暗躍(2)
神聖国イントリーニアの勇者一行は、領都ラベンダルトでの滞在手続き及び領主への謁見を済ませて、拠点となる屋敷に到着した。屋敷の前には、数名の人影があった。
「お待ちしておりました、神聖国イントリーニア勇者御一行様。私は、この地を管理しております、パンズール王国ラベンドアール辺境伯領防衛卿:アルテイラ・ラズベールと申します。この者たちは私の配下のものです。」
「お出迎え、ありがとうございます。神聖国イントリーニア勇者:シルビ・ハントです。それとこちらが、同じく勇者:ダン・ルベール。それと世話人が8名、計10名が、本日より1ヶ月間、滞在することになります。それと、今後2回、食料の補給の関係で、本国より業者が2名訪れることになっています。その日時は、こちらに。」
と言って、書簡を渡す。渡された書簡を受け取り、記載内容を確認するアルテイラ。
「承知しました。それと、屋敷内はもちろん、敷地内や、大樹ブラパまでの巡路等での行いに関しては、こちら側は一切干渉は致しませんが、敷地外では、王国の法が適用されますこと、ご承知おき願います。」
「はい、そのことは、重々承知しております。私たちも、王国や王国民の方々にご迷惑をかけるようなことは致しませんので、ご安心を。」
「ありがとうございます。それでは、私どもはこれで。」
「ご迷惑はかけません、てか?これから、門兵一人殺そうっていうのに、よく言うねぇ。それも、さっきの防衛卿、あいつの息子だろ?その門兵って。」
「・・・」
「まぁ、ブライラの中でのことだし、死体もすぐには見つからない、場合によっては獣魔に食われるかもしれねぇから、俺らとの関係はわかんねぇか。間違っちゃいねぇな。」
「・・・」
「チッ、シケてんじゃねぇよ。」
「ちょっと、出てくる。」
「ヘイヘイ。んじゃ、俺は、長旅の疲れでも癒しに湯浴みして、ゆっくりしてらぁ。」
シルビ・ハントは、決して狭くはない敷地内を散策しているうち、ふと足を止めた。
「本当に出てみようかな?」
世話人を一人引き連れて、シルビ・ハントは、屋敷の外に出た。
「本当、久しぶりね。でも・・・」
シルビ・ハント、本当の名は、シルビアーノ・ロゼリアール。ロゼリアール元伯爵の第三女。王立サンフラン剣魔学園に通っていたが、卒業はしていない。専課2年の時、王国内である事件が発生した。その事件の責を問われる形で、ロゼリアール伯爵は爵位を失い、シルビアーノは学園を去ることになった。学園に在学中は、ハルと同級で、他の学園生と共だって、何度かこの地を訪れていた。
学園を去った後、シルビアーノは、“シルビアーノ・ロゼリアール“から“シルビ・ハント“と名前を変えて、今に至る。
ただ、学園を去るまでの約4年間の学園生活。シルビアーノ、今のシルビにとっては、充実した、楽しい思い出だけが残る4年間でもあった。
(こんな形で、再びこの地に来たくはなかったな。)




