束の間の休息(2)
「ママ〜、ただいま〜。ハル、いる〜?」
「お帰りなさい、フィレスちゃん。全く、着いた早々、何?ママより、ハル君?」
「そういうわけではないけど。」
「安心なさい。ちゃんといるわよ、とりあえず、荷物を。」
「おかえりなさいませ、フィレス様。お荷物をお預かりいたします。」
「ありがとう、アキ。お願いするわ。」
「かしこまりました。ハル様は裏庭でございます。」
「ありがとう。」
と言って、屋敷に着くなり、裏庭にいるハルの元へ向かうフィレス。お互い顔を向け合い、苦笑いするハースとアキ。フィレスが裏庭へ行くと、ハルとイズ、それにゼノンの3人で何やら問答をしていた。近づくと、ゼノンがフィレスに気付き、
「これはこれは、フィレス様、おかえりなさいませ。」
続けて、イズが
「おかえりなさいませ、フィレス様」
と言って、礼をする。最後にハルが
「おかえり、姉さん。」
「ただいま。それより、どうしたの?急に里帰りだなんて。私聞いてなかったわよね?」
「うん、急だったからね。ごめんね。」
「ううん、いいのよ。でも、なんで?何かあったの?」
「うん、急な話だったんだけど、以前、姉さんが“巡礼“の話、してくれたでしょ?」
「うん、私が“巡礼“に同行するっていう話?」
「そう。その時、“前巡礼“があって、それが結構過酷だってことも。」
「えぇ、したわね。って、もしかして?」
「そう、そのもしかして、になっちゃって。で、急遽休みをもらえたので、帰ってきたんだ。その話が一昨日のことで。」
「うわぁ、ほんとに急なのね。でも、なんでハルが“前巡礼“なんかに?」
「うん、その話もあってね。相談というか、色々アドバイスなんかもらえたらと、思って帰ってきたんだ。」
「そうだったのね。ごめんね、変に勘ぐっちゃって。」
「ううん、姉さんなりに心配してくれたんでしょ?ありがとう。でね、その辺のこと、姉さんにも聞いてもらいたいんだけど、いいかな?」
「もちろんよ。だから帰ってきたんだし。」
「うん、じゃぁ、もうちょっと待って。今、イズ姉とゼノ爺に教えてもらっているところなんで。」
「うん、ごめんね、邪魔しちゃった。」
「ううん、大丈夫。それじゃぁ、イズ姉、今の所、もう一度教えてもらえるかな?」
「はい、ハル様。この場合、相手が“魅了“魔法のこの部分をこのように書き換えることによって、“対魅了“の対策をするんです。」
「そうか、ここが“穴“になるのか。で、そこをついてくる?」
「そうです。なので、その部分をこうすることで、その“穴“を塞げますので、相手が、“対魅了“を施していても、その効果を上書きできるのです。」
「うわ〜、その発想って、すごいね。“対魅了“に気づいた人もすごいし、さらにその上を行く人もすごい。奥が深いんだねぇ、魔法って。」
「はい。全くです。ただし、だからといって、簡単には上書きはできません。あくまでも、“対魅了“を施した人よりも、自身が上のレベルにないと上書きできないからです。そうですねぇ、確実に上書きできるとすれば、最低でもレベル60以上は必要でしょう。」
「60?ってことは、センパイは60以上あるってこと?そんなふうには見えないんだけどなぁ。」
「そのセンパイという方は、なんと?」
「フィオレッティさんです。学園唯一の完全合格者の方です。」
「そうでしたか、フィオレッティですか。良い人と組まれていますな。というか、組まされましたな。」
「えっ?それって、わざとってこと?」
「おそらくは。ハル様が今回の“前巡礼“に参加させるに値する技量の持ち主かどうかを判断させるため、かと。」
「でも、センパイとは、僕が門兵になった時からずうっと一緒だけど?」
「その時から、かと。」
「うわ、こわ。“術連“。」
「そういうところでございます、“術連“というところは。」
「昔から変わらないようですね。」
「いずれ、僕もそういう道に入るのかなぁ?」
「それは分かりかねますが、ご覚悟は必要かと。」
「はぁ、僕はのんびりと門兵でいたいのになぁ。」
「ねぇねぇ、さっきから何の話しているの?さっぱりわからないんだけど?私を置いてけぼりにしないでよ〜。」
「あははは、ごめんごめん。別に姉さんを置いてくつもりはなかったんだけど。そろそろ、中に戻ろうか。ありがとう、イズ姉、ゼノ爺。」
「どういたしまして。お役に立てたようで、何よりです。」
「さぁ、戻りましょう。フィレス様も。」
「うん、わかったわ。」
4人は、揃って、屋敷に戻り、ハルは一旦湯浴みで汗を流し、着替えてから、居間へ向かった。
フィレスも、同じく、湯浴みで旅の汗を流し、着替えて居間へ。




