決別(1)
「随分とゆっくりしてたじゃねぇか、えぇ?お嬢さん、よ。」
シルビが拠点に戻ると、玄関ロビーのソファーに座っていた相方のダンが、軽口を叩いた。
「で、どうだった?想い焦がれていた“彼“とのひとときは?」
「そんなんじゃないわよ。これも情報収集の一環よ。」
「へぇ〜、そうかい。なら、さぞ有意義な情報が手に入ったんだろうなぁ?」
「えぇ、“ファースト・ターゲット(ハル)“は、巡礼路の襲撃地(第四野営地)を中心に調査しているそうよ。」
「ほう〜。」
「それと、“最終ターゲット(フィレス)“もこっちにきているわ。」
「それはそれは、好都合じゃねぇか。一気に両方片付けるか。」
「それは、ダメよ。今回私たちの任務は、“ファースト・ターゲット(ハル)“のみ。それに、“最終ターゲット(フィレス)は、私たちじゃなく、上の仕事でしょ?」
「チェッ、まぁ、仕方ねぇか。で?どうすんだ?こっちはもう時間がねぇぞ。あと3日だ。」
「わかってるわよ。明日、もう一度、襲撃地(第四野営地)に行くわよ。」
結局ここまで、ハルの調査を邪魔するどころか、その姿を見つけることのできない状態で、時だけが無駄に過ぎていた。しかし、ひょんなところで、ハルと再会することができ、今回の任務に光明を見つけることができた。とはいえ、シルビにとっては、そのことが、かえって複雑な心境をもたらすことになった。このまま姿を見つけることもなく、任務を終了すれば、イントリーニアでの評価は下がるだろうが、所詮、それだけのこと。しかし、ハルと再会し、任務の遂行に多少なりとも兆しが見えたこと、そして、それ以上に、今まで忘れていた“ある想い“が蘇ってしまったこと。それが、今回の任務遂行に多大な影響を及ぼしそうなことは、容易に想像できる。どのような結果になろうが、おそらく、いや、必ずシルビの“コア“に見えないキズが残る。そうなると、二度とハルに会うことはできない。それに、遠目からでもわかる、フィレスのあの“雰囲気“。
(思ったより、弱いな、私。)




