覚悟(1)
「ところで、シルビアーノ。君は、またイントリーニアに戻るの?それとも、パンズールに残る?」
「え?私がパンズールに、残る?」
思いもよらない質問だった。
「うん、選択肢としてあるでしょ?確かに、事情が事情なだけに、それに、僕には想像もできない色々な想いもあるだろうけど。シルビアーノからすれば、無責任な発言かもしれない。でも、今の状況を考えると、“それ“もありかな、って。」
考えたことはなかった、といえば嘘になる。密かにパンズールに戻り、ひっそりと過ごすのもいいかな、と。でも、“何か“が、そうさせなかった。
「確かに、今の状況なら、アリかも。でも、今さらパンズールに残っ、戻って何をするの?ただただ、コソコソ隠れるようにして生きるしかないわよ。」
「そんなことはないと思う。まぁ、大手を振って生きることはできないかもしれないけど。実際、僕だってそんな生き方していないしね。」
「まぁ、そうだけど。そういう提案をしてくる、ということは、何かしらの“アテ“でもあるの?」
「うん、まぁね。実際、うまくいくかはわからないけど。」
(ハルのことだ。何かしらの考えがあってのこと、だとは思う。確かに、この状況でイントリーニアに戻ったところで、処遇は目に見えている。それに、現時点で私は“そういうこと“になっているのだから。ならば、ハルの案に乗るのも・・・)
「それに、話を聞いたかぎり、君のお父さんはやはり“嵌められた“んだと思う。まだ確証はないけど、調べてみる価値はある。ただ、嵌められた事実が見つかったとしても、今さらどうにもならないけど。」
「・・・」
シルビアーノは言葉が出なかった。そんなこと考えたこともなかった。この国を、父を貶めたこの国の貴族たちを恨んではいるが、だからどうする、とは。父の“無念“を、母の“悲しみ“を、そして何より自分自身の“悔しさ“を、“晴らす“ことをどうして考えなかったんだろう。シルビアーノの中で、“何か“が消え、そして“何か“が、新たに生まれた。
「ねぇ、ハル。その提案、いただいてもいい?」
「うん。もちろん。」
「ただし、責任は取ってもらうわよ?」
「えぇ?ど、どんな責任?」
「ナイショ」




