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016 シュリアスだってもう私の家族

「ただい…!?」


シュリアスが倒れていた。

そこまでは日常。

問題は…リリィだ。なんか「ふふんっ!」と言わんばかりに俺を見つめてくる。

いや、まぁそこも日常だ。


「あのさ…なんでシュリアスに座ってんの?」


訂正しよう。シュリアスは倒れてはいない。

四つん這いで床をなめているのだ。

そして、その背中にリリィが腰掛けているというわけだ。

一瞬芸か何かと思ったがそうではないらしい。


「おかえり~シュリアスとボードゲームしてたんだけど、『なんか足りないね~』ってなったから互いに賭けをしたんだけど私が勝っちゃったから…」


申し訳なさそうにリリィは言ってるが、俺は彼女の顔が微妙にうれしそうなのを見逃してはいない。

あれか、たまには王女様らしく誰かの上に立ちたいのか…


「おい。シュリアスちょっといいか?」


尋ねると彼は床を舐める舌を引っ込めることなく


「あんだ~<何だ>」


うわみっともねぇ…お前ほんとに魔界最強かよ…

床の掃除は、というかこの城の掃除はエルザさんの手により隅々まで行き届いているから大丈夫だろう。

話を戻そう。


「因みにだけど…お前はリリィに何賭けさせたの?」


シュリアスが魔界皇帝としてここまで恥じるべきだろう(本人は恥じてない模様)事を賭けたのだ。

リリィだって多少重要なことを賭けたのだろう。

シュリアスは先ほど話しにくかったのか、床から舌を離して口を開いた。


「この国の主権を…」


よしぶっ飛ばす。

俺が拳に力を握ったと同時にシュリアスは話を続けた。


「最初は賭けたのだが…リリシアが『わたしのくにですっ(裏声)』とすごい剣幕で言うものでな…さすがに諦めた。」


そうだ。諦めろ。あと、その声やめろ。

俺は頷きながら拳の力を緩めた。

それで、何を賭けたんだろうか…


「それならばと、『そろそろハルと初夜を迎えろ。あいつも色々溜まってるだろう。』とリリシアの貞操を賭けさせたのだが…すまんな負けてしまった」


こいつ…


「因みにリリシアのやつは初夜の初の字も知らなかったから『そこはハルにリードしてもらえ』と誤魔化しておいたぞ。以前、『わたしのからだめあて』なーんて言っておったくせにいざとなればコレだ。」


いらん世話だ。

大体俺はまだ彼女に手を出す気はない。

正式に結婚したからにはいつかはあるのだろうが…まだだな。


「おい、リリシア。もう良いだろう?」


シュリアスがいつからそうしているの知らないが、そろそろ疲れたのか飽きたのか…

もう辞めたいらしい。


「あ、長々とありがとうございました〜結構な座り心地で…」


と、席(シュリアス)を立ち深々と頭をさげる。それに対しシュリアスも「いえいえ」と礼儀正しく頭を下げ返している。なんだこのコンビ。

シュリアスから離れたリリィはパタパタと俺のほうへ歩み寄ってくる。


「それでハルは今日の予定は済んだの?」


そういえば

何時に帰ってくるか伝えるのを忘れていた気がする。


「あぁ。結構すぐ帰ってきたけど、いろいろゴメンな」


特にシュリアス。床舐めさせてゴメンな。でも、んなもん賭けたお前も悪い。


「シュリアス。エルザさんからオッケーもらえたからお前も準備しとけよ」


「ほほう」


シュリアスには前もって伝えたおかげか、一瞬で理解してくれた。

一方のリリィはきょとんと俺とシュリアスのほうを交互に見ていた。


「え、なに?なにかするの?」


まぁ、準備もあるからな…もう教えてあげてもいいだろう。

さて何から話そうかと、一度脳を整理させてから主要から伝えても言いと判断する。


「明日からカッツォリ地方に旅行に行けるぞ~」


「カッツォリ地方ってたしか…エルザさんのところだ!!え、なんで!」


「いやぁ…最近暇だったろ?リリィもたまにはどっか遊びに行きたいだろ?」


本音は新婚旅行だが、妙に恥ずかしいので隠しておく。

それを聞いたリリィはさらに目を輝かせると


「わぁい!しんこんりょこー♪」


っと歌いだした。

俺が隠さなくても、リリィは最初からそう受け取ったみたいだ。


と、そこで歌っていたリリィが何かに気づいたようにハッと動きを止める。


「シュリアスも連れて行きたいけど…新婚旅行だけどいいかな?」


と、おそるおそる聞いてきた。

床に座りこけていたシュリアスが「私は留守番でいいぞ」というがリリィは


「でも、シュリアスも家族だし…」


と、自分の実の父親の命を奪った元皇帝をもう家族と認めていた。

リリィだってシュリアスのことを気に入ってるし、俺だって酒を飲む仲間くらい一人くらい連れて行きたい。


「分かったよ。シュリアス、お前も来い。拒否権はねぇからな」


と乱暴かなと思ったが、こいつは要らんところで空気を読むからこのくらいしないとついて来ないだろう。

シュリアスは一瞬怪訝そうな顔をしたが、「了解した」としぶしぶ受け入れたようだ。


だが、家族と呼んでもらえたのはうれしかったようで


「リリシア…ありがとな」


恥ずかしそうにそう言い残しシュリアスは部屋から飛び出した。お前かわいいとこあるんだな。

リリィは「何が?」と言いたげに首をかしげていたが、深入りはせずに


「それじゃ準備しよっか!」


と、俺の手を引いた。

何持って行けばいいのか…

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