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門兵ですが、そこそこできます  作者: 勢崎カスリ


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17/30

束の間の休息(1)

 久しぶりの家だ。門兵になってからは、まとまった休暇はなかなか取れないため、しばらく帰ってなかった。今回もそうゆっくりはしていられないが、“前巡礼“に参加することは直接伝えておきたかった。

 「おかえり、ハル君。なかなか帰ってきてくれないから、おかあさん、寂しかったのよ。」

 「ごめん、かあさん。思ったほど休み取れなくて。」

 「まぁ、“門兵になる“って聞いた時から覚悟はしてましたけどね。疲れたでしょ?中に入って休んで。」

 「おかえりなさいませ、お坊っちゃん。」

 「おかえりなさいませ、お坊っちゃま。」

 「うん、ありがとう。でも、そろそろ、その“お坊っちゃん“とか、やめてほしいなぁ。学園も卒業したことだし。」

 「そうですか?では、なんとお呼びすれば?」

 「ハル、でいいよ。」

 「では、今後は“ハル様“とお呼びいたします。」

 「うん、まぁ、その呼び名もちょっとこそばゆいけど。」

 「以前、お嬢、いえ、フィレス様からも同じようなこと言われまして。私といたしましては、少し寂しい気持ちです。」

 「あら、そう?でも、“子の育ち“よ。ゼノン、我慢なさい。」

 「そうですね、奥様。これは、天が私めに与えなさった、“過酷な試練“、ですな。」

 「相変わらず、大げさねぇ、ゼノンは。アキ、お茶の準備をお願いね。」

 「はい、かしこまりました。奥様。お坊っち、いえ、ハル様、お荷物をお預かりいたします。」

 「ありがとう、アキ姉。」

 屋敷内に入りながら、“でも僕は、相変わらず、ゼノ爺、アキ姉って呼ぶからね。何歳になってもさ。“と笑って宣言し、それを聞いたゼノンとアキは嬉しそうに頷いていた。

 いつもの居間。変わり映えはしないが、とても落ち着く場所。アキの淹れてくれたお茶を飲みながら、母が口を開く。

 「でもハル君、今回はどうしたの?急に。」

 「うん、実はね、僕、“前巡礼“に行くことになったんだ。そのことを伝えたくて。ちょうど、休暇がもらえたんで、帰ってきたんだ。」

 “前巡礼“という言葉を聞いて、その場にいた全員がわずかに反応した。

 「そう、“前巡礼“に。」

 あぁ、やっぱり選ばれたんだ。彼らの口ぶりから、なんとなく予感はしていたが、いざ、現実となると、いささか心がざわつく。

 「大変だろうけど、ハル君なら、大丈夫。うん、大丈夫。がんばってね。」

 「ありがとう。でも、びっくりだよ。僕が選ばれるなんて。それより、かあさんたち、以前からロッドウェル先生やヒューズラント先生のこと知ってたんでしょ?」

 「あら、聞いちゃった?」

 「詳しくは聞いてないけど、知り合いだって程度で。」

 「まぁ、この際だから、ちょうどいいわ、話すわね。ハル君が学園にいる頃は、変な気を使わせたくなかったから黙っていたんだけど。おかあさん、ロッドウェル、ヒューズラントとは同級なの。王立学園の。」

 「えぇ?そうだったの?ていうか、ロッドウェル先生とヒューズラント先生も同級?あぁ、だから、ロッドウェル“ちゃん“って。」

 「そうそう、学園にいた時から、ヒューズラントはそう呼んでたわね。ロッドウェルは相当嫌がってたけど。」

 「でも、ゼノ爺たちのことも知っているって。」

 「そうねぇ、ゼノンは、私たちの先輩にあたるのよ、少し離れているけど。アキ、ヒロ、イズも学園の後輩だし。そうそう、確かヒロもイズも指導受けているのよね?」

 「はい、私もイズもお二人から“愛のある“指導を受けております。」

 (なんか、“トゲ“のある言い方、何かあったな、あの二人と。)

 「アキ姉は?」

 「私は、その・・・。」

 「いいでしょ、この際だから、全て話しちゃいましょう。そのほうがハル君も今後の立ち回りが楽でしょう。」

 「そうですね、私たちも気が楽になりますから。実は、私やヒロ、イズは、術連の元“特別メンバー“なんです。」

 「えぇ〜⁉︎」

 今日一番の驚きだった。さらに追い打ちがかかった。

 「で、私めは、元“術連上層部員“で、この3名を“特別メンバー“に推薦したのも私めです。」

 「はぁ、どうりで、相手にならなかったわけだね。驚きを通り越して、これまでのことが、全て納得いったよ。で、まさかとは思うけど」

 と言って、ちらっと母の方を見ると、ニコッと笑ってコクっと頷いた。

 (術連コワイってセンパイが言ってたけど、それ以上に我が家、コワイ〜!)

 「じゃぁ、父さんは?」

 「パパも私とは学園の同級よ。でも、ほら、パパは剣士だから、師団の方だけど、私たちのことは当然知っているわよ。ちなみに、パパは副団長ね。」

 「そうなんだ、って、副団長だったの?でもみんな冒険者だったんじゃないの?」

 「そうね、本当は、パパも師団長になる道はあったんだけど、当時、色々あってね、冒険者になったのよ。あっ、でも、師団と喧嘩別れみたいのではなくて、ある意味、師団の方から頼まれてっていう方が正しいかな。パパも、状況を理解していたから、それを快諾してね。だから、今でも、師団の人とは仲良くしているし、いまだに色々依頼がくるし。で、私たちもそこで術連を抜けたの。」

 「そうなんだね。多分、この辺の話って、ごくごく一部なんだろうけど、こういうのを聞かされると、“あぁ、大人になったんだなぁ“って思う。なんか、嬉しいね。」

 「そう?そう言ってもらえるとおかあさんも少しは気が楽になるわ。」

 「まだまだ色々と“裏話“?があるんだろうけど、おいおい教えてもらえるんだよね?」

 「えぇ、そのうちにね?」

 「やっぱりあるんだね、“今は言えない何か“が?」

 「あら、駆け引きが上手になったのね?ハル君。誰に仕込まれたの?」

 「あっいや、別にそんなつもりじゃ・・・」

 「うふふふ、この程度であたふたしてちゃダメよ。でも、そこがハル君らしくていいんだけど。」

 「まいったなぁ、母さんには敵わないよ。」

 でも、ハルは嬉しかった。以前はどこか遠い存在だった、父や母、ゼノンやアキたちに少しだけ、近づけた気がしたから。ヒューズラントのいう通りだった。

 「そういえば、フィレスちゃんも帰ってくるのよね?」

 「はい、明日、お帰りになるとのことです。奥様。」

 「えぇ?姉さんも帰ってくるの?休暇取れたの?」

 「何か、フィレスちゃんのところでもメンバーの再編があったらしくて、2日だけど連続休暇がもらえたんですって。明日から。」

 「2日?それでも帰ってくるって?」

 「そうよ、ハル君が帰ってきてるってことで。」

 「そうか、せっかくの連続休暇なのに、なんか悪いなぁ。」

 「そんなことないと思うわよ、フィレスちゃん、ハル君に会えるなら、たとえ1日でも帰ってくるわよ。むしろ、休みのタイミングが同じになって、よかった、って喜んでるくらいなんだから。」

 「そうなんだ、それならいいけど。この話って、姉さんは知っているの?」

 「えっと、どの話?」

 「かあさん達の“裏話“。」

 「う〜ん、ハル君に話した内容も含めて、一切話していないわね。」

 「僕が、術連の“特別メンバー“ってことは、一応、話してもいい、と先生たちの許可はもらっているので、僕のことは話そうと思う。」

 (本当は、家族にも黙っていろ、とは言われていたのに、なぜか、我が家はいい、みたいに言われた理由がわかったよ。)

 「そう、それなら、この際、フィレスちゃんにも知っておいてもらおうかしらね、私たちのこと。」

 「そうですね、ちょうど良い機会です。その方がよろしいかと。」

 「そうね。いいかしら、アキ、ヒロ、イズ?」

 「はい、問題ございません。その方が、フィレス様も動きやすいのでは、と思います。」

 「そうね、じゃぁ、明日、ちゃんと話しましょう。」

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