第三章 第二話 未完の大器
俺たちは、医療施設にたどり着いた。
既に機器の納入は終わっているようで、最新型の設備がずらりと並んでいる。
その光景は、圧巻であった。
「これなら、死んでいなければ何とかなりそうですね」
漣の言葉が、その設備の充実ぶりを物語っていた。
正直、父の属するヒーローズネストにも、少し分けてもらいたいほどだ。
「まずは、能力値を測るところからね。その後、ギフト、ギアス、スキルなどの測定を行うから」
舞がこちらを向いて、告げる。
能力値は、0~9の10段階に分かれている。
0はN(ノーマル、つまり『ヒーローではない』)
1はC、2はUC、3はR。
このあたりが、ヒーロー科入学生の平均的な範囲となる。
4はHR、5はSR、6はSP。
卒業後のヒーローは、大体この範囲に属する。
7はEP、8はUR、9はLE。
なお、現在値として9に達しているヒーローは、今のところ存在していない。
父である広大が、8で組織のトップに立っているのだ。
「これ、ガチャみたいだにゃ。絶対オタクが考えたとしか、思えないにゃ」
「その通り。うちの兄は結構、オタクなところがあるから」
みかんの問いに、舞が答える。
この区分は、舞の兄である誠司が決めたものらしい。
「機器で、今の能力と潜在能力の両方が測れるから。誰から行く?」
「じゃあ、俺から!」
明が真っ先に、手を上げた。
機器がうなりを上げ、ゲージがどんどん上がっていく。
「結果は……現在値4、潜在値8ね。相当いい結果よ」
「おっしゃ!」
前述のとおり、4は卒業後のヒーローが属する範囲に入る値だ。
また、潜在値も非常に高い。
期待の新星と呼んでも、咎めるものはいないだろう。
「次は、僕でお願いします」
結希が続く。
「結果は……えっ」
舞が、驚きの表情を見せた。
誰も、声を出すことができない。
「結果。現在値5、潜在値9」
これは、凄まじい数値だ。
下手をすれば、広大を上回る可能性があるということなのだから。
「ちっくしょう、負けた~!」
明が嘆く。
気持ちは、よく分かる。
現在値も潜在値も、上回られてしまったのだから。
「もっとも、限界突破という形で伸びる人もいるから。そこまで落ち込まないで」
舞のフォローが入る。
たまに、そういうヒーローが存在するようだ。
「次、私でお願いします」
漣が、測定機に入る。
舞が、数値を確認する。
「現在値4、潜在値8ね。明と同じ結果よ」
「安心しました。まだまだ、伸びしろがあるようですね」
漣は、落ち着いた表情で受け止めた。
一喜一憂しないところが、彼女らしい。
「次は、俺がやろう」
順番からして、俺、そしてみかんが良いと思う。
緊張しながら、測定機に入った。
「信じられない……」
舞の声が、再び驚きに満ちたものになる。
「現在値4、潜在値9」
結希同様、伸びしろは非常に大きいようだ。
それにしても、今まで全員、現在値が4以上というのは、異常な状態である。
新入生であることを考慮すれば、なおさらだ。
「最後は、みかんにゃ……楽しみだにゃ~!」
喜々として、測定機の中に飛び込んでいくみかん。
果たして、どんな結果が出ることか。
「……もう一度、測定させてちょうだい」
緊張感が高まる。
潜在値9が表示されたときでさえ、このようなことはなかった。
再度、測定が行われる。
そして、舞が結論を出した。
「現在値3、潜在値は……測定不能」
「測定不能?」
全員、疑問の表情を浮かべた。
「9という上限を、さらに大きく超えているの。だから、測定不能としか言いようがないわ」
「うにゃ~! 主人公は、みかんだったにゃ~!」
みかんが、小躍りする。
一般的な物語では、主人公がもっとも良い成績を出すことが多い。
てっきり俺は、結希がその枠だと思っていた。
だが、現実は異なるようだ。
「ばかっちょ!」
「ふぎゃ!」
明が、みかんにチョップを行う。
「現在値を見てみろ。一人だけ、落ちこぼれだぞ」
「欠点よりも、将来性を見るべきだにゃ!」
実際、新入生で3という値は落ちこぼれどころか、むしろ優秀な方である。
周りが優秀すぎるだけで、みかん自身も新入生として十分に上位だ。
「これは、後で兄に報告しておくわね。次は、ギフトとギアスの測定に行くわよ」
舞の言葉に従って、俺たちは次の検査を受けることにした。




