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門兵ですが、そこそこできます  作者: 勢崎カスリ


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束の間の休息(10)

 いろいろとハルが物色していると、背中越しにマリーエルが声をかけてきた。

 「で、ハルは何か探し物でも?」

 「いえ、特に何かが欲しいわけではないんです。武具として、どういうのがあるのかを知りたくて。その中で、使えそうなものがあれば、購入する、って言う感じですかね?」

 「なるほど。門兵って言ったよね。遅番もやるのかい?」

 「はい、やります。」

 「その時の持ち物は?」

 「僕は特に何も。強いて言えば、その時に支給される、武具や食器類ですね。」

 「自分専用はない、と?」

 「はい。この痩身剣だけですね。」

 そうすると、女店主は少し思案した後、別の棚のところに移動して、ハルを手招きした。

 「なら、これなんかいいと思うよ。持っているかい?」

 「これは、鋼糸はがねいと?」

 「知ってるねぇ、そう、鋼糸。本来であれば、剣士に属する者が使用するんだけど、門兵なら、術師でも、利用場面はあるよ。」

 「持っていませんし、支給武具にもありませんね。でも、そういえば、一緒にいる、同じ術師のセンパイは持っていました。」

 「だろ?剣士のように攻撃特化の利用はできないけど、術師ならではの使い方がある。わかるかい?」

 と聞かれたが、ハルにはピンとくるものが思い浮かばない。

 「主に、“拘束“だね。相手の動きを封じる純粋な拘束や、この鋼糸を通して、拘束した者に痛覚を与えたりもできる。まぁ、いないだろうけど、雷を持っていると有効だね。」

 「僕、雷持ってます。」

 「へぇ、そうかい。なら、なおのこと、これ、いいよ。」

 「今の話を聞いてて、僕もそう思いました。これ、ください。」

 「はいよ、で、長さ、どれにする?いろいろな長さがあるよ。」

 「これって、伸びるんですね?」

 そう言って、鋼糸を両手で持って、ひっぱってみたりした。

 「まぁ、伸びると言っても、気持ち程度だけどね。」

 「それなら、一番長いヤツと二番目に短いヤツをください。」

 「ふ〜ん、面白い選択だね。はいよ、じゃぁ、これとこれだね。」

 「ちなみに、鋼糸も手入れは必要ですよね?」

 「まぁね。手入れを怠ると、肝心な時に切れちまうから、気をつけな。これが、専用の手入れ具だよ。」

 「それなら、これも一緒に。ありがとうございます。」

 とやりとりしている間、フィレスはずぅっと悩んでいた。

 「う〜、どれにしよう。どれも綺麗で、可愛い。」

 「姉さん、決まった?」

 「う〜ん、ねぇ、ハルどうしよう。これか、これなんだけど、どっちがいいのかわかんない〜。」

 「へぇ、フィレス、目のつけどころがいいねぇ。こっちは主に攻め、こっちは主に守り、だね。」

 「え?そうなんですか?単に、柄で見てました。」

 「あははは、正直だねぇ、結構結構。それでいいんだよ。最初は直感、その後に色々考えれば。戦いの時もそうさ。まずは、自身の直感を信じな。どうするかは、その後さ。その時間差をなるべく短くする。それが、上級か下級かを分けるし、“命“につながる。」

 「へぇ〜。はい、わかりました。ありがとうございます。」

 「で、どっちにするんだい?」

 「う〜ん。」

 「両方でいいんじゃない?無理にどっちかにする必要ないと思うよ。これ、両方ください。」

 「即決だね?いいのかい?」

 「えぇ、“攻め“と“守り“でしょ。バランスが良くていいです。」

 「仮に両方攻め、あるいは、両方守りだったら?」

 「それはそれで、どちらかに特化するわけで、姉さんが違う方をより強く意識してくれればいいだけなんで。」

 「なるほど、ハル、賢いね。その考え、戦場でも十分力を発揮するよ。フィレス、いい弟を持ったね?」

 「はい、自慢の弟です。」

 支払いを済ませて、店を出る。

 「しばらくは、王都ですけど、こっちに帰った時は、必ず、寄らせてもらいます。」

 「あぁ、楽しみにしているよ。旦那も会いたいだろうし、必ず寄ってよ。今日は楽しかったよ。あんたたちと話ができて。」

 「こちらこそ、色々教えてももらっちゃって、ありがとうございました。」

 そう言って、店を後にした二人。馬車の出発時間まではまだ余裕があったので、領都の中心にある丘に向かった。ここには、王都の丘と同様に、大樹ブラパの分け枝から成長した支木がある。

 この国、パンズール王国では、国に接して広がる“ブライラの大樹海“にそびえ立つ“大樹ブラパ“を神木としているため、その大樹ブラパの分け枝を、王都と王国内の各貴族領の領都に植樹して祀っている。そして、王国民は、この支木の根元で、祈りを捧げることが、風習となっていた。ハルは、鍔飾りを、フィレスはガントレット飾りをそれぞれ、根元にある神台に乗せ、祈りを捧げる。そして、ハルは、ガントレット飾りに自身の“気“を送り、ガントレットに装着する。フィレスも鍔飾りに同じく自身の“気“を送り、痩身剣の鍔に装着する。

  

 「ねぇ、ハル。」

 「何?」

 「・・・・」

 「うん、いいよ。」

  

 馬車の出発時間になった。

 フィレスは、ソードの“炎風・トモエ“とガントレットの“炎風・シズカ“、そして、新たに加わった、攻め飾りと守り飾りに、“炎風:サト“と“炎風・ハンガク“と名づけ、それぞれを手に、王都に帰っていった。ハルの姿が見えなくなるまで荷台の後ろから見ながら。

 ハルも、領都の門から、馬車を見送った。馬車が見えなくなるまで、その場に立ち止まって。ちなみに、フィレスから送られた鍔飾りは、“攻め“らしい。ハルは、“闇雷・オゴ“と名づけ、フィレスを見送っている間、痩身剣の“闇雷・ノブツナ“と一緒に握りしめていた。

 ちなみに、自身が持つ武器に名を授けることは、自身の属性が武器に付与され、より強固な武器に成長する、ということに繋がる。ただし、このことを知るものは、この国の民の中でもごく一部。幼き日、ハルはたまたま名を付け、フィレスも、ハルが名を付けたことを知り、「かっこいい」ということでハルを真似ただけだった。その効果は、後から使用人に教えてもらって知った、という次第。

  

 いよいよ、準備を整え、過酷な“前巡礼“に入る。

 (よしっ!)

 ハルは、踵を返し、ラズベールの屋敷に戻り、2日後、王都へ戻った。

  

 (フィレス。これから大変だろうけど、頑張るんだよ。ハル、フィレスのこと頼んだよ。しっかり助けておやり。それにしても、アル、ハース。いい子に育てたねぇ。お疲れ様。)

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