第三章 第四話 女顔の剣士
「次、僕でお願いします!」
手を上げたのは、結希。
俺の結果を見て、興味が湧いたのだろう。
「じゃあ、次は俺な!」
「ずるいにゃ。みかんが先にゃ!」
「落ち着きなさい。明、みかんで、最後が私。それで進めたいと思います」
三人も、興味を示している。
果たして、どんな結果が導かれることか。
結希が部屋に入り、装置が稼働する。
そして時間が経過し、ゆっくりと停止していった。
「はい、これが結果よ」
「うん。久郎も、見てもらっていいかな?」
そこには、こう記されていた。
ギフト:『剣』 歌姫 美声 ??????
ギアス:波乱万丈 遠距離適性マイナス
フェイト:女顔
「ぶっ!」
思わず、声が漏れてしまった。
結希の顔が、徐々に暗く沈んでいく。
「フェイト……宿命……」
漏れ出すような言葉が、結希の心情を物語っていた。
「恐らくギフトの、??????が影響していると思うわよ。ただ、歌姫は擁護できないかも」
舞先生も、苦笑しているようだ。
なにせ『姫』である。
普通ならば、男性に発動するギフトではない。
「それはともかく、剣が『剣』になってるのは何だ? 俺は普通に、拳だったが」
明が疑問を示す。
言われてみれば、確かに。
「それほどまでに、突出した才能ということなのか、それとも別の意味があるのか……ごめんなさい。私でも、分からないわ」
やはり物語の中心に立つのは、結希なのだろう。
俺とは異なる結果に、ある意味ホッとしている。
「歌姫と美声があるから、歌に関しての才能は明らかに高いわね。これは、伸ばしたほうがいいと思うわよ」
舞先生の言うとおりだ。
長所を伸ばすのが、ヒーローの基本である。
「ギアスの、波乱万丈ってどんな感じなのかにゃ? 大変そうなのは、わかるけどにゃ」
「文字通り、波乱万丈な人生を強いられるということね。平穏な生活は、少し難しいかも」
みかんの問いに、舞先生が答える。
これまた、いかにも結希らしい。
困難に立ち向かうという、昔からの「ヒーロー像」そのままだ。
「遠距離適性マイナス、以前『飛燕』で攻撃していたようですが?」
漣の疑問は、よく分かる。
だが、そのことは俺自身が一番よく知っていることだ。
「剣術ならば、問題ないのだが……以前こんなことがあってな」
それは、屋内型の大型スーパー銭湯で発生した。
和をテーマとした街並みに、いくつも屋台が並んでいる、テーマパーク型施設であった。
結希が挑んだのは、手裏剣投げ。
『剣』全般の扱いに長けているため、さぞこれも良い結果が出ると思っていたのだが……。
「まさか、全弾俺たちの方に飛んでくるとは思わなかったぞ。係の人も、一発食らいそうになっていたからな」
そう。
的には向かわず、全て俺たちの方に襲い掛かってきたのだ。
係の人の「暗殺者になるのなら、ある意味天下一品」という皮肉が、忘れられない。
「それ以外にも、スポーツテストで苦戦していたからな。よく分かっている」
「うう……恥ずかしい過去、晒された……」
結希が肩を落とす。
舞先生が頭に手を置いて、よしよしと慰めていた。
そして、ポツリとつぶやく。
「本当に、サラサラね……これが若さなのかしら?」
「先生、それはフォローじゃなくて、とどめだよ……」
全く。
女顔に悩んでいた結希であるが、フェイトとして表示されてしまったのなら、どうにもならない。
受け入れて、生きていくしかないだろう。
「やっぱり、??????になっているわね。二人ってもしかして、特殊な過去があるのかしら?」
「俺の方は、あると断言できる。だが、結希の方は分からない。記憶がないのだ」
全員が、一瞬固まる。
「僕自身は、あまり気にしていないよ。子供のころのことだし、今の親に感謝しているから」
結希も俺と同じく、養子縁組を受けた者の一人である。
この時代では、よくあることだ。
「幼い時の記憶が抜けているだけだから、今の生活に支障はないし。むしろ思い出そうとすると、頭痛がするから嫌なんだよ」
ということらしい。
そのため、無理はさせないようにしている。
「久郎の方は……ああ、これね。資料で確認したから、語らなくてもいいわよ」
説明しないで済むのならば、正直ありがたい。
恐らく後で、三人に舞先生から説明されるだろう。
「よっしゃ、待ちわびたぜ!」
明が、腕まくりをしながら部屋に入っていく。
さて、どのような結果になることか。




