009 甘えたいんですっ!
ふと、窓の外に目をやると辺りは暗くなっている。
冒険者のころの名残か、索眼スキルで見えないこともないが暗すぎないか?と思ったが、そういえこのウィーグル大陸は近年魔力不足で悩まされているらしい。
明りですらも魔力で灯っているこの世界。魔力不足はよくあることだ。
国の中心なのだから城くらい明るくてもいいのではないかと思うがリリィの事だ「みんなびょうどうですっ!」とか言って明りを落とさせたのだろう。
時刻にして8の刻くらいだろうか、俺たちは自室で遊んでいる。
「んで、これがウィーグル初級の火炎系の『イグニッション≪点火≫』だ。中級の『フレアー≪火炎ガス≫』は城が燃えちまうから使えないけどな。」
俺は右手の中指と親指をこすり合わせて火を起こす。
「ほわぁ...」
リリィは息を漏らしながら炎を見つめる。
火を消すとリリィは俺の背中に背負われるように寄りかかると
「さすがハルだねっ!もっと何か見せてよ!」
いくら初級魔法とはいえ褒められて悪い気はしない。
「よっし。んじゃ次は雷系魔法を」と言いかけたとき部屋の扉がノックされる。
即座にリリィは俺の背中から離れ自分の椅子に座った。
リリィの「どーぞー」の声が聞こえるや中に入ってきたのはエルザさんだった。
「リリシア様、ハル様。入浴の準備が整いましたよ」
「了解です。エルザさんももう休まれても構いませんよ」
リリィはいつもとは似つかない凛とした顔つきで淡々と告げた。
エルザさんは「お気遣いありがとうございます」と笑顔で軽く会釈すると部屋を出て行った。
途端にリリィは席を立ちあがり俺の方に飛びついてくる。
「うぉっと!どうした?」
俺の膝に顔を擦り付けてくるものだからどうしたのかと心配すると、リリィは顔を上げると笑顔で言った。
「もう朝までだれも来ないからハルに甘えほうだいだ~!」
えへへと笑いながら抱き着いてくるリリィの頭を撫でてやる。
リリィは気持ちよさそうに声を漏らすと急に我に返り、「わ、わたしそこまでこどもじゃないっ!」と顔を真っ赤にしながら、頬をぷくーっとふくらました。
でも抱き着くのはやめないんだねとツッコみたくなるが俺も悪い気はしないのでしばらくはそのままにしておこう。
「そんなことより、リリィ。先にお風呂入ってこいよ。」
一応この城の住人になった俺だがまだ日も浅いので、どうしてもよそよそしくなってしまう。
「今日はエルザさん寮に戻っちゃっただろうしなぁ...一緒に入ろうよ!」
この娘には年相応の恥じらいがないようだ。俺もリリィの事は一応女としてみるようには心掛けているがどうも妹や娘ように思ってしまう。
「俺はいいけど...リリィはいいのか?」
改めて問うとリリィは「むぅ?」と首をかしげると次は「はっ!」と何かを思い立ったようで。
「ま、まさか...ハルはわたしのからだがもくてきとか!!で、でも私はハルさんのお嫁さんだし...ハルさんなら...」
「お~い。戻ってこ~い」
目の前であれこれと妄想をふくらませぼしゅっと自滅してる王女様に俺は笑みをこぼしつつも、可愛いと思ってしまう。
「わたしはだいじょうぶですっ!ハルさん一緒に入りましょうっ!」
「なんか違うけど...入るか!」
リリィに手を引かれて部屋から出るが、最後の方に馬鹿皇帝がなんか言ってるように聞こえたのは気のせいだろう。




