第三章 第一話 プランC――独立地域への移行
ここから、第三章です。
校門をくぐり、俺たちは校内に進んだ。
内部でも、あちこちで工事が行われている。
更に搬入用トラックが、何台も横を通り過ぎて行った。
「教室に行こう。恐らく、舞先生が絡んでいる」
以前口にしていた、プランC。
それが影響しているのは、間違いなさそうだ。
「うん。分かった!」
そして俺たちは、教室にたどり着いた。
30人、詰めれば40人くらいは入る、広い教室。
しかし、今いるのは5人だけ。
大量の退学者が出た影響だ。
「おっ、お前たちも来たのか! しっかし、すげえよな……大金持ちってやつは」
明が、俺たちに話しかけてきた。
舞が動いた結果であることを、確信しているようだ。
「どうせならば、最新設備が欲しいにゃ。今の設備でも、かなり良いとは思うけどにゃ」
みかんが、加わる。
「ええ。特に医療施設に、優先的に配備してもらいたいと思います」
漣の発想は、ヒーロー科の人間として正しい考え方であろう。
「みんな、お待たせ~!」
そこに、舞がやってきた。
「出席は……とる必要がないわね。それに、何が起きているのかを知らないと、安心して授業を受けられないでしょう?」
それは、間違いない。
俺たちは席に着き、耳を傾けることにした。
「ヒーロー法における、特別措置法第39条。これ、久郎は分かる?」
「ああ。公立高校から、私立高校に移行する手続きだ。クマサカが公立高校を解体する時に、悪用していた条文だろう?」
俺はすぐに、問いに答える。
結希が、驚いた顔をしていた。
「すごいね。行政書士の試験科目には、入っていないのに。そもそもヒーロー法自体を、読んだことがないよ」
結希の言うように、ヒーローでありながら、ヒーロー法を読んだことがない者は多い。
行政書士試験でも、近年になってようやく、行政書士法が追加されたくらいだ。
自分の足元が疎かになっているということは、意外とあったりする。
「さすがね。更に今回の事態を受けて、知事は『特殊事態における、独立権限』の行使を発表したわ」
これは、大きい。
大量のバグが発生するなど、中央――トウキョウの指示を待っていられない事態が発生した時、知事は『独立権限』を行使できる。
地域のトップとして、中央の指示を待つことなく、最高責任者として行動できるのだ。
「今回クマサカは、悪手を打ったわね。この行使、実は期間制限が設けられていないの」
これは、法律の不備であろう。
通常の法律ならば、期間制限を設けるのが一般的だ。
自分が使うことだけを考慮していた、クマサカのミスである。
結論としては、こうなる。
シズオカはトウキョウの指揮系統から外れ、独立して動ける地域になった、ということだ。
「だから、私立高校として新たなスタートを切ることができたの。普通なら、もっと色々な準備が必要なのだけれどもね」
舞が、そう締めくくった。
確かにこれは、大掛かりな方法だ。
そして、クマサカに対する完全な反逆を意味している。
最悪の状況をひっくり返す、究極の『ちゃぶ台返し』だ。
「これが、プランCか。納得できた」
「えっと……要するに、どういうこと?」
結希が、俺に問いかける。
恐らく会話の内容は、さっぱりだったのだろう。
「簡単に言えば、シズオカはトウキョウの指揮下から外れた、『独立地域』になったということだ」
「「「ええ~!!!」」」
結希、明、みかんが同時に叫ぶ。
一方漣は、静かにうなずいていた。
恐らく、この方法についてある程度想定していたのだろう。
「まあ、そういうわけで……藤花コーポレーションの全力を挙げて、設備の更新を行っているというわけ。まずは、医療施設で最新機器による、能力チェックを行ってみない?」
今までの機器よりも、更に高度な判定ができるようだ。
それは、俺も気になる。
他の者たちも、明らかに興味を示していた。
……結希は、授業を受けるよりも楽そうだから、という感覚かもしれないが。
「決まりね。まずは医療施設の方に行きましょう。午後から、ヒーロー科としての授業を行うから、そのつもりでね」
結希がガクッと、肩を落とす。
今日一日は、能力チェックで潰れると思っていたのだろう。
少し笑いをこらえながら、俺たちは医療施設に向かうことにした。




