それぞれのその時(3)
「やったのか?」
「燃え尽きたみたいだな。」
「ハルテイラ・ラズベール!状況は?」
「はい、討ち倒しました!もう大丈夫です。」
“ウオォ〜“と一斉に声があがった。グフタスはおおきく息をはき、安堵の表情を浮かべた。
「大したもんだ。」
結界を解き、ハイスパイダルの亡骸に近づく。全てが燃え尽き、外殻だけが残っていた。
「よく、この硬い外殻を切り裂けたものだな。」
グフタスは、外殻をこまめに調査しているハルに声をかけた。
「なんとか、うまくいきました。」
「軽く言うな、ったく。でも、よくやった。感謝する。」
「と、とんでも無いです。そんな、もったいない。」
「まぁまぁ、そこは素直に受け取っとけって。ねぇ?班長。」
「セ、センパイ。」
「相変わらず、だな。フィオレッティ。」
「どうも。」
と、その時、森の奥から怪しげな気配を感じ取ったグフタスとフィオレッティ、ハルが振り向きながら身構えた。その気配の主の姿を目にした3人は、警戒から驚きに表情が変わった。
「術連長?」
「ゼノンの旦那?」
「ゼノ爺!」
「お見事です、ハル様。」
「ハル、様?」
「術連長?旦那?」
「お久しぶりですね、グフタス、それにフィオレッティ。」
「何、何?知り合いなの?ゼノ爺。」
「どう言うことだ?ハルよ。」
「ハル様、です。」
別の声がした。
「ゲッ、その声は?」
「げっ、とはなんですか、げっ、とは。それが、久しぶりに顔を合わせる同級に対する言葉、ですか?」
「ったく、相変わらずですね、フィオ。」
「そうですよ〜、パイセン。」
「なんでおま・・・」
「おま、なんですか?」
「イヤ、なんで、あなた方までここに?」
「そうですね、フィオレッティは存じていないんでしたね。私たちは、ハル様のお屋敷でお世話になっている使用人でございます。」
「えっ?みんな?」
「はい、私たちみんなです。」
「と言うことは、ハルの師匠役ってのは・・・」
「はい、私たちです。ね?ハル様。」
「うん、でもなんでみんなここに?」
ハルが、改めて聞いた。
「救援砲を聞きつけまして、奥様より申しつかり、参じた次第です。」
「母さんが?」
「はい、奥様も領都で待機されております。おそらくは、旦那様もこちらに向かわれているかと。」
「そうか、母さんが。父さんまでここに。」
「師団兵の方もこちらに向かわれているようなので、おそらくはフィレス様もお見えになるかと。」
「姉さんまで。」
「なぁ、ハルよ。この人たちからは、いつから?」
「僕が“天啓“を授かった5つの時から、ですね。」
「5つの時から?はぁ、どうりで。ハルの“桁違い“に納得したよ。」
「先輩は、ゼノ爺たちと知り合いなんですか?」
「あぁ。俺だけじゃなく、そこの班長さんも、だよ。」
と言って、“我関せず“と言わんばかりに、関係のない方を見て、“ダンマリ“を決め込んでいたグフタスを指さした。
「グータンは、私と同級です。」
とアキが言った。
「グータン?」
「“グータン“っていうのは、班長と同級の女性から呼ばれている“愛称“らしいぜ?なんでも、“可愛いい、グータン“ってな。」
「そ、そうなんですか?」
「お前ら、このことは他言無用だ、いいな?」
「は、はい。」
「ヘイヘイ。」
「そういうフィオとは、私が同級になります。」
ヒロが言った。
「それで、アキ様とヒロ様を通じて、私も面識を持った次第です。ね?パイセン。」
「その“パイセン“と言うのはやめろ。」
「パイセンはパイセンです。」
「ハルと同じじゃん。」
「そうですね、センパイはセンパイなので。でも、さっき、グフタスさんが、ゼノ爺のことを“術連長“って?」
「正確には、“元“術連長、な。」
「どういうことですか?」
「そもそも、術連を作ったのが、この人なんだよ。ハルテイラ。」
「え、えぇ〜?」
ゼノスの方を見ると、少し照れたような表情をしていた。
「私も、フィオレッティも、この人に引き抜かれたんだよ。そちらのお三方については聞いているのだろ?だから、私にとっては、いつまで経っても“術連長“なのだよ。」
「そういえば、グータン。ミゼルの姿が見えないけど?」
グフタスは、“ミゼル“の名を聞いて、顔を逸らした。
「何があったの?グフタス!」
アキの表情が変わった。
「ついてこい。来れば、わかる。」
「・・・」
グフタスが、アキを連れて最奥に位置しているテントに向かった。
「そうだ、ゼノ爺、力を貸してほしい。」
そう言って、ハルもゼノンたちを連れてテントに向かった。
「ミゼル?ミゼル!」
テントに入るなり、アキがミゼルに駆け寄った。
「これは?」
「ハイスパイダルの足を切り落とした際に、ハイスパイダルの血を浴びてしまったようだ。幸い、ハルテイラが応急処置をしてくれたんで、命は助かったんだが、その、まだ意識が戻らん。」
「これは、ハイスパイダルの毒、ですね。」
「なんとかならない?」
「ほう、ここまでの処置はハル様が?」
「うん、学園の図書室にあった文献の通りに。あれ、ゼノ爺が書き残してくれてたものでしょ?処置はできたんだけど。その、意識が戻らなくて。すぐに戻ると思ったんだけど・・・。」
「よく、見つけなされましたね。どれどれ、よく見せてください。」
と言って、ミゼルの容体を観察した。
「いい処置をされましたな、ハル様。これなら、大丈夫です。」
「ほ、本当ですか?術連長。」
「ゼノン様?」
「はい、大丈夫です。ただ、皆さんの力を少し貸してください。“闇持ち“は、他に何人いますか?」
「他に二人います。」
「連れてきてもらえますかな?」
「フィオレッティ。」
「あいよ、ちょっと待っててくれ。」




