第三章 第十三話 戦士たちの補給
舞先生の運転で、たどり着いた店には「ぷれみあむかるび」と書かれていた。
「にゃあ……きんぐじゃ、ないのかにゃ……」
みかんが、ガッカリした表情を見せる。
きんぐは「焼肉食べ放題」で有名な、一番人気の焼肉店だ。
「ふっふっふ。みかんは知らないようね。さあ、入るわよ!」
舞先生の案内で、俺たちは店内に進む。
8人用の大型テーブルに案内された。
「連絡が取れたわ。――すみません、後でもう一名追加で来ます!」
舞先生が、店員に伝える。
メアは後から、合流するようだ。
「さてと。この平日限定ランチを見なさい!」
ランチメニューは、焼肉、焼きしゃぶ、牛カルビ、冷麺&石焼ビビンバなど、種類豊富であった。
価格は税込みで2,000円弱と、お手頃である。
そして何より……。
「おっ! デザートビュッフェ付きじゃねえか!」
明が、喜色満面で声を出す。
全てのメニューで、デザートビュッフェが100分楽しめるようになっていたのだ。
「にゃにゃ?! ジェラートのコーナーが、凄まじいことになっているにゃ!」
ジェラートのコーナーには、10種類を超えるアイスが並んでいる。
専門店並みの品ぞろえで、直七や青梅など、あまり見かけないものも存在していた。
さらに、焼き菓子を含めて8種類のスイーツが用意されている。
これは、甘いものが好きな人にとってたまらないだろう。
「にゃあ~! 天国は、ここにあったのにゃ~!」
みかんの見事な「手のひら返し」に、全員苦笑する。
和やかな雰囲気が、漂った。
「それじゃあ、注文をしなくちゃ。そこからビュッフェの時間が始まるから」
俺たちは、メニューを凝視する。
どれも美味しそうで、迷ってしまった。
「俺、プレミアム焼肉!」
「私は、冷麺&ビビンバにします」
「みかんは、スペシャル牛カルビにゃ!」
三人は、比較的短時間で決めたようだ。
「私も、食べてよろしいのでしょうか?」
「もちろんよ。遠慮しないで」
奏に対し、舞先生が答える。
「それなら、冷麺&ビビンバにします」
「あ、それなら僕も!」
「そうだな。俺もそれにしよう」
奏、結希、俺はこのセットを選ぶ。
舞先生も、同様であった。
「冷麺の種類は……はちみつレモンにします」
「僕はスタンダードな、モリオカ冷麺にする!」
「俺は、旨塩あさりを試してみよう」
「それでいいのね。私は……わさび海苔、これにするわ」
冷麺の種類は、見事にバラバラであった。
「さて、行くにゃ! スイーツがみかんを呼んでいるにゃ!」
注文完了と同時に、みかんが立ち上がる。
「あ、ジェラートは大小あって、1回に2つまでだからね」
「にゃあ……全部盛りは、無理なのかにゃ……」
「何度も取りに行けばいいだけだろ?」
ガッカリしているみかんを、明が励ます。
漣は微笑みながら、それを眺めていた。
「奏さんも、取りに行って良いわよ」
「いえ、少食なのでメインを食べてから、行こうと思います」
確かに、冷麺と石焼ビビンバ。
どちらもボリュームがあるので、それだけでお腹いっぱいになる可能性はある。
もっとも俺たちの年頃なら、デザートビュッフェ抜きでは物足りなく感じるだろう。
戦闘行動の後であれば、なおさらだ。
「にゃ~! とってきたにゃ~!」
焼き菓子が、皿の上にうずたかく積まれている。
「この馬鹿ネコ! 他の人の迷惑を、考えろ!」
「ふぎゃっ!」
明のチョップが、みかんに炸裂する。
いくらビュッフェとはいえ、これは「やりすぎ」だ。
「一番量が多くて、残っていたものをとっただけなのにゃ……」
「それでも、全部持ってくるのはやりすぎです。少し、反省しなさい」
みかんに対し、漣も諭す。
場の雰囲気が、さらに和らいだ。
そして、それぞれがデザートビュッフェに行き、一通り取り終えたところ。
注文していた料理が、届く。
「手を合わせて。それでは、いただきます!」
舞先生の声とともに、食事が始まった。
ロースターで、次々と焼かれていく肉。
ランチセットのご飯は、明、みかんともに大盛りであった。
肉を食べ、ご飯を口に運ぶ二人。
さらにみかんは、その合間に焼き菓子を口に運ぶ。
「うわあ……それ、美味しいの?」
「見ない方がいい。これは、別次元の生命体だ」
結希の声に、俺は助言する。
ずっと見ていたら、気持ち悪くなってしまいそうだ。
「お客様。お連れ様と思われる小柄な方が、お名前を呼んでおります」
「後から来た子よ。通してちょうだい」
席に着いたのは、当然メアであった。
「話は後にしましょう。メアも、注文したら?」
「そうね……おこさまプレートを」
俺は、メアの視線が一瞬ランチメニューに向かったのを見逃さなかった。
だが、自分の体と照らし合わせ、無理のない範囲にとどめることにしたようである。
難しい話は、後で場所を変えて行うつもりなのだろう。
今は、食事に専念するとしよう。




