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015 え、そんなに簡単なんですか?

どこにエルザさんはいるのだろうか…三秒ほど迷ったが、時間的にまだ朝食の片付けをしているだろうと歩を厨房のほうへ向ける。

向かいながら、お邪魔になるかなぁとか考えたりしたがすぐに厨房には着いた。


金属製の扉をノックしてみるも返事はなく、ソーっとあけてみるとそこは厨房特有の水やお皿を重ねる音が響いていた。そりゃノックくらいは聞こえないか。


厨房は結構広く、俺とリリィの部屋くらいの広さがある。

だがここで働いているのは、驚くことにエルザさん一人だという。

まぁリリィ一人のお世話なら一人位でも足りるかと思ったがそうでないらしい。


リリィの話によるとエルザさんは昔冒険者だったらしいのだ。


ウィーグル大陸の南方カッツォリ地方の出身でウィーグル大陸では結構名が通る魔法使いらしいのだ。

今は人間特有の40歳以降の魔力低下が原因で冒険行からは足を洗ってしまったらしい。

だが、常人よりは魔力が多かったらしいので今もそこまで魔力は少なくはなく、仕事をほぼ魔法でこなしているらしいのだ。


現に厨房の水場では食器が中に浮いている。

浮いている元へ目をやるとエルザさんがいた。


近寄ると、エルザさんはこちらの気配に気づいたようでこちらに振り返った。


「先ほど振りですね。あら、ハル様…お一人ですか?」


「はい。朝食ごちそうさまでした。エルザさんちょっとお話いいですか」


断る人ではないと分かっていながらもついつい確認してしまう。


エルザさんは一瞬もの珍しそうに目を見開いたが、すぐにいつものように温厚そうな顔で「えぇ。しばらくそこの椅子にかけてお待ちください」と近くにある椅子を魔法で引き寄せた。便利そうだな。俺も今度やってみよう。


エルザさんはその後、風の魔法で食器の水気を吹き飛ばし棚へと戻した。

そりゃ、一人で十分だなぁ…


「お待たせしました。それで…ご用件とは?」


そういいながら、エルザさんは魔法で椅子をもうひとつ手繰り寄せ「お隣、失礼します」と隣に腰掛ける。

そして俺の顔を見て「?」と首をかしげる。


「…リリィって外出していいんですか?」


「いいですよ。」


「そうですか…」


ってあれ。


「ちょっと待ってください。いいんですか?そんな簡単に。」


普通、王女様とか王族の人って外出する時にすっげぇ話し合われたりするんじゃないの?

しかも、この国のトップだよ?身の安全とかで揉めたりしないの?

するとエルザさんは何かを察したのか


「この国は治安が良すぎますからねぇ…それに皇帝がいなくなった今ともなればさらに安全です。」


まぁ言われてみればそうだ。

この国はリリィが国王なだけあって国民が皆ゆるいというか、和やかなので犯罪なんて早々起こらない。


実際にウィーグル大国でのここ10年間の犯罪履歴は魔王軍襲撃を除くと痴漢セクハラくらいしかないという。なんだこの国。


「それにハル様がリリシア様についてくださるなら、リリシア様の身の安全は絶対でしょう。」


なんかっすげぇ期待されてるが、言われてまぁそうだなと納得してしまう。

実際俺は今のところ「こいつには負けるな」と思うようなやつはいない。

常人ならば何万人束になろうが勝つ自信はある。

まぁリリィに手ぇ出そうとしない限りこちらも手荒なことはする気はないが。


「なるほど…エルザさん、リリィと…旅行に行きたいんですけど」


新婚旅行と言おうか迷ったのだが、妙に恥ずかしかったので旅行で誤魔化すことにした。

しかし俺の葛藤も空しく、エルザさんは察したかのようにくすりと笑うと、急に失礼だと思ったのかすぐに顔を赤らめて


「す、すみません…私はよいと思いますよ。リリシア様もお喜びになられるかと…それより旅先はどちらにいかれるご予定なんでしょうか?」


問題はそこなのだ。


俺は今まで、冒険をしてきただけのことはあり、この世界は大体行った事はある。まぁ、もっとも全てがダンジョンだが。

なので、観光地などろくに知りもしないわけで、それも兼ねてエルザさんに相談しに来たのだ。


「なんかいいところありませんかねェ…」


「まだ決めてないのですね…そうですねぇ…」


エルザさんは目を瞑りムムム…と唸る。

そして30秒ほど悩んだ末、エルザさんは何か思いついたようで顔を上げた。


「…カッツォリ地方なんてどうでしょうか?」


「カッツォリ地方ってエルザさんの出身地ですよね?」


カッツォリ地方の方は街が多く、ダンジョンは少ないのであまり行っていない。

近くを通ったりはしたことがあるが街の方は俺も行ったことがない。


「ええ。あそこは比較的に大きな街もありますし、少し離れますと山近くに温泉なども湧いてたりと観光には最適ですよ。料理も肉から魚、野菜まで最高のものが充実してます。」


「なるほど…温泉か…新婚旅行っぽいな…」


エルザさんに聞こえないくらいの声でボソッとつぶやくと、


「それに、リリシア様にも以前私の故郷の話をしたときに『私も行って見たいですっ!』と仰られましたよ。」


俺も興味が出てきた。

…よし、決めた。新婚旅行先はカッツォリ地方にしよう。


「ありがとうございます。では、明日から行ってきてもいいですか?」


「明日からですか!?」


まぁそうなるわな。

手続きとかあるのだろうか…


「はい…暇すぎてリリィもすぐに行きたいと思いますので。それにサプライズですので早く反応がみたいですし」


ただの我がままになってしまうが、無理なら先延ばししようと考えていると、


「わかりました。手続きはすべて私にお任せください!私の故郷ですから!」


「ありがとうございます!」


エルザさんには結構迷惑がかかってしまうだろうが、たまには王様らしくさせてもらおう。暴君にならない程度にな。…お土産たくさん買ってこよう。


「身支度のほうはどうなされますか?」


「そこは私物などもあるので自分でやりますよ」


その後もエルザさんに景色のよいところ、お店の多いところなどをエルザさんが持ってきた地図を片手に説明してもらったりとしてもらっていたら、11刻をまわった。


「あ、すみません!私はこれから昼食の準備がありますので!」


仕事ならばと俺は厨房を後にする。


思ったより早く相談が済んでしまったな…

今日一日シュリアスと遊んでくれと言ってしまったのでなかなか部屋に戻りにくいな…


悩んでも仕方ないので部屋に戻ることにした。


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