過酷な“前巡礼“(7)
ヒュ〜、ド〜ン。
「何かしら?こんな時間に。」
「奥様〜、奥様〜。」
「どうしたの?ゼノン。騒々しいわねぇ。」
「朝早くに申し訳ありません、奥様。ですが、大変です。救援砲にございます。」
「さっきの音は救援砲?って、まさか“前巡礼“?」
「そうでございます。」
「奥様〜、ゼノン様〜。」
「アキ。」
「こちらでしたか、大変でございます。」
「救援砲、ね?」
「あっ、はい、左様です。」
「どの方面だかわかる?」
「おそらくは帰路側かと。」
「そう。日程的には、ハル君たちの班、かしら。」
「はい、そうなるかと・・・」
ゼノンとアキが少し俯く。
すぐに、ヒロとイズも現れる。
「わかりました、まずは領都へ行くわよ。準備してちょうだい。」
「かしこまりました。」
ハース、ゼノン、アキ、ヒロ、イズの5名は、すぐに準備を整え、領都“ラベンダルト“へ向かった。
(何事もなければいいけど。ハル君。)
しかし、5名が領都に向かう道中の半ばに来た頃、再度救援砲が轟いた。それも、2発続けて。
「救援砲が連続で2発?」
アキが言う。
「奥様、“緊急事態“の合図です。」
ゼノンがハースに告げる。
「そのようね。私はこのまま領都へ行きます。あなたたちは、ここから、直接帰路側へ向かってちょうだい。あの子を、ハルをお願い。」
「かしこまりました。お任せください。必ずや。」
「頼みましたよ。」
「アキ、ヒロ、イズ、行きますよ。ついてきてください。」
「「はい。」」
ハースに一礼して、ゼノン、アキ、ヒロ、イズの4名は、巡礼路の帰路側へ向かい、ハースは、領都に向かった。
ハルとフィオレティ、他3名の5人がベースに向かって進んでいる時、2発の救援砲を聞いた。
「ハル!」
「はい、何かあったみたいです。すみません、僕はひと足さきに戻ります。慌てず、戻ってきてください。」
「あぁ、頼んだ。」
「はい。」
そう言って、ハルは、駆け出し、フィオレッティたちの姿が見えなくなったことを確認して、転移でベースの近くまで移動した。
ハルが目にしたもの。おそらくは、あれが『ハイスパイダル』。だが、何かがおかしい。そう、足だ。片方は3本の足と手の計4本伸びているが、反対側は、足が足りない。1本の足と手の計2本しかない。本来ならば、再生でもするのだろうが、断面に靄のような何かが纏わりついている。おそらくは、それが再生を阻害しているのだろう。そして、そのハイスパイダルが睨みつけ、攻撃を仕掛けている先で、術師たちが、結界を張って、耐え忍んでいる。ハルは、自身に支援を施し、結界の中に入る。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「ハルテイラか。って、どうしてここに?」
「それより、あれは?」
「あぁ、あれが、ここを襲った張本人らしい。足が2本ないだろ?ミゼルがなんとか切り落としたんだとさ。その時、断面からの液体を浴びて、あの状態になったようだ。最初は、奴の血液だと思ったらしいんだが。まさか毒とはな。」
「多分、血液でしょう。その血液中に毒成分があるんだと思います。」
「緊急事態の救援砲をあげておいた。なんとか持ち堪えられればいいのだが。」
「僕に考えがあります。」
「ン?まさかヤツを倒せるとでも?」
「はい、たぶん、ですけど。」
「それも文献か?」
「はい。」
「・・・。聞こうか。」
文献で読んだハイスパイダルの攻略法を伝えた。
「なるほど、ただし、それも“可能性がある“という程度か。」
「はい、でも、やってみる価値はあるかと。」
「そうだな。」
「この中に、火属性持ちの方はいらっしゃいますか?」
5人手を上げた。
「では、闇持ちの方は?」
1人。ハルは、考え込んだ。
「どうした?」
「光の方は?」
グフタスを含め4人。その間も、ハイスパイダルは攻撃を続ける。なんとか結界は持ち堪えている。
「すみません、もう少し、堪えていてください。すぐに戻りますから。」
ハルは結界から外に出て、木々の中に入っていった。しばらくして、ハルはすぅっと姿を消した。
「頑張れよ、もう少しだ。」
フィオレッティが声をかけたその時、
「センパイっ!」
「ハル?あれ?ベースに戻ったんじゃ?」
「はい、また戻ってきました。センパイ闇持ちですよね?」
「は?いきなりなんだよ。まぁ、そうだが。」
「あと、そちらの方は火か光持ってませんか?」
「俺は光だ。」
「僕も光。」
「俺は火。」
「すみません、みなさん攻撃魔法打てますか?」
「よくわからんが、多分大丈夫だ。」
「助かります。野営地がまた獣魔に襲われています。なので、急ぎます。」
「な、何?獣魔って、またアイツか?」
「そのようです。みなさん、風の生活魔法をご自身の足に纏わせてください。」
「は?足に纏わせる?風の生活魔法を?」
「はい、それで、今よりは楽に、しかも早く走れますので。」
半信半疑ではあったが、風の生活魔法を各自が足に纏わせた。
「へ〜、こういう使い方があるとはね。」
「では、行きましょう。」
と言って、改めて走り出した。ハルの言う通り、楽にかつ早く野営地に到着することができた。
ハルとしては、この使い方を教えたくはなかったが、とはいえ、転移で移動するのは、今後のことを考えリスクが大きすぎると判断し、やむを得なかった。
(仕方ない、また他の使い方を考えよう。)




