算段
ここは、神聖国イントリーニアの神聖協会にある、とある一室。
「予定通り、巡礼を行う、か。」
「まさか、続行するとは。」
「我々も舐められたもんですな。」
「いいや、単に“バカ“なのでは?」
嘲笑が生まれた。
「まぁ、とりあえず、こちらも予定通り事を進めることにしよう。」
「そういえば、あの“じゃじゃ馬“、何やらいい駒を見つけた、と言うのは本当か?」
「あぁ、本当らしい。」
「何をさせる気だ?」
「どうやら、巡礼路の調査らしい。」
「巡礼路の調査?どんな駒かわからんが、何もわからんだろうて。」
「それが、どうやらその駒、例の“門兵“らしいぞ?」
「ほぅ?それは面白い。で?こちらとしては、どうする?」
「一応、その門兵には、監視をつける。」
「なら、ついでに、調査の妨害もしてやるのはどうだ?」
「うむ、それはいい。」
神聖国イントリーニアの神聖協会を牛耳っている5人の幹部術師:五賢師。パンズール王国にて、“巡礼の儀“が予定通り執行されることを知り、まずは、10人の勇者のうち2名をパンズール王国内に潜入させることを決めた。これは、巡礼に向けた王国内、と言うより王家の動向を探ることが目的。そんため、すでに王国師団に潜入させている別の勇者2名と共同で事に当たらせることにした。
また、第二王女の駒=密偵に当たる門兵には2名の監視をつける。
残りの4名については、新たなモンスターの使役に当たらせる。先の前巡礼で使役したハイスパイダルは、Aランクモンスター。今回も、Aランク以上のモンスターの使役を命じている。モンスターはランクづけされており、FランクからSランクまでいる。Sランクはドラゴンで、到底使役はできない。人族で使役が可能なのは、AAランクまで。もう一つ、AAAランクのモンスターも認定上は存在するが、現存確認はできていない。現存確認ができているのは、Aランクの狼系モンスターのマーナガル、ムカデ系モンスターのハイセント、蜘蛛系モンスターのハイスパイダル、AAランクの鳥系モンスターのコカート、蛇系モンスターのシサート、クマ系モンスターのグリズートで、いずれもブライラの大樹海西方に生息している。使役を命じられた4名の勇者は、召喚スキル“ビーストテイマー“を啓受されている。
「して、例の門兵はどうする?ただの監視と妨害、だけか?」
「巡礼路の調査、なんだろ?」
「巡礼路だからブライラ。」
「そう、ブライラの大樹海に入るのだから、そこで“何か“が起きても何ら不思議なことではなかろう?たとえそれが、死につながるようなことであっても。」
「なるほど、調査の妨害ついでに始末、か。」
「そういえば、勇者の中に王都の学園に通っていたものがおったはずじゃが?」
「おぉ、そやつを差し向けるか。」
「うむ。では、勇者に伝えよ。門兵:ハルテイラ・ラズベールを監視しつつ、その者の行動を妨害せよ。その際、“何か“が起きてしまっても構わない、と。」
「はっ。」
「それと、くれぐれも“裏切るなよ“、と。」
五賢師の一人、ファルムベル賢師が冷ややかな笑みを浮かべて続けざまに言った。
「承知いたしました。」
ファルムベルの後ろに控えていた者が返答し、姿を消した。




