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門兵ですが、そこそこできます  作者: 勢崎カスリ


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過酷な“前巡礼“(1)

 「よう、ハル。ゆっくり休めたか?」

 「はい、思ったよりは、休めました。センパイはどうです?」

 「まぁ、いろいろあたふたしたがな。なんとかベッドで寝ることはできたよ。はぁ、しばらくは、ベッドともおさらばだなぁ。」

 「そうですね。あっ、馬車、来ましたね。」

 「来ちまったかぁ。仕方ねぇ、乗り込むとするか。」

 「はい。」

 馬車は2台。班ごとに分かれて乗車。幌つきの荷台は、10人が何とか座って乗れる広さ。荷台の後ろに小さめの貨車が続く。この貨車には、テント、鍋、湯器、作業道具、前巡礼中の食料などの共用荷物が積まれている。協会の裏庭を出立して、目的地であるラベンダルトの領門までは、徒歩で1日半、通常の馬車でも半日以上はかかるが、今回協会が用意した高速馬車であれば、約3時間ほどで到着する。

 班のメンバーは、特に言葉を発することなく、決して乗り心地がいいとは言えない荷台の中で、目を瞑り、静かにその時を待つ。

  

 馬車は、領門に到着後、領壁に沿ってさらに移動する。そして、通常の領門とは異なる姿の門の前で馬車が停車した。“巡礼門“である。

 「ん?着いたのか。」

 「はい、着いたようです。」

 「そうか。」

一人ずつ荷台から降り、伸びをする。ハルにとっては、見慣れた風景が広がる、はずだが、今は暗がりで何も見えない。かえって、その方が良い。貨車に積んである共用荷物を手分けしてストレージ・バッグに入れる。御者台にいたロッドウェルが声をかける。

 「諸君、いよいよだ。よろしく頼む。そして、諸君らの“無事“を祈っている。いざ!」

 10人が隊列を組んで歩き出した。隊列は2列。班長、副班長は既に任命されており、必ず班長が最後尾、副班長が先頭に入る。その他の者が、日替わりで先頭と最後尾に入る。領門兵が巡礼門を開け、両側に領兵団が整列し、国兵礼をとり、“彼ら“を見送る。暗がりでよく見えないが、なんとも言えない“イヤ“な空気感を感じる。と、ハルは、ある別の空気を感じた。それは懐かしくも温かい、それでいて一種の寂寥感。おそらくは、父、母、そして使用人たちの発する空気。この領壁の近くにいるのだろう。

 (行ってきます。)

 (頑張れよ、ハル。)

 (頑張ってね、ハル君。)

 (ご無事で、ハル様。)

  

 巡礼門を抜け、拓けた土地を歩く。ここは、いわゆる領内と“ブライラの大樹海“との間の“緩衝地帯“になる。しばらく続く“緩衝地帯“を歩いていくと、大きな川に到着する。この頃には、周囲もだいぶ明るくなってきた。そろそろ日の出だ。川を渡る前に一度休憩を取る。ここまで約2時間の行軍。

 「15分休憩する。」

 「ふ〜、なんとも言えねぇ、イヤな雰囲気だったな。」

 「えぇ、初めて感じるものでした。これが“前巡礼“なんですね。」

 「まぁ、始まったばかり、だがな。とりあえず、緊張はほぐれたか?」

 「はい、少しは。でも・・・。」

 と言って、川の向こう岸に見える鬱蒼とした木々を見つめるハル。

 「あぁ、本番は、あそこからだ。」

 フィオレッティとそんな会話をしながら、体をほぐすハル。フィオレッティはじめ、他のメンバーも各々のやり方で体をほぐしている。

 「時間だ。出立!」

 班長が声を発する。いよいよ“ブライラの大樹海“に踏み入る。

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