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ギルドマスター

「こちらです」


ミラさんに連れて行かれたのはギルドの入り口から右に行ったところにある二階への階段を上った先の一番奥にある部屋。

その部屋は他の部屋と比べて少しだけ豪華な装飾のついた部屋だ。

この部屋はギルドマスターの部屋で、クエストを受けようとしたら呼び出しをくらってしまったわけだ。


「マスター、マサムネさんをお呼びしました」


ノックをして、扉の向こうにいるであろうマスターに呼びかける。

しかし、何の返事も帰って来ない。

ミラさんは慣れているのか扉を「入りますよ」と言いながら開けて中に入っていく。

それに続いて俺も中に入ると大きな椅子に腰かけて、足を机の上に乗せて寝ている禿頭の中年の男がいた。


「またですか・・・。マスター起きてください」


ミラさんは諦めたようにマスターを起こそうと体を揺すっている。

全然起きないな、そう思ったとき、いきなりマスターの目がくわっと音がしそうな勢いで開いた。


「やあ、おはようミラ。それで?何しに来たんだい?」


「マスターが呼んでいたマサムネさんを連れてきたんですよ」


「おお、そうだったそうだった。君がマサムネか、よろしくね」


立ち上がって握手を交わそうと俺のもとまで歩いてきた。

こういうときって身分が下の俺が近寄っていくべきなのだろうけど歩き出そうとしたら目の前にいて右手を差し出してきていた。


「よ、よろしくお願いします」


握手を交わすとマスターはニカッと笑顔になって席に戻って行った。


「さ、椅子に掛けなさい。ミラ、マサムネと話があるから君は席を外しなさい」


俺を目の前のシングルソファに座るように言うとミラさんを退出させた。

ミラさんと俺は素直に従ってそれぞれ行動した。


ミラさんが出ていき、扉から離れていく気配を探っているのか少しの間、俺たちの間を静寂が支配した。


「さて、君を呼んだ理由は二つある。一つは君の種族について、もう一つは君がこの間起こした騒ぎについてだ」


まあ、そうだろうな。て言うかこの人はカナリアのことは聞いてこないのな。


「その前に自己紹介をしよう。私の名前はアンドリュー・ネルガルドだ。よろしく。ちなみに種族はエルフだ。こんな頭をしているけどね」


確かに改めて見てみると耳が長く、顔立ちは整っている。禿げてるけど。


「よろしくお願いします」


「最初に君の種族について教えてほしい。君の種族は銀狼でいいのかな?」


「はい」


「君は銀狼と言う種族のことは知っているのかな?」


一応記憶喪失ってことになってるからとぼけといたほうがいいかもしれないな。


「いえ、僕には記憶が無いので残念ながら覚えていないのです。ついでに言えば国や国境、森や山脈などの名前も全てわからないのです」


あとでミラさんにでも聞いたらわかるだろうけど受付嬢だから他の冒険者の対応もあるだろうからこの際、アンドリューさんに教えてもらうことにした。


「そうだったな、種族はギルドカードで確認できるからわかるだろうけど知識に関しては調べなければどうにもならないからな」


アンドリューさんから管理者から聞いたことと殆ど同じことを教えてもらった。

殆どって言うのは他の最強の種族についてだ。

それぞれ獣人には、ステータスの一つが他のステータスよりも優れている種族が多い。その中でも群を抜いて優れている種族のことを最強種と呼んでいるそうだ。

力が最も優れている種は虎の獣人である『黒虎(こっこ)

防御が最も優れているのは熊の獣人である『白熊(はくゆう)

敏捷が最も優れているのが狼の獣人である『銀狼(ぎんろう)

魔力が最も優れているのが狐の獣人である『金狐(きんこ)


の種類がいるようだ。

道理で俺の敏捷が一番大きいわけだ。でも、他のものも少しだけ普通よりも優れていた、と聞いてみたら獣人はもともと人間より魔力以外では優れているからだと答えてくれた。魔力も多かったような気がするけど言ったらめんどうなことになりそうだから黙って置こう。


「種族のことがわかったところで君の重要性についてだ。さっきも言ったように最強種の中では銀狼だけが滅んでいる。だから銀狼に代わり、ほかの種族が敏捷の最強種の座に立っている。もしその種族が銀狼である君を見つけたらその座を奪われるかもしれないと思い、君を拉致して他の銀狼の場所を聞き出そうとするだろう。拷問とかのあらゆる手段を使ってね」


俺は何も答えられなかった。そんな重要なことをなぜ管理者は教えてくれなかったのだろうという考えと、冗談みたいな話を聞いて、どう判断したらいいのかと言う考えが頭の中をぐるぐる回って何も反応できなかった。


「でもまあ、その可能性は薄いかもしれないけどね。何せ300年前の話だ、銀狼と言う種族の存在を知っているのは本の山を大事に抱えて引きこもっている学者たちだけだろうけどもしものことがあるから君は強くなければならない。かつて最も敏捷で優れていたとされる銀狼なのだから負けないとは思うしそれにあの実力のおかげで拉致されたりするその可能性は低いだろうけど」


「それはどうでしょうね」


なんせステータスとか全部振りなおしたからな、今の俺じゃあ多分すぐ拉致されるだろう。


「そうか?まあ、気をつけなさい」


「はい。それで、今の敏捷の最強種と言うのはどんな種族で?」


「今は豹の獣人で、『赤豹(せきひょう)』と言う」


「なら、赤い猫のような獣人には気を付けますね」


「ああ、その通りだがなんで猫みたいな獣人だって思ったんだ?」


「俺は鑑定のスキルを持っているので調べてみたら豹って獣人がいるってわかったんです」


「鑑定か、それなら納得だな。でもあんまりむやみに鑑定を使わないほうがいいぞ。

ところで話は変わるが君のランクだが、本来だったらBランクの冒険者を軽くあしらえると言うか一撃で殺してしまうほどの実力があればAランクは無理でもBランクまであげようと思っていた。冒険者は今、Aランク以上の者が10人もいない状態だから実力のある者はすぐにでも高ランクにしたいのだが君の種族では目立ってしまってしょうがないだろう。だから今のままだ。不満だろうが我慢してくれ」


「いえ、それが妥当でしょう」


「ああ、二つと言ったのにランクの話も含めて三つになってしまったが最後に二日前の騒ぎについてだが、それは此方の方で沈めておいた。衛兵にはあいつがAランク以上の冒険者を侮辱したせいでああなったと言っておいたから問題はないだろう」


「なんでAランク以上っていったんですか?」


「冒険者って言うのはAランク以上になると殺しをしても問題にならないからな。ランクを曖昧にしたのは個人の情報をおいそれと教えないためだ。まあ、それを聞いても納得はしていなかったようだけどな」


「Aランク以上は殺しをしても問題にならない?それだったらもし、人を殺すことが楽しいと感じている奴がAランクになったら街中死体だらけになるのでは?」


「それは心配ない。Aランクの昇格試験には人の性格とかを検査する項目が追加されるからそれに引っかかればランクは上がらない」


「なるほど、そういう仕組みなわけか」


「これで俺から話すことは無くなったな、質問はあるか?」


国の名前とか聞いてみるか。


「国の名前とかを教えていただきたいのですが」


「ちょっと待ってろ」


アンドリューさんは席を立つと部屋を出て行った。

少ししてから少し大きな紙を持ってきてそれを机の上に広げた。


「これがこの大陸の地図だ。今俺たちがいるのは左側の聖大陸、右が魔大陸だ。聖大陸では三つの国に分かれている。俺たちがいるのは左下のこの国、ユーエリス国、右下の国がアーフェリス国、二つの国の真ん中の上にあるのがホルダウ帝国だ。それぞれの国には三大迷宮がある。まあ、このほかにも突然平原とかに出現する迷宮とかもあるんだけどな。このユーエリスとアーフェリスの国境付近にある樹海はココロネの樹海と言って、中級程度の魔物が住み着いている。多くは獣型と虫型だがな。

ユーエリスとホルダウの間にある平原はポルネ平原と言って初級の魔物がでてくる。ここは獣型と空には鳥型が住み着いている。

アーフェリスとホルダウの間にあるのはゲンボルグ山脈といって、ここは上級の魔物が住み着いている。ここは下位の竜種と獣型、鳥型、異形型が住み着いている。

そして、この大陸の真ん中にある森が世界樹の森だ。ここには下位の中でもさらに弱い魔物が住み着いているから殆ど命の危険はない。あるとしたらピクシーに惑わされてそのまま遭難って感じだな。今言った場所は有名な場所で、そのほかにも魔物が一切出ない森とか川がある。そこはおいおい把握していけ」


「この大陸の間にある海は?」


俺は聖と魔の間にある海を指さして聞いた。

なぜか気になってしまったからだ。


「そこか、そこはクーセンド海だ。そこにいるのは全てが上級か特級で、種類は海洋型と竜型だ。海流が荒くて船なんかはすぐに沈没しちまう」


「そうなんだ・・・」


ここに行ったら命を捨てるのと同じってことだな。


「ありがとうございました。もういいですよ」


「そうか、それじゃあ頑張れよ」


「はい」


そう言って俺はギルドマスターの部屋を出た。

次回、武器が完成する日にちまで飛ぶかもしれません。

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