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門兵ですが、そこそこできます  作者: 勢崎カスリ


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過酷な“前巡礼“(2)

 川に架かっている橋を渡り、少し進んだところで、早くも“前巡礼“の“洗礼“を受けた。大樹海への入り口が雑草で覆い尽くされていて、通れない状態なのである。さっそく、雑草の除去作業に入る。除去は、本来であれば、魔法を行使するだが、今回は“前巡礼“と言うことで、全て手作業で行う。また、除去した雑草は、持ち帰ることはできないため、大樹海の大地に還すことになる。とはいえ、炎で焼いて“灰“にして還すのではなく、この作業では、巡礼路から外れた場所に穴を掘り、そこに埋めて還すことになる。そのため、雑草を除去する者、穴を掘り、埋める者、雑草を運ぶ者、と日替わりで分担して作業を進める。まだ入り口だから良いが、これが大樹海に入っている場合、そういった作業を進めながら、常に、獣魔の存在を気にかける必要も出てくる。肉体的にも、精神的にも負担のかかる作業である。

 しかも、雑草とはいえ、さまざまな種類がある。中には、鋭利な葉を携えているもの、棘を有しているもの、一見、朝露や単なる草露に見える液体が、実は毒性のあるものであったり、さまざまな草が存在する。それらを見極めながらの除去作業は、流石に困難を極めた。

 除去した雑草は、腐食魔法で雑草の生命力を奪ってから運ぶ。掘った穴に雑草を入れ、穴が一杯になったら、さらに醗酵魔法を施して、土を被せて穴を塞ぎ、目印の杭を打ち付ける。そして、新たな穴を掘る。“前巡礼“における基本的な作業はこの繰り返し。巡礼路のはずれのそこかしこに、古い杭があるのを目にするが、それらは過去の“前巡礼“の名残である。

 ただし、巡礼路を塞いでいるのは、何も雑草だけではない。枯れ枝や倒木などもある。枯れ枝は雑草と同様に、毒等に注意しながら一緒に穴に埋めるが、厄介なのは倒木。倒木の場合は対処が異なる。倒木は、新たな木々の土台にもなるため、穴に埋めるのではなく、巡礼路からある程度離れた場所に移動させる。倒木移動の場合は、作業を一旦やめて、全員で移動させる。巨木の場合は、2つ3つに幹を切断して運ぶ。

 作業は日の出直後くらいから開始して、そろそろ昼近くになるが、約5時間休みなく作業して、進んだのは距離にして3路分、約3Kmほど。ここで、休憩に入る。協会から食材は支給されているが、1日1食として計算されているため、朝と昼は各自で用意したものを食べることになる。ただし、茶は毎回淹れる。夜勤巡回時にも飲んでいるこの茶。とても苦いが、栄養補給に適した茶なので、皆仕方なく、飲み干す。ハルも、干し肉を食べながら、茶を飲む。

 「しかし、相変わらず、苦ぇ茶だよな。なんとかならんのかねぇ、これ。」

 「実は、苦くならない飲み方、というか淹れ方があるようですよ。」

 「ほんとか?」

 「はい。ただし、贅沢な入れ方なので、こういう野営時には向かないようですが。」

 「なんだ、それじゃぁ、意味ねぇな。こういう時に、普通に飲めねぇとな。」

 「ですね。」

 休憩も終わり、改めて作業に入る。昼前の作業でほぼ要領を得たため、休憩後の作業は、結構捗った。大きな倒木もなかったこともあり、約4時間の作業で4路分進んだ。日没までにはまだ時間はあるが、樹海のため、日の翳りが早い。また、初日ということもあり、作業は早々に切り上げ、夕食の準備に入る。10人が休める程度のスペースを見つけ、そこを本日の野営地とする。数箇所に目印の杭を打ち付け、対獣魔結界を展開してから、調理に入る。簡単な食事になるが、それでも“匂い“は出る。その匂いに釣られて、遥か遠くからでも、獣魔はやってきてしまう。それを防ぐための結界である。

 「やっと、終わったな。お疲れさん。」

 「お疲れ様でした。長い1日でしたね。」

 「全くだ、初日でこれだもんな、先が思いやられる、ってもんだ。」


 食事の準備も終わり、皆に食事が行き渡ったのを確認し、班長のグフタスが声を発する。

 「みんな、今日1日ご苦労。今日1日で7路分。我が班の担当は20日で120路分。このままいけば、予定通りに作業が終わる想定だ。しかし、何があるかわからないので、引き続き、気を引き締めて、ことにあたってくれ。では、飯にしよう。以上。」

 「やっとメシか。といっても、これか。仕方ないといえば、仕方ないんだが、味気ねぇな。」

 「ですね。それと、この茶ですね。やっぱり、苦いです。」

 「あぁ、苦げぇ。」

 食事は全員で手分けして準備する。そして、さっさと済ませて、後片付け。少しでも睡眠時間を確保し、その日の疲れをとる。いかに選ばれた術師といえども、疲れは溜まる。いかに、この“疲れの溜まり“を少なくするか、が今後の作業に大きく影響するため、とにかく睡眠時間は多くとる。特に、獣魔と対峙する可能性を考えると、休める時に休む必要がある。作業道具の手入れを兼ねて、少し雑談等の気休めの時間をとり、就寝する。


 「明日の起床は5時。6時より、作業を再開する。起床係、よろしく。以上。」

 朝の起床係は、持ち回り。“時の知らせ“を身につけて眠ることになる。

 「さぁて、寝るとすっかね。」

 「そうですね、寝ましょう。」

 「んじゃぁ、おやすみ。」

 「おやすみなさい。」

  

 長い1日が終わった。

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