誤算
王会開催当日の朝のこと。
「どう言うことなのか、説明してもらいましょうか?ボスベール軍備卿。」
「私にも解らん。我々が用意していたのは、ゴブリンだけだ。しかもお前の班に向けて5対のみ。それだけだ。」
「しかし、実際には、ホブゴブリンを含めた大群にワーウルフ、挙句に関係のない2班側にハイスパイダルなんて。全滅しててもおかしくない状況です。」
グフタスが声を荒げると、
「少しは落ち着け、グフタス。」
と、今度は経済卿が窘めた。
「そのことは、我々もわかっている、なぜこんなことに。本国の仕業か?我々も騙されたのでは?」
「本国?本国とはどう言うことです。騙された、とは。ルーテク経済卿!」
「いや、何でもない。お前には関係のないことだ。とにかく、今回の件は、我々の計画ではない、本当の“事故“なのだよ、グフタス。」
経済卿が話を逸らす。
「交通卿、その辺、確認を。」
「承知しました、財務卿。」
財務卿が、交通卿に耳打ちをし、交通卿が席を立って奥の部屋に消えた。
(本国って何だよ。騙された、だと?こいつら、一体何企んでやがる。)
「さて、とにもかくにも、今回の件、我々には、一切関係はない。断じて無い。いいな、グフタス。」
「ふ〜、わかりました。では、ルービフクラト財務卿、正直に事の詳細を話して構わないのですね?」
「あぁ、我々と貴様の関係以外は、な。」
「・・・」
グフタスは、何かを言いかけたが、言葉を飲み込んで、軽く一礼をして部屋を出た。廊下を少し歩いたのち、何とも言えない、そして抑えきれない、“怒り“にも似た感情を思いっきり声に込めた。
「クソがッ!」
「それにしても、一体何がどうなっているのだ。」
「このまま、計画を進めて良いのだろうな。」
「交通卿はまだか?」
しばらくして、奥にある扉が開いて、交通卿が戻ってきた。
「どうであった、交通卿。」
「はい、五賢師が一人、イグシナス様によれば、やはり、本国も関与していない、とのことです。」
「そうか。」
(イグシナス、下っ端か。それに、関与していない、とは。それを信じろ、と?)
ボルーイハ交通卿をはじめとした、ルービフクラト財務卿以外の者は、本国、つまり神聖国イントリーニアは関係ない、と信じ安堵している様子。
(こいつら、腑抜けている。そんなことはなかろうに。仕方ない、私一人で進めるか。)
「しかし、財務卿。ホブゴブリンやワーウルフはそれでもわかりますが、ハイスパイダルだけは、どうにも解せません。生息域は、ブラパよりもっと西の奥の方です。本国が関与していないとすると・・・。」
「そうだな。とはいえ、現時点ではわからぬ。わからぬことを考えても仕方あるまい。で、交通卿。本国は、計画自体どうすると?」
「はい。予定通り、とのことです。」
「そうか、わかった。では、諸君。予定通り、ことは進めるとしよう。」
部屋に一人残った、財務卿=ルービフクラト子爵は、思案する。
もはや、本国、神聖国イントリーニアの、五賢師のことは信用できない。しかも、同胞と思われた他の子爵も当てにならない。とすれば、
「本国はおろか、他の子爵たちをも見限る、か。」
「裏切るのですか?」
不意に影から声がする。
「戻ったか。逆だ、本国に裏切られるやもしれん、と言うことだ。そして、他の子爵どもは“見捨てる“。まぁ、しばらくは、奴らを利用するがな。私は、別プランを準備しておく。貴様には、これまで以上に働いてもらうぞ?」
「御意」




