誤解
「ママ〜、ただいま〜。」
「あら、フィレスちゃん、おかえりなさい。って、帰ってくるって聞いてないわよ?」
「うん、話してないもん。で、ハルは?帰っているんでしょ?」
「えぇ、帰ってきてるけど、今はいないわよ?」
「えぇ?どこ行ったの?」
「さぁ?お昼までは、お庭を行ったり来たりしてけど、お昼の後は見ていなわねぇ。」
そして、フィレスによる“ハルの捜索“が始まった。
「ゼノン、ハル見なかった?」
「これはこれはフィレス様、いつお戻りに?」
「さっきよ。それよりハル、見なかったかしら。」
「ハル様なら先ほどまで裏庭におられましたが、今・・・。」
「裏庭ね、ありがとう。」
「は、いらっしゃらないです、ってもう行ってしまわれました。フィレス様もハル様のことになると・・・。いやはや。」
ゼノンに教えられて裏庭に出て探してみたものの、ハルの姿は見えない。
(うーん、いないわね。)
その後もアキやヒロにも尋ねてみたが、わからずじまいであった。
(もう、どこに行っちゃったのよ、ハルは。)
庭の草木の茂みを覗き込んだりして、ハルを探していると、領都へ買い出しに行っていたイズが戻ってきた。
「あら?フィレス様、いつお戻りに?」
「イズ。さっきね。」
「そうですか、おかえりなさませ。と、なんか疲れておりませんか?」
「ううん、疲れてはいないけど、ハル、見つからなくて。」
「ハル様、ですか?ハル様なら、お屋敷を出て、領都の方に向かって歩いておられましたよ。何か考え事をされているようでした。」
「領都の方?それっていつごろ?」
「30分ほど前でしょうか?」
「えぇ〜。じゃぁ、すれ違ってたかも。私馬車で来ちゃったから、気づかなかったのね。ちょっと、行ってくる。」
「あぁ、フィレス様、そろそろお夕飯の〜って、行っちゃった。」
そこへアキが出迎えで出てきて、
「フィレス様はどちらへ?」
とフィレスの走り行く後ろ姿を見つつ、イズに聞いた。
「なんでも、ハル様をお探しのようで。私が、領都方面へ歩いているのをお見かけしたとお伝えしたら、一目散に出ていかれました。」
「そうですか。はぁ、フィレス様もハル様のこととなると、ほんとお人が変わりますからねぇ。」
“困ったものですねぇ。“
“とりあえず、夕飯の準備をしましょう“と言って、屋敷に戻るアキとイズ。
(えぇっと、追いつけるかしら。)
しばらく走り続けると、とある人物を視界にとらえた。
「あれは、ハル?そうよ、ハルよ。よかった、追いつけた。」
と言って、一旦立ち止まり、息を整えて、もう少し近づいた。ハルは、どうやら川の辺りに降りようとしていた。そして、フィレスが声をかけようとしたその時。
「ハル⁉︎(喜) って、誰よ、あの女‼︎(怒)」
そろ〜。ハルたちの後に続いて、川の辺りに降りたフィレス。降りたところの茂みに隠れて様子を伺う。それなりに距離があるため、会話の内容はわからないが、何やら楽しげに話しているのはわかった。
(何よ、なんであんなに楽しそうに話しているのよ‼︎)
と憤ってみたり、
(って、私、何しているのかしら。)
と自己嫌悪に陥ってみたり、忙しかった。
しばらくして、ハルたちが別れたことを確認して、ハルに声をかけようとしたが、場所が場所だけに、出づらいことを悟ったフィレス。
(さすがにここから声をかけるのはおかしいわよね。どうしよう〜?)
と迷っていると、後ろから声が掛かった。
「何してるの?姉さん。」
「ひゃっ!」
突然のことで、尻餅をつくフィレス。
「ハ、ハル〜。」
「ご、ごめん、脅かすつもりじゃなかったんだ。」
「ううん、いいのよ。」
「で、何していたの?こんなところで。」
手を差し出して、フィレスが起き上がるのを手伝うハル。
「あ、ありがとう。えぇっとね、ちょっと散歩してたら、ね。」
「ふ〜ん」
少し意地悪気に、目を細めて、フィレスを見る。
「ご、ごめん。ちょっと声かけのタイミングを逃しちゃって、その、」
「まぁ、いいっか。それより僕はもう屋敷に帰るけど、姉さんは?」
「わ、私も帰ろうっかなぁ?あははは・・・・」
「じゃぁ、一緒に帰ろう?」
「うん。」
川の辺りから道に戻り、屋敷に向かって歩き始めるハルとフィレス。そんな二人をなんの気無しに見つめるシルビ。そして、フィレスの姿を捉える。
「あの人は⁉︎“最終ターゲット(ハルのお姉さん)“⁉︎」
そんなシルビのフィレスに対する“気(視線)“に気づくき立ち止まるハル。
「どうしたの?ハル」
フィレスが声をかける。
(シルビアーノ。なぜ姉さんに“その“気を向けるの?)
「ううん、なんでもない。」
(シルビアーノ。相手が僕なら多少の手加減はするけど、もし、姉さんなら、たとえシルビアーノでも、容赦しないよ。)
帰る途中、ハルが話をしていた女性は、
・ハルの学園時代の同級の子で、卒業する前に学園を去っていたこと
・偶然この場で再会して、話をしていたこと
・その女性は、イントリーニアの勇者として、先の獣魔騒動の調査に来ていること
をハルから聞いて、自分の早とちりであったことを知って、少し恥ずかしい気持ちになったフィレスであった。




