束の間の休息(8)
「このお店ね。」
“カラン“
「いらっしゃ〜い。」
「すみません、剣の鍔につけられるものを探しているんです。王都で見たんですけど、こちらにもあるって、聞いてきました。」
「鍔に、ねぇ。王都で?」
「はい。」
店主らしき女性が少し思案し、
「それなら、あれね。こっちよ。」
と言って、奥に案内してくれた。
「王都で見たって言うのは、こんな感じのものかしらねぇ?」
「え〜っと、はい、そうです。全く同じではないですが、こんな星型のものでした。」
「まぁ、手作りだからね。全く同じものは、存在しないのよ。」
「そ、そうですよね。わぁ、これも綺麗ですね。」
「でしょ?このくらいの細かさで装飾できるのは、うちの旦那くらいなもんよ。まぁ、似たような柄はラベンドアール内なら、そこらじゅうにあるけどね。」
「やはり、この柄自体は、ラベンドアール独自ですか?」
「そうね、他の領の柄はまたちがうからねぇ。ある意味、領のシンボルみたいなもんだね。」
「へ〜、いろいろな形があるんですね。柄も色々だけど、なんか、統一性みたいなのは感じます。」
「いいとこに気づいたね、そうなんだよ。これだけではないんだけど、装飾する際の基本図柄、って言うのが、どの領にもあってね。あとは、それぞれの職人が、その基本図柄を独自に加工するのさ。」
「そうなんですね。だから、王都で見た時も、なぜか、懐かしさを感じたんですね。」
「そう、そこ。どこにいても、故郷を思い出させてくれる品を、って言うのが、うちの旦那の、というか、各職人の想いだからね。」
「すごいですね。」
「で、探しているのは、“鍔飾り“でいいのかい?」
「はい、まぁ、厳密には、“お守り“になるものであれば、鍔用でなくてもいいんですけど。」
「“お守り“ねぇ。だれがだれに?どんな意味で?とかあるのかい?」
「えぇっと、私が、この子、弟に。仕事の無事を祈って、というか。」
「なるほど。その仕事ってのは、危険が伴うのかい?例えば、獣魔とか、あるいは、崖なんかの危険な土地とか?」
「獣魔なんかと鉢合わせる可能性はありますね。」
「ふ〜ん、なら、その腰につけている、それは痩身剣だね、それ使うんだろ?」
「たまに、ですね。僕は術師なので、これを使うのは、本当にいざって言う時くらいです。」
「なるほど。それならなおのこと、“鍔飾り“でいいんじゃないかね。常に振り回しているってんなら、邪魔になる可能性もあるけど、いざ、と言う時だけであれば、その時までは、自身を守ってくれるし、その時には、力を貸してくれるさ。」
「そうなんですね。なら、鍔飾りがいいな、姉さん。」
「うん、どれにする?」
二人して、あれだこれだ、と探している姿を優しい笑顔で見守っている女店主。
(よくぞ、ここまで大きくなられましたね。)




