それぞれのその時(1)
(ハル君、大丈夫よね。)
ゼノンたちと分かれて、一人領都ラベンダルトへ向かうハース。救援砲の連続2発以降は発砲がない。それはそれで良いと判断できる。もし、万が一の場合、もう1発救援砲が上がる。その意味は、“玉砕“。つまり、連続2発上げた場合、切り抜けるか“死“しかないのだ。とにかく、あと1発が上がらないことだけを祈りつつ、領都を目指す。
「アル!」
「ハース、来たのか。ゼノンたちは?」
「途中まで一緒だったけど、連続の救援砲を聞いて、巡礼路へ向かわせたの。アキたちも一緒に。」
「そうか。上がったところは、どうやら帰路側。おそらく、ハルのいる班だ。」
「やはりそうなのね。状況は掴めているの?」
「いいや、それが、念話が通じん。阻害されているようだ。」
「やはりそうなのね。一体、誰がそんなことを。」
「わからん。とりあえず、領兵で救助に向かう。俺も出る。」
「師団の方は?」
「一応、こっちに向かっているとの連絡が入っている。王都とは、念話が通じているから、ブライラだけがターゲットのようだ。」
「アル、気をつけて。私は、阻害の方を調べてみるわ。」
「あぁ。ハースも気をつけろよ。じゃぁ、行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
その頃。
(坊ちゃん、どうぞご無事で。)
(坊っちゃま。)
「少し、速度を上げますよ。」
「はい。」
ゼノン、アキ、ヒロ、イズの4人は、巡礼路の帰路側を駆けている。路は整備されており、程なくして、野営地に到着する。一旦止まり、近辺を探索する。
「どうですか、何か気配は?」
「いいえ、ここには何の気配もありません。ヒロ?イズ?」
「はい、こちらも何も。」
「こちらもです。」
「そうですか、では、この先ですね。急ぎましょう。」
「はい。」
4人は再び駆け出した。もう少しで次の野営地に辿り着く、というところで、イズが声をかける。
「ゼノン様!」
一行は一旦止まった。
「何か、ありましたか?」
「はい、ここから右奥に、おそらくはモンスターかと。」
「獣魔ではなく、モンスターですか?」
「はい、それも、かなりの大物。」
「なるほど。ヒロ、イズ。二人で探索を。正体だけわかれば良いので。絶対に無理はしないように。私とアキは、この先の野営地へ向かいますので、確認できたら、すぐに合流するように。」
「御意!」
ヒロとイズは、巡礼路を離れ、樹海の中に入っていった。ゼノンとアキは、巡礼を野営地に向けて駆け出した。
本来であれば、数日かかる距離を、整備されているとはいえ、ほぼ1日で走破した。
「あれは!」
「ハイスパイダル!」
「なぜここに?」
「ゼノン様!あれを!」
「ん?坊ちゃん!」
ゼノンとアキが野営地の入り口に到着し、ハイスパイダルを視認した時、結界からハルが飛び出し、電光石火の如く、ハイスパイダルを真っ二つに切り裂いた。その後、結界から闇を纏った火魔法のさまざまな攻撃がハイスパイダルに浴びせられ、炎を纏ったハイスパイダルの2つの体は、地に崩れ落ちた。
「さすがです、坊ちゃん。」
「恐れ入りました、あのハイスパイダルを切り落とすなんて。」
「ん、戻りましたか。」
「ゼノン様、ハイスパイダルのようです。本体はなく、抜け殻だけでしたが、真新しく、近くにいるかと、ん?」
「たぶん、あれでしょう。」
と言って、ゼノンが後ろ指で、野営地の方を指す。
「たった今、ハル様が撃ち落としましたよ。」
「えぇ?ハル様が、あのハイスパイダルを?」
「とりあえず、ハル様のところに行きましょう。」




