004 皇帝の優しさ
冒険時代は家なんて買う余裕すらなかった。
宿なんて三日に一回泊まれればいいほうだ。
基本的に寝泊りは、ダンジョンの休憩ポイントで行い、毎日のように攻略に明け暮れた。
当時の仲間は本当によくついてきてくれたと思う。
当時の俺が何故そんな自棄になって攻略していたのかは覚えていない。
だが、時に流れはあっという間で気が付くと俺は皇帝を跪かせていた。
最近まではほぼ毎晩のように酒場に通い詰めては皇帝と飲み明かしていた。
奴はかなり無口だが根は良い奴みたいだ。
この前だってありきたりだが風船が上に飛んで行った女の子を見かけたんだ。
俺は正直に彼女に「あ、こりゃ無理だ...」と言ったらその途端に大声で泣きだしたんだ。
ここで辺に期待させて「鳴り止まない風はないさ(イケヴォ)」とか言ったほうが良かったのか?
ンなわけあるか。俺がそんなあほみたいなこと悶々と考えているとシュリアス皇帝が「ふむ...」と一言置くと。
そのまま120メートルほど跳躍して見せた。
そのまま空中で風船をつかむと、華麗に着地を決めた。
あたりは拍手喝采。おいやめろ一般人の前で。
そんな俺のツッコミも空しく、皇帝は
「もう簡単に放すなよ。」
と真顔で少女の頭をポンポンとたたいた。
皇帝SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!
お前はなぜ当時あんなに恐れられたんだよ。
そして皇帝のイケメン救出劇を見終えると二人で帰路につき、宿で昼過ぎに目を覚ます。
そんな毎日を送っているときに、俺のもとに一通の手紙が届いたのだった。
その手紙は城からで、決して達筆とは言えない子供が書いた様な文面だった。
そんで、今に至る。
「そんな時だった、貴様の父親であるライアン・ウィーグルがすべてを投げ真正面から突っ込んできたのだ。私はそれを見るなり落胆した。あぁなんて愚かなのだと。そして俺は奴を殺した。」
皇帝が淡々と続ける。
リリィはそれを真剣そうに「ほぉ~」などと言いながら聞いている。
「おい、シュリアス何教えてんだお前。」
さすがに突っ込まずにはいられなかった。
実の子供に父親ぶっ殺した話するか?普通
「何とは...こいつの父親の話だ。」
「知っとるわ、12歳の少女に実の父親の殺害記録を話せるお前の神経について俺はどうかと思いますがねぇ!悪魔かお前!?」
「皇帝だ。」
もう黙れよ。
そこにおろおろとリリィが入ってくる。
「いえ、いいのですハル。私も興味がありますし、正直なところ私はライアン・ウィーグルの事を父親として見てはいませんでした...たしかに国王としては尊敬していました。ですが、国王は私にとっても国王でした。確かにお父さんが死んじゃったのは悲しいけどお父さんも私の事は最後まで気にも留めなかったと思う。」
そういって小さな作り笑いを浮かべるリリィは悲しそうだった。
この娘もこの娘なりに悩んでいるのだ。
そんなリリィの頭にシュリアスはポンッと手のひらを乗せた。
おい待て何してんだ。俺の嫁だぞ。元凶お前だぞ。
「貴様の父は愚かであったが勇敢であった。私も性格は皇帝だ。私は手始めに奴の軍隊を全滅させた、それでも貴様の父親は逃げ出さなかった。手足を千切られても最後まで戦った。」
千切ったの?お前。
そんなシュリアスの言葉にリリィは挑戦的な笑顔を浮かべると
「当然ですっ。私のおとうさんですから!!」
シュリアス...お前...いい奴だったのか...でもリリィは渡さん。




