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門兵ですが、そこそこできます  作者: 勢崎カスリ


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過酷な“前巡礼“(3)

 “前巡礼“に入って、5日が過ぎた。獣魔との遭遇もなく、順調に巡礼路の整備は進んだ。ここまで1日あたり約10路分の整備ができ、全行程の約半分が終わった。3箇所ある野営地のうち、1箇所の整備も終わっている。今日は、2箇所目の野営地の整備。ここには、近くに水場もあるため、水の状態も含めて、念入りに整備を行っている。ただし、水場がある、ということは、それだけ獣魔との遭遇もかなりの確率で考えられる場所になる。案の定、獣魔と思しき足跡がそこかしこにあったため、術師の間にはこれまで以上に緊張感があった。そして、今までにはなかった、獣魔との“距離“から来る一種の“恐怖“に近い感じ。そのなんとも言えない“場の雰囲気“は、程なく現実のものとして、術師達を襲うことになる。

  

 暫く二手に分かれて、野営地と水場の整備をしていると、水場担当の方から、突然呼子がなった。獣魔が現れたのだ。術師達の間に新たな緊張が走った。

 「ついにきたか。」

 「・・・」

 ハルは、“イヤ“な感覚を覚えた。それは、フィオレッティも同じだった。

 「なんか、おかしくねぇか?」

 「わかります?何かがおかしいです。」

 「あぁ、なんか、普通じゃねぇ。」

 「えぇ。」

 ハルとフィオレッティが話しながら身構えていると、水場担当の5人が大慌てで戻ってきた。

 「獣魔だ!」

 「わかった、で、何が出たんだ?」

 「ゴブリンとホ、ホブゴブリン。それも大群です。」

 「はぁ?ゴブリンならまだしも、ホブゴブリンだァ?それも大群?」

 すると、ゴブリンが20体、ホブゴブリンも10体、野営地に姿を現した。

 「おいおい、ほんとかよ?」

 「聞いてないぞ、こんなの。」

 「そんなこと言ってる場合じゃねぇぞ。」

 「あ、慌てるな、まずは、迎撃体制に入れ!(話が違う!)」

  

 術師達は、とにかく武器を持ち出し、迎撃体制に入る。しかし、こちらの体制が完全に整う前に、まずはゴブリンの第一陣と思しき10体が攻めてきた。こちらも10人。1対1の戦闘。戦闘の訓練はしてきているとはいえ、所詮は“魔術師“。攻撃力がさほど高いわけでもなく、ゴブリン相手でも、それなりに苦戦を強いられていた。

 ハルは痩身剣で応戦。フィオレッティは鋼糸中心に応戦。二人ともあまり目立たないようにしていたが、そうも言っていられない状況になり、ハルは本気で対応。まずは、目の前のゴブリンを倒し、仲間への応戦に入る。人数的にこちらが有利になる状況に入ったところで、第二陣と思しきゴブリンが出てくる。そこで、ハルも第二陣へ意識を向け、掃討に入る。第二陣も半分に減ったところで、様子見をしていたホブゴブリンへとそのまま突進していった。

 一見、“ヤワ“に見える痩身剣でも、“闇属性“の魔気を纏わせているため、殺傷力は高く、ホブゴブリン相手でも、問題はなかった。そのことは、ホブゴブリンも本能的に察したのか、数体が一度にハルに攻撃を仕掛けてきた。ハルは、自身に強化魔法を施し、さらに生活魔法の“風“を活用して、突進力をあげ、痩身剣で切り上げたり、突いたり、と縦横に駆け回り、なんとか、5体を倒した。

 ここまでくると、さすがに息も上がってきたので、一旦、距離をとって、呼吸を整える。その間、長い方の鋼糸を準備し、同じく闇属性を纏わせた。その時、ゴブリンを数体仕留めてフィオレッティが寄ってきた。

 「おいおい、随分派手にやるねぇ。」

 「すみません、めんどくさくなっちゃって。」

 「ははは、わかるけどヨォ。ほどほどにな。もたねぇぞ。」

 「はい。気をつけます。」

 “ん、じゃぁ“と言って、まずは、フィオレッティがリーダーと思しきホブゴブリンめがけて、鋼糸を飛ばす。それに追従するように、ハルも鋼糸を飛ばす。リーダーらしきホブゴブリンもそれに気付き、手にしていた大剣で鋼糸を逸らす。と、その瞬間、ハルは手首を返して、鋼糸を操作、鋼糸はまるで生き物のように方向をホブゴブリンの足元へ変えた。慌てて、ホブゴブリンは足を逸らしたが、両足いっぺんには動かせず、残っていた足に鋼糸が巻き付いた。すかさず、ハルは雷属性の“電撃波ライトニング“を鋼糸に通して放つ。流石に、ホブゴブリンを相手に、“電撃波ライトニング“で倒せるはずもなく、一瞬、ホブゴブリンの動きが止まっただけであった。しかし、それで十分。そこにフィオレッティが再度、鋼糸を飛ばし、ホブゴブリンの首に巻きつけ、同じく“電撃波ライトニング“を放つ。さらに別の術師が、その状況を踏まえて、水魔法の“水球ウォーターボール“を放つ。3人からの同時攻撃を受け、ホブゴブリンは“感電“する形で、絶した。

 残りの4体についても、他の術師たちが、集団で対応し、なんとか、掃討に成功した。

 「ふ〜、なんとかなったな。」

 「はい。」

 そう言って、水魔法を放ってくれたもう一人の術師に礼を言って、倒したゴブリンたちの後始末を始めた。

 「というか、センパイ。もう少し助けてくれると思ったんですけど?冷たいんですね。」

 「いやいや、助ける必要なんてなかったでしょ、ハル君?」

 「・・・(ジト〜っと冷めた目で見つめる)」

 「そんな目で見んなよ、はいはい、ごめんなさい。あなたの戦いっぷりに見惚れてて、助けるのを忘れていました。ごめんなさい。」

 「もう、頼みますよ。本当に必死だったんですから。」

 「悪かったよ。次んときは、ちゃんとやるから、許してくれ。」

 「えぇ?、次、あるんですか?」

 「いや、わからんが、もしあったら、って話だよ。」

 「もう、脅かさないでくださいよ。」

  

 (なんなんだ?アイツらのあの動きは。想像以上だぞ。それにしても、話が違うぜ親方さんよ。30体って。しかもホブゴブリンまで。何かの間違いだろ?下手したら、俺たち全滅だぜ?)

 (おい、なんだよアレ。ちゃんとあのかたに伝えろよ。こっちの命が危ねぇぜ。こんなの。)

 (あぁ、わかっている。きっと何かの間違いだろうよ。)

 (イヤイヤ、間違いじゃすまねぇよ。ことの顛末、ちゃんと聞いておけよ。)

 (あぁ、わかった。)

 “とりあえず、念話で伝えるか。“ということで念話をかけるが、できない。

 (何?念話が通じない。阻害されている。ここの範囲内では通じるのに、外との念話はダメってことか?)

 (どうした?)

 (外との念話が通じん。)

 (ホントか?誰の仕業だ?まさか、アイツらか?)

 (イヤ、・・・。)

 グフタスが、ハルとフィオレッティの様子を伺った後、目を細めて、空を見上げる。

 (そうでもなさそうだ。どうやら、外部の奴の仕業らしい。)

 (マジか?まぁ、アンタがそういうんなら、そうなのかもな。だが、そっちの方が厄介だろ?)

 (あぁ、何か想定外のことが起きているのかもな。しばらくは、こっちの判断で動くしかないが、面倒だな。)

 (全くだ、何がどうなっていることやら。)

 (とりあえず、慎重にいくぞ。)

 (あいよ。)

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