017 準備
「ねぇ、ハル」
「ん?何だァ?」
旅行に持っていく衣類などを詰め込んでいるとリリィに名前を呼ばれた。
どうしたか、とリリィを見ると彼女のほうを見てみると、彼女の視線は俺ではなく俺の手元に向けられていた。
「入れ物…ダサくない?」
「いやそうは言われてもなァ…」
珍しく毒舌なリリィに少し戸惑いを覚えながらも俺は荷物を突っ込む手を休めない。
俺が荷物を詰め込んでいるのは、旅行らしい鞄でもなければ、動きやすさを重視したリュックなどではない。
というか、そんなものは持っていない。
「だって汚いよ!?入れてる服とか汚れちゃうよ!?」
「んなことはねぇぞ。この袋外部からの炎、水に至るまであらゆるものを遮断して、防菌効果もありこの小ささの割りに伸縮性が素晴らしいので入る量もも多くて、それに何より使い慣れてるからなァ…」
俺は冒険時代から使っている荷物入れを今回も使おうかと思っていたのだが、リリィは気に入らないらしい。
コレ一応、レアな魔獣の皮で作ったんだけどなァ…
「わたしのを貸すからこっちにしなさいっ!!」
「それは断る」
とリリィが差し出してきた花柄の薄らピンク色の手提げを押し戻す。
「シュリアスの鞄のほうがかっこいいよ?」
と言われたので、俺たちから少し離れたところで荷物を準備しているシュリアスの手元に目を凝らしてみると、彼は真っ黒の二つ開きになった鞄を床に広げていた。
「おまえどこでんなもん買ったんだよ」
「いや、これは城から引っ越すときにこっちにもってきた物なのだが…」
そういやこいつそんなもの引きずってたなァと当時のことを思い浮かべる。
そんなことより、それかっこいいな!何か流行っぽい!
「やっぱりハルのはダサすぎるよぉ…」
リリィにさらに付け加えられどうしたものかと悩む…
…
まぁ結論を言うと俺は他に鞄なんざ持ってないし、リリィから他の鞄を借りた。
さっきの花柄の手提げは置いておき、薄い水色の大き目のショルダーバッグを借りた。
「まァこれなら…」
「うん!似合ってる!」
リリィのお墨つきならいいだろう。
と、そこで俺の視界にリリィの鞄が目に入った。
薄い水色のショルダーバッグ…ってお揃いじゃねぇか…
まァそこは一応婚約者なのだからと自分に言い聞かせる。
しかし、気になった店がもう1つあるのだ。
「なァリリィ。お前なんでそんなに荷物多いんだ?」
彼女の鞄は中に物が押し込められ、もう入りきらないと言わんばかりに膨れ上がっている。確か、怒った時のリリィの頰もこんな感じだ。
「むこうについてからのお楽しみ~」
「お、おう」
その後はリリィから借りた鞄に服などを移し、手前のポケット部分にエルザさんから貰った地図などを入れておいた。
準備が終わると、明日は早いからと早々に夕食を終えまた一緒に入りたいと言うから風呂に入り、リリィが寝たのを確認するとシュリアスと少しだけ酒を飲んでから眠りについた。
「寝坊すんなよ」
「了解した」




