第三章 第五話 突撃あるのみ
機器が、うなりを上げる。
中にいる明は、うずうずしているようで、何度も身じろぎしている。
じっとしているのは、苦手なようだ。
止まったとたんに、明は飛び出してきた。
「やっぱ、じっとしているのは性に合わねえ。で、結果はどうだ?」
「少し落ち着きなさい。今、プリントアウトしているから」
舞先生が、呆れたように口にする。
この衝動性は、ギアスなのかもしれない。
「出たわね。結果はこれよ。他の人も見てちょうだい」
示された結果は、こうなっていた。
ギフト:貫く拳 反動軽減大 対G適性大 コスモス形成プラス(チューブ)
ギアス:暴虎馮河 ADHD傾向(多動・衝動性)
フェイト:速さ
「前の二人とは、全然ちがうにゃ!」
みかんの言うとおり、俺たちの結果とかなり異なる。
ギフトに『?』系がないこと。
つまり、俺や結希のように不明瞭な要素が見当たらないこと。
そして、見慣れない単語がいくつかあること。
舞先生の解説を、待つことにした。
「貫く拳は、拳の強化型ね。相手の防御やバリアを、貫通する効果が高いとされているわ」
「それは、心強いですね。硬い相手は、明に任せましょう」
漣の判断は、正しいだろう。
防御力が高いバグ相手には、特に効果的な能力だと考えられる。
「加えて、反動軽減大。これは無茶な突撃をしても、自分が受けるダメージを大きく軽減するわ」
これまた、明向けである。
突撃のようなタイプの攻撃は、拳を痛める危険性が大きい。
それを大きく緩和することができるのは、貫く拳と相性抜群であろう。
「対G適性大も、高速戦闘で役立つわ。急激な旋回などでも、耐えられるということだから」
つまり、相手に突撃する戦い方は明の「十八番」ということになる。
巨大バグとの戦いは、理にかなっていたようだ。
「この、コスモス形成プラスって何? チューブっていうのは形状のこと?」
結希が質問すると、舞先生は少し呆れていた。
「あのね……入学テストにも出たわよ。久郎、説明してあげて」
「分かった」
俺が、結希に説明する。
コスモスというのは、ヒーローが形成する「フィールド」のことだ。
このフィールド内において、ヒーローは「物理法則を無視する」ことができる。
文字通り、音の速さや光の速さで攻撃するということも、可能らしい。
「チューブというのは、形状だと思われる。つまり、相手に向けて筒状のコスモスを形成し、一気に突撃する。それが明の戦い方なのだろう」
「へえ~! そういうことだったんだ」
しっかりしてくれ、結希。
これは今後の試験でも出る、重要な項目だぞ。
「完璧な説明ね。補足がいらないレベルよ」
舞先生が、軽く拍手を送ってきた。
このくらいならば、朝飯前だ。
「で、ギアスの暴虎馮河だけれども……久郎なら、分かる?」
「虎に素手で立ち向かい、準備もなく黄河を渡ること。つまり、向こう見ずということだ」
全員、感心の目を向ける。
「聞いたこともなかったよ。やっぱり久郎、すごいや!」
確かに、マイナーな単語である。
しかし、ギアスとして表示されたという意味合いは大きい。
「無謀な行動に出やすいということだから、注意して。猪突猛進も、近い概念ね」
「なるほど。犬用ではなく、イノシシ用のリードが必要ということですね」
「おめえ、まだリードネタを引っ張るのか?!」
舞先生の言葉に、漣が続く。
確かに明を制御するには、リードがあったほうが良いように感じた。
「そして、多動・衝動性。じっとしているのが苦手で、行動に移しやすいということ」
最悪の、組み合わせだと思う。
あの時真っ先に飛び出したのも、納得だ。
「フェイトの『速さ』は……スピードを追い求める傾向を、示しているのだと思う。とにかく突撃したがると思うから、フォローしてあげてね」
注文していた、新型のワイヤー。
一日も早い導入が、望まれるようだ。
そのくらいでないと、止まりそうにない。
「それでは、失礼いたします」
漣が、部屋に入っていく。
彼女ならば、ここまでとんでもない結果にはならないだろう。
久郎のこのセリフは、もはや「フリ」ですね。




