「そうね。藤花コーポレーションの、社外監査役はどうかしら?」
少し、待て。
いくらなんでも、それは荷が重すぎる。
「それは、やりすぎよ。法務部で、非常勤の外部顧問はどうかしら?」
メアが、舞先生をたしなめる。
舞先生が、ペロッと舌を出した。
どうやら、冗談だったようである。
「了解。毎月10万円、これでどう?」
年収では、120万円。
ただし、これは「非常勤」として自動的に支払われる、最低金額だ。
許認可のサポートなど、実際に委任された場合の報酬は別となる。
「分かった。引き受けよう」
正直、自分の力がどこまで通用するのか、興味がある。
それに、藤花コーポレーションと繋ぎを持っておくことは、いざという時の「切り札」になる。
このチャンスは、見逃すわけにはいかない。
「久郎、良いの? 一桁違うけれども……」
「行政書士の相場としては、破格だ。みかんが異常であって、このくらいが普通だぞ」
正式な行政書士業務ではなく、あくまでも法務部の非常勤顧問に支払われる報酬。
この金額は、小遣い稼ぎのレベルを明らかに超えている。
さらにヒーローとしての手当ても、入ってくるのだ。
「来年の確定申告が、大変だろうな……できる状況であれば、だが」
この言葉に、全員真顔になった。
夢で見た「破滅」。
それを乗り越えなければ、いくらお金があっても意味がない。
「あと、フレームもチェックしたのだけれども……インフィニティ社で使われている、脳波検出技術の金属に近い性質があるにゃ。この場では、これ以上は分からないにゃ」
「え、そこまで分かったの?!」
声を発したのは、舞先生とメア。
メアですら、予想外だったようである。
「学校では、全授業の睡眠学習を許可。その代わり、藤花コーポレーションでは全力で解析、開発を担当。それならば、間に合うと思う」
メアのトーンが、上がる。
第5世代の機体。
一気に2世代も先の機体に、手が届く可能性がある。
それを考えれば、この金額はむしろ「安い」だろう。




