それぞれのその時(5)
ゼノンとグフタスは、空いているテントに入った。
「グフタス、今回の件、少し面倒なことになるかもしれません。」
「術連長、どう言うことですか?」
「まずは、その“術連長“と言う呼び名、やめてください。私は“術連長“ではないし、今の“術連長“に申し訳がたちません。」
「ですが、私にとっては・・・」
「お願いです、“ゼノン“と呼んでください。」
「うっ。」
「お願いします。このことは、今回の件にも絡むことです。」
「わ、わかりました。今後は、“ゼノン様“と呼ばせていただきます。」
「それもこそばゆいのですが、まぁ、いいでしょう。では、本題に入ります。」
ゼノンは、似たような言葉をハルから言われたことを思い出し、その時は気づかなかったが、
(こう言う感情だったのですね、ハル様。でも、仕方のないことですよね。お許しください。)
「私たちがこの野営地に着いたときは、ハル様がハイスパイダルに切り掛かる時で、討伐の一部始終は見させてもらっています。」
「そうだったのですね。」
「はい、その後、念のため、この辺り一帯、そうですね、1路四方程度を探索してみましたが、その際、不審な影を2つ確認しました。」
「“影“ですか、それも2つも?」
「はい、追跡もしましたが、残念ながら、捕縛はおろか、正体すら確認できずに、取り逃してしまいました。」
「追跡は、アキやヒロたちですよね?」
「そうです。」
「彼女たちのことは、私も信用しています。技術もそうですが、人となりも、です。そんな彼女たちですら暴けなかったとするなら、その“影“とやらは・・・」
「えぇ、相当の強者。それに、今回の獣魔騒動と何らかの関係が。あるいは、その者たちの仕業とも。聞けば、グフタス、あなたたちの班でも似たようなことがあった、と。」
「はい、ゴブリンとホブゴブリンの大群やらワーウルフなど、この辺りでは到底考えられない獣魔と対峙しました。」
「そうですか。となると、やはり、その“影“の関係が濃いと思っていた方が良いですね。今の所、その目的はわかりませんが。」
「はい、すぐに王国に報告し、対策を講じます。今回の“巡礼“も含めて。」
「そうですね。その方が良いと思います。」
「明日、すぐに戻ります。」
その後、王都との念話が通じることが確認できたため、簡易的な報告を済ませ、翌朝すぐに、グフタス他数名の術師及び、師団員数名が、王都に向かい出発した。
入れ違いに、領都ラベンダルトから馬車が到着し、ミゼル他負傷者を乗せて、ラベンダルトへ戻った。残った師団員、領兵団員、前巡礼参加術師で野営地の撤収と大樹ブラパまでの巡礼路の整備、大樹ブラパ周辺の整地と神台の清掃を再度行った。この再整備、指揮を取ったのはゼノン。ミゼルはもちろん、グフタスも不在となるため、グフタスからの要請で、仕方なく。ただし、この場にいる誰しも異論はなく、時は経つといえ、さすが、“元・術連長“である。指示は的確で、人材も優秀なものばかり、人数もいたことで、作業は順調に進み、その日のうちに、しかもまだ明るいうちに、ラベンダルトへ帰着した。
(ゼノ爺、すごいや。)




