010 おふろ
脱衣所は城の宿棟の裏側にある。裏側には湖がある。除き防止なのか?最も船を出せばいいが。
治安の良すぎるこの国では心配ないだろう。
着替えやタオルなどは一式風呂場にあるので何も持たずに行ける。
が俺の手は片方は埋まっている。リリィという先客がいるのでな。
風呂場に近くにはほとんど人はいないので、リリィもここぞとばかりに甘えてくるわけで俺の片腕に抱き着くように横を歩いている。
「おっふろっ!おっふろっ!」
嬉しそうに鼻歌を歌うリリィを横目に俺は歩幅を合わせてやる。
「ご機嫌だな」
「えへへ。ハルとお風呂入るの初めてだもん!」
俺と入るのがそんなにうれしいのか、この様子を見る限り先ほどの「わたしのからだがもくてきとか!」の発言は忘れたのだろう。
部屋から歩いて二分ほどたつと風呂場が見える。
この城に来て使うのは何度目になるか覚えていないが、リリィとここまで来たのは初めてだ。
軽めの石でできた扉を開けると風呂場特有の熱風が入ってくる。
「服脱いだら一応タオルは巻いて風呂入れよ」
本人がいいといっても、一応12歳だ。年相応の事はしてほしい。
リリィも「え~邪魔だよぉ...」と言っているが、ここはさすがに譲れない。
俺もリリィに背を向けさっさと服を脱ぎ腰にタオルを巻く。
「先に入ってるからな」
「ぶぅ~...」
何か言いたそうだが、俺は早々と浴場に入っていく。俺とて12歳に欲情はしないが一応な。
因みに今のは浴場と欲情を掛けt(自重
浴場に入ると左側には大きな湯舟があり、右側には洗い場が5か所ほど並んでいる。
洗い場の一番左側を陣取り置いてある椅子に座ったところで、扉の音が聞こえる。
リリィが来たようだ。
体には俺に言われた通りタオルがまかれている。おいちょっと待て。
「なんで腰からしか巻いてないんだ?」
「だって、ハルがそうしてるから...」
俺の言い方が悪かったです、すみません。
この娘は今までタオルを巻くなんてしなかったのだろう。そりゃ見たとおりにするな。
腰から下に巻かれたタオルはリリィには長すぎたようで、床にタオルが付いている。
「ほら、あっちを向きなさい。」
後ろを向かせ、腰で結ばれたタオルを一度取ってやり上まで上げ万歳をさせる。
脇に沿うようにタオルを巻いてやり、軽く結んでやる。
「よし。できた。いいか、女性はこうやってタオルを巻くんだ。」
「えー、動きにくいよぉ」
「つべこべ言いません」
俺より身分の高い人にこんな指導をすることになるとは...
「ほら座れ」
俺の左側の椅子を差し出すと、リリィは言われた通りにちょこんと腰掛ける。
「とりあえず洗ってから浸かろうなぁ...ほら、目ェ瞑れ」
「ん...」
目を瞑ったことを確認し、彼女の頭に蛇口から出したぬるま湯をかけてやる。
こういうのは自分でやっているときは一度じゃ全体に水は浸透しないので、三、四度程かけてやる。
「...ぷはっ」
息を止めていた様だ。
にしても綺麗な髪だ。肩近くまで延ばされた髪は一本一本まで指が通りまるで上質の絹のようだ。
あれ、俺って確かこの年の時には髪の毛、剛毛だった気が...(一回坊主にした)
「シャンプーつけるぞー」
シャンプーのボトルを押すと少し黄色味を帯びた輝くような白い液体が出てくる。
かすかに香るおそらく何かの花であろう香りに毎度の事ながら「高そうだなァ...」と思ってしまう。
髪が濡れているうちにさっさとシャンプーを付けてやる。
そういえば前にシャンプーは頭皮にリンスは髪にって聞いたことがあるな。
リンスシャンプーはどうなるんでしょう?
頭皮に塗り込むようにシャンプーをしてやるとリリィは
「おじょーずですねー...あぁ...」
「そうですか。それはうれしいです王女様」
一応便乗しておく。
鏡越しに見たリリィは目を細め、気持ちよさそうにしていた。
ほどほどにして、頭のシャンプーを流してやる。
流してやると通告しなかったせいかリリィは「わぷっ...」などと声を漏らした。
適当に水を流してやるとシャンプーはすべて落ちたようで、リリィは大きな目をパチッと見開いた。
「ありがとー」
「あいあい。ほら次は体な。背中は洗ってやるからほかは自分で洗えよ」
「はぁい」
リリィは言われた通りに自分のタオルを濡らしてボディソープをつけて腕から洗い出した。
俺も持ってきたタオルを濡らし、これまた高そうなボディソープを付けリリィの背中を洗い出す。
「ちっさい背中だなぁ」
手を動かしながら言うと
「ハルがおっきいんだよ」
国の最高権力者としてという意味で言ったんだが、まあいい。
「おっし。そっちは洗い終わったか?」
「おっけーでーす」
これも適当に洗い流し終わったところで、
「次はハルのばんだねっ!」
などとリリィが言うので
「俺は自分でやるよ。リリィは浸かってこい」
などというと、何か気にでも触れたのかリリィは頬をふくらまして
「いいからわたしがやるのっ!」
お返しなのか知らないがここは受け取っておこう。
本人がそこまでやりたいのなら止める必要はないだろう。
よくよく考えれば俺だって断る理由がない。
「わかった。じゃあお願いするよ。」
この後はリリィが「かゆいところはありませんかぁ~?」などと散髪屋ごっこを始めたりと長くなったので割愛。
俺たちは洗い場を後にし湯舟へ向かった。
「ほんと広ぇなぁ...」
「まぁ。私たちが入った後エルザさんたちも使うからね」
そうなのか。まあそれならいいか。
いつもみたいにみんな平等精神で狭くすると思ったが、労働者が使うなら仕方がない。癒しは必要だ。




