決断
王会が閉会となってしばらくして後。
パンズール王国女王:シルベスタ・マゼス・パンズールは、自室にて、今後のことを思案していた。予定では、1ヶ月後に、自身の子で第二王女であるアレスタ・パンズールの巡礼を行い、対外的に女王の後継者として知らしめるはずだった。しかし、今回の“前巡礼“の件で、予定通りとするか、見直すか、決断を迫られている。
現女王のシルベスタには、3人の娘がいる。
第一王女:シルベル・パンズールは、小さい頃から病弱であったがゆえに、早々に継承権を放棄している。これは、本人が、王立学園卒業とともに、申し出たことで、現在は、母である女王の右腕として、政に携わっており、王位継承後も、次期女王に仕える予定である。
そのため、第二王女:アレスタ・パンズールが次期女王候補として、今回の巡礼に参加する予定だった。
なお、第三王女:シルース・パンズールは、現在第二師団一等騎師として、王都の治安維持に奔走している。いずれ、第一師団に異動し、女王を護衛する立場になる。
王国直属の師団は、第一から第五まで存在し、それぞれ役目が異なる。
第一師団は、女王近辺護衛にあたる師団きってのエリート集団。
第二師団は、主に王都内の治安維持、有事にあっては、騎馬兵として、事にあたる。
第三師団は、主に王都外特に各貴族領からの救援要請対応、有事にあっては、第二師団とともに、騎馬兵として事にあたる。
第四・第五師団は王都周辺の警護巡回、有事にあっては、歩兵団として事にあたる。
前巡礼の一件は、ともすれば、大事な後継者ひいては、我が子を死に至らしめるほどの重大ごとである。そのため、どうしても“母親“としての想いが断ち切れず、なかなか決断しかねていると、突然、執務室のドアがノックされた。
コンコン
「陛下。」
「何用ですか?」
「第二王女殿下がお目通しを希望されておりますが、いかがいたしましょう。」
「アレスタが?いいでしょう、通してちょうだい。」
「かしこまりました。」
しばらくして、ドアが開かれ、アレスタが入ってきた。
「女王陛下、突然の訪問、あいすみません。」
「いいえ、問題ありません。して、何用ですか?」
「はい、“巡礼の儀“について、お願いしたき義がございます。」
「“巡礼の儀“ですか?なんでしょう。」
「はい、“巡礼の儀“は、予定通り執り行わせていただきたく、お願い申し上げます。」
「予定通り、と?あなたは、それで良いのですか?危険かもしれませんよ?」
「はい、問題ありません。むしろ、この程度のことで、予定を変更するとなれば、王位継承の資格なし、と考えます。」
「そうですか、本当によろしいのですね?」
「はい。」
アレスタの進言を受け、シルベスタの心は決まった。本来であれば、迷うことなく決断すべきところを、愛する我が子に背中を押された形となり、己を恥じた。と同時に、我が子の成長を素直に喜び、安心して王位を継承できると、安堵した。
「わかりました。では、“巡礼の儀“は予定通り1ヶ月後に執り行うといたしましょう。」
アレスタは、満面の笑みを浮かべて、
「はい。」
と返事をした。
次の日、再度王会が開かれ、巡礼の儀を予定通り執り行うことが、女王より通達された。




