表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/54

第三章 第六話 聖痕――根源たる恐れ

 漣が、部屋に入って椅子に座る。

 背中がしっかり伸びており、上品な仕草であった。


「もしかして、彼女はお嬢様?」

「ある意味そうだぜ。由緒正しい、神社の生まれらしい」


 結希の問いに、明が答える。

 装置が停止し、漣が部屋から出てきた。


「さってと……ふぎゃ!」

「結果を聞いてから、入りなさい。早急に、リードが二本必要ですね」


 みかんが続こうとして、漣に首を掴まれる。

 少し吊られるようになっており、まさに猫そのものだ。


「ほんとにもう、この子は……はい、これが結果ね」


 舞があきれ顔で、用紙を手渡した。

 一読する漣。


「情報共有は、必要だと考えます。皆さんも見てください」


 全員集まり、確認することになった。


 ギフト:『波』 『水』 治癒能力 美人

 ギアス:受信感度大 根源たる恐れ

 フェイト:聖者


「ええ~!」


 ギフトのところに、『』が二つ。

 結希の結果ですら、こんなことは無かった。


「これは、すごいわね。水魔法や、波を利用した魔法は破格の力を示すと思うわよ」


 舞先生の言葉が、ギフトの有用性を示していた。

 結希の『剣』は、剣の形をしたもの全てに効果がある。

 恐らく彼女の『波』、そして『水』も、同様であろう。


「治癒能力も、ギフトに加わっているわね。ヒーラーとしては、最強クラスではないかしら?」

「いえ、まだ舞先生には遠く及びません。精進いたします」


 謙虚な姿勢が、漣らしい。

 また、ギフトの美人も非常に納得できるものであった。


「ギアスは……受信感度大、これは危険ね」


 波長が「合いすぎる」ようで、毒電波や精神干渉、暗示などの影響を受けやすいという、かなりきつめのギアスだ。

 とはいえ、破格のギフトの代償と考えれば、やむを得ないだろう。


「根源たる恐れ。これは、久郎に説明してもらおうかしら?」

「俺か? ……ああ、なるほど」


 恐らく、エニアグラムにおけるタイプの特徴だ。


「エニアグラム的に、タイプ6の人間は『恐れ』が根幹になる。恐れ・不安などの感情が、さまざまな行動に影響するらしい」


 その傾向が、強いということなのかもしれない。

 今のたたずまいからは、想像できないのだが。


「なるほど。言われると、心当たりはあります」


 彼女は、神社で生まれ育っている。

 その中で、両親がクマサカの影響により、徐々におかしくなったこと。

 それが、心に大きな影を落としていると漣は告げた。


 ……今は、深く聞かない方がいいだろう。

 舞先生も、それ以上は踏み込まなかった。

 代わりに、最後の項目へと視線を移す。


「フェイトの聖者は、聖属性の魔法、回復魔法の力を高めることになる。もっとも、神の意に沿った行動をとらなければならないという、枷にもなる。こんなところかしら?」


 なかなかに、強烈な結果であった。

 おとなしそうに見えて、三人の中でもっとも芯の強い人物。

 その裏には、壮絶なものが秘められていたようだ。


 結果を聞いた漣が、少し目を伏せて話し出す。

 少し震えながらも、しぼりだすように言葉を紡いでいく。


「私は、いわゆる箱入り娘でした。そのため、神社の外に出る機会がほとんどありませんでした。だから、クマサカの毒電波の影響から逃れることができたのだと思います」


 神社という場所は、ある種の「結界」を有している。

 そのため、新たな毒電波から逃れることはできたようだ。


「しかし、両親は徐々に狂っていきました。外出して、人と触れ合う機会が多かったので……」


 一度心に蓄積された「毒」までは、結界でも取り除けなかったようである。


 状況を想像すると、胸が痛くなる。

 目の前で、人が壊れていくのをただ、見ることしかできない。

 回復魔法も、精神を徐々に変えていくクマサカのやり方の前では、無力。

 それらが「恐れ」として、彼女に強く影響しているのだろう。


「神社の中にいる限り、私は守られていました。けれど、外に出るとなると話は別です」


 制服の内ポケットから、少し擦り切れたハチマキを取り出す。

 懐かしそうな目で、漣はそれを眺めていた。


「このハチマキ、みかんが作ってくれたのです。これをつけていると、毒電波に対してそれなりに効果があるようでした。それで、ようやく外に出られるようになったのです」


 これまた、意外な情報である。

 脳波に反応するネコミミといい、このハチマキといい。

 みかんの「技術力」は、予想以上に高いようだ。


「単に、見ていられなかっただけだにゃ。あの寂しそうな目を、何とかしたかったからにゃ」


 軽く言っているが、開発には相当時間も、労力もかかっているはずだ。

 もしかして、みかんは大物?


「さてと。いよいよ真打ちの出番だにゃ!」


 みかんが、部屋の中に入る。

 今度は漣も、止めることは無かった。


 果たして、どのような結果が示されるのか。

 単に軽いだけの少女ではないことが分かり、期待が高まる。

 その結果は……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ