018 旅行の日の朝
午前5時
いつもならハルの方が先に起きて八時ごろに「そろそろ起きろ」と布団をはがされ一悶着あるのだが、なぜかこんなに早く目が覚めてしまった。
「…たのしみなのかぁ…」
分かっている事だが思わず口に出してしまう。
思わず頬が緩んでしまい、くすくすと笑いが出てくる。
とそこで、いつもは聞きなれない音が聞こえる。
私の隣から聞こえる音の主の元に目をやるとそこには、無防備な寝顔を晒す勇者様、兼私の夫が夢心地のようだ。
いつもは私より起きるのが早いのでこんな顔を見れた事にすこし優越感が湧き上がってくる。
「おねぼーさんですねぇ…」
しかしまだ早朝。ハルを起こしてしまってはけない。
私は音を立てないように、そろりそろりとベッドから立ち上がると、きれいに並べられた部屋用のスリッパに足を通し、枕側のほうへと歩いていく。
突き当たるとそこには私よりも二回り以上も大きなカーテンがある。
そーっとカーテンをめくると外はまだ少し暗い。
ドアノブについた、鍵を回し取っ手に手をかけると大きな窓は簡単に開く。
夏が近づき始めたせいで、最近は暑いと思う日が増えてきた。
しかし今は違った。窓が開いたと同時に外からひんやりとした空気が入ってくる。
一瞬寒いと思ったが、すぐに涼しいに変わった。
暗いといっても見えないほどではない。
黒ではなく、青の暗さだ。
ベランダの手すりまで行き湖を見つめる。
青くゆらゆらと動く水面に少しだけ恐怖心が出てくる。
「もどろっかぁ…」
そういいかけたとき、後ろから足音がした。
ハルが起きたのかなと後ろを見るとそこには、寝起きで自慢の黒いロングヘアーが寝癖ですごいことになっているシュリアスがいた。
「リリシア…はやいな…」
「シュリアスもはやいね~おはよ~」
「うむ…何を見ていたのだ?」
シュリアスはまだ少し眠いのか、あくびをしながらこちらに歩いてきた。
まだ寝ていてもいいのに…と思ったが、誰かが起きていてくれたほうが私も怖くないので話を続ける。
「湖だよ。青くて怖いなぁって思って」
きっと魔界皇帝のシュリアスにとってこんなものが怖いと言うのはおかしいのだろうと思ったが返答は以外にも違った。
「そうだな…何も感じられないというか、この静寂さがすこし怖いな…」
「シュリアスも怖いっておもうことあるの?」
「そりゃあるだろう。私とて、二.三割は人のつもりだ。」
「だねぇ…」
遠く彼方の稜線が光り輝き始める。
はじめは燃えているようにも見えたそれが隣の山へ山へと侵食されるのを目でたどっていく。
「すごい…」
「リリシアはいつも起きるのが遅いからな」
「みんながはやいんだよー」
大体、なぜ特に用事もないときに7時とかに起きないといけないのか…
今度起こされたら王女様の権力でも使ってやろうか…
そんなことを考えていると、当たりが明るくなっていることに今更ながら気づく。
「ハル起そっか」
シュリアスに提案すると、
「悪戯なら任せろ」
そこまではしなくてもいいのに…とは思ったがいつもの仕返しだ!
私も顔に落書きくらいはしてやりたい。
この30分後ハルに散々怒られた(シュリアスが)
こうして旅行一日目が始まる。




