束の間の休息(9)
「これにする。この図柄、なんか惹かれる。」
「うん、私もいいと思うよ。おかみさ、お姉さん。」
“おかみさん“と言おうとしたら、ギロリと睨まれたので、慌てて、お姉さんと言い直したフィレス。女店主は、笑顔で、
「はい、なんだい?」
「これにします。」
「はい、毎度。」
「それと、お姉さん?」
「なんだい?僕。」
「あ、あの。逆に、剣士とかであれば、どのようなものが“お守り“としていいんでしょうか?」
「そうだね、今度は、僕からお姉ちゃんに?」
「はい。」
「優しいねぇ。と言うことは、お姉ちゃんの方は“剣士“さんかい?」
「はい、そうです。」
「ふ〜ん、ちょっと手のひらを見せてごらん。」
「手のひら、ですか?はい、どうぞ。」
「ほ〜。で、その剣、ソードだね。ソードを持つ時、ガントレット嵌めてるね?」
「はい、よくわかりますね。以前、手を突かれて苦戦したことがあったので。」
「なるほど、まぁ、ガントレットを使うことは悪くない。そのガントレット、今持っているかい?」
「はい、あります。ちょっと待ってください。」
と言って、手荷物の中から、ガントレットを取り出し、女店主に見せた。
「これです。」
「へ〜、若いのに、ちゃんと手入れしているねぇ。」
「はい、これを購入したお店のご主人や奥さんから、強く言い付けられましたので。」
「ふ〜ん、なら、このガントレット用の装飾でいいんじゃないかい?それなら、こっちだよ。」
と言って、反対側の棚に案内してくれた。
「わ〜、こっちも綺麗ですね。しかも、色々な色まで使われている。」
「ほんとだ。」
「まぁ、ガントレットだと、女も使うからね。ここは主に女用で、そっちが男用さ。」
「へぇ〜、でも男の人用のは、色は使われていないんですね。」
「まぁ、色があると、弱く見えちゃんだろうね、それが嫌だって、よく言われるよ。」
「そうですか、僕なら、むしろ、色があったほうが、いいですけどね。」
「ほ〜、面白いこと言うね、僕は。」
「あの、その“僕“っていうのやめてもらえませんか?一応、王都で門兵やっていますので。」
「あらら、ごめんなさいね。と言うことは、ラベンダルトには?」
「僕たち、もともと、ここの生まれなんです。今、休暇で帰ってきているんです。」
「そうかい。それなら、これからも寄っておくれよ、帰ってきた時でいいからさ。そうだ、せっかくだから、あんたたちの名前、教えてもらってもいいかい。私は、この店の、一応、女店主で、マリーエルさ。」
「はい、僕は、ハル。ハルテイラ・ラズベールと言います。」
「私は、フィレス。フィレスワット・ラズベール、と言います。」
「ハルとフィレスだね。よろしくね。で、これらの品を作っているのが、私の旦那で、ドルガって言ってね。今は、材料の買い出しで不在なんだけどさ。今度寄ってくれた時に紹介するね。」
「ありがとうございます。少し、店内見させてもらってもいいですか?」
「あぁ、いいよ、どんどん見ておくれ。」
“私は、もう少し、こっちを見てるね“と言って、フィレスは真剣にガントレット用の飾りを見ていた。
「でも、その痩身剣、ただの痩身剣、じゃぁないね?何か、手を加えてるね?ちょっと見せてみ。」
と言って、痩身剣をハルから受け取る。
「わかるんですか?」
「まぁね。ほ〜、“魔気“、かい?」
「参りましたね、もう少し抑えないとダメですかね。」
「いやいや、これではあまり意味がないね。というか、剣にとっては、かえって負担だよ。かけるなら、もっとしっかりかけてあげないと。それに、かけたところで、気付かれやしないよ、その辺の剣士や術師には。まぁ、私だから気づいた、ってところさ。」
「と言うことは、マリーエルさんは相当な剣士さんか術師さん、と言うこと?」
「私は、単なる“鍛治師“だよ。まぁ、旦那ほどではないけどね。鍛治師でも、そこそこ行けば、上級剣士や上級術師と“見る目“に関しては、対等だね。」
「なるほど、勉強になります。」
と言うことで、フィレスにも声をかけ、どの程度まで強めていいかをマリーエルに見てもらいながら、剣への“属性纏い“を調整しながら付与し、その感覚を身につけた。




