決別(6)
何度か転移を繰り返して、目的の場所についたハルとダル。施していた“魅了“は解いて、“拘束“をかけたまま、会話のみ可能にした。
(コイツ、転移まで使えるのか?それも、こんな連続で?)
「どうですか?気分の方は。」
「・・・」
「会話はできますよ?」
「て、テメェ、何考えてやがる。ここはどこだ。」
「何って、別に何も考えてませんよ。それにここは、僕もどこかはわかりません。強いて言うなら、獣魔の群れがいるところ、ですかね。あなた方のお仲間が探しているような。」
「はぁ?そんなところに連れてきて、俺をどうする気だ?」
「別に、“僕“はどうもしませんよ。“僕“は。」
「・・・」
ダルは、ハルと会話している間、この“拘束“をどうにかできないかと抗っていた。そして、焦っていた。確かに、わずかではあるが、獣魔の気配を感じる。このままでは、獣魔に襲われてしまう。なんとか“拘束“を解くことができれば逃げられる。でも、どうにも“拘束“を解くことができない。大概の術であれば、術式をいじることで解除できるが、そもそも“拘束“という術を知らない、と言うか聞いたことがない。だから、ダルは知りうる全ての術の中から、似たような術を思い浮かべて、その解除を試みているが、どれも当てはまらない。
「ちなみに、その“拘束“。僕以外の他の誰にも解除はできませんよ。それも、僕のオリジナルですから。」
「テメェ・・・。」
ダルの額を冷や汗が流れる。
ハルの声音と雰囲気がガラッと変わる。
「僕は、あなたを、イヤ、“お前“を許さない。“お前“は姉さんを手にかけようとした。それは、万死に値する。」
また元に戻る。
「とはいえ、実際には、まだ行動を起こしていないので、そこは、見逃してもいい部分なんですけど。」
ダルは、先ほどからの、ハルの雰囲気の変わり様にやや戸惑いを覚えていた。
「な、なら、今回は見逃してくれるんだな?」
「“僕“はね。でも、許すことはしないので、判断は獣魔たちに委ねます。」
「はぁ?何言ってるんだ?」
「だから、見逃すけど、絶対に許さない、と言ってるんです。でもまぁ、意識がある状態では、流石に可哀想なので、そこは考慮してあげます。」
「て、テメェ、何考えてやがる。まさか・・・、この悪魔め。」
「いいえ、僕は“ただ“の門兵です。まぁ、そこそこやりますけど。」
と言って、ハルは、ダルの意識を奪い、地面に横たわらせた。先ほどのシルビと同様に“闇眠“を施した。
それから、ダルが身につけていた装備のうち、主装備と思しきミスリル製の短剣を形見として抜き取り、ダルの近くに動物の血液を一滴、垂らした。
「僕だけを狙っていたのなら、僕が相手をしたのだけど。姉さんを狙った報いです。ただ、どんな状況でも意識は戻らないように、情けはかけてあげます。」
ハルは木の上に登り、気配を消し、しばらく様子を見守っていた。程なくして、周辺にいた獣魔が近寄ってきた。ハルは、なんの感情も湧かなかった。そして、見届けた後、転移で元いた場所に戻った。




