第3巻 第32章 — 現人神の伝説
最初の授業
第3巻 第32章 — 現人神の伝説
時間移動の後、ケイタシは意識を失った。
彼は目をわずかに開けた。すべてがぼやけていた。まるで自分の目が石鹸でできているかのように。誰かに運ばれているのを感じたが、顔はぼやけ、腕の傷が痛みで脈打っていた。
ケイタシは深い眠りに落ちた。
彼は夢を見た。野原だった。太陽が眩しく輝き、空は青かった。そして遠くにヨシヒロが立っていた。彼は微笑んでいた。
ヨシヒロ——やあ、ケイタシ。どうやらお前には問題が多いようだな。残念だ、俺はお前を助けられない。
ケイタシ——ヨシヒロ!お前に何があったんだ?
心配してケイタシは聞いた。
ヨシヒロ——俺はただ運がなかっただけだ。この音で俺の物語は終わる。だがお前の物語は終わらない。お前はこれからも生き続けるんだ、兄さん。
ケイタシの頬に涙が流れた。彼は子供の頃から孤児だった。家族もなく、悩みを打ち明けられる相手もなく、苦しい時に支えてくれる者もいなかった。そして家族を得るチャンスが現れた。だが運命は再び彼らを引き裂いた。
ケイタシ——待って、ヨシヒロ、行かないでくれ、頼む。
涙ながらにケイタシは言った。
ヨシヒロ——俺は行かないさ。俺はいつもみんなのそばにいる。
ケイタシはヨシヒロの方へ手を伸ばした。手は握られたが、ヨシヒロには届かなかった。
突然、ケイタシは勢いよく目を開けた。
鼻に煙と焼けた肉の匂いが飛び込んできた。彼は固い地面に横たわり、粗い布で覆われていた。刀に貫かれた左腕は、清潔だがすでに血が染み込んだ布で固く包帯されていた。そばでは焚き火が燃えていた。そして火の向こう側に、あの二本の刀を持つ男が足を組んで座っていた。彼は静かに炎を見つめていた。
ケイタシは頭を抱えた。
ケイタシ——ただの夢だったのか。
ムサシ——気分はどうだ?
ケイタシは驚いて振り返った。
ケイタシ——あんた、本当に実在するんだな。
静かにケイタシは言った。
ムサシ——だから、気分はどうだと聞いている。
ムサシは聞き返した。
ケイタシ——少しマシになった。
ケイタシは答えた。
ムサシ——何かあったのか?お前の魂に悲しみが見える。
穏やかな声でムサシは聞いた。
ケイタシ——大丈夫だ。
ケイタシは袖で顔を拭いながら言った。
ムサシ——お前を苛むものは手放した方がいい。さもなければそれは永遠にお前を離さない。
焚き火を見つめながらムサシは言った。
ケイタシ——喜んで手放したいが、感情が勝ってしまう。
悲しそうにケイタシは言った。
ムサシ——「だが」はない。お前が感情をコントロールするんだ。感情にお前が支配されるのではない。これを肝に銘じろ。
乱暴にムサシは言った。
ケイタシは黙った。
ムサシ——まあいい。傷をもう一度包帯し直して寝ろ。明日から訓練だ。
ケイタシ——訓練?だが俺は訓練してくれなんて頼んでない。
ムサシ——お前は降りかかっている問題から逃れたいんだろう?
ケイタシ——ああ。だが訓練がどう役立つんだ?
怪しみながらケイタシは聞いた。
ムサシ——問題はお前を底へ引きずり込む重りのようなものだ。だがお前はもっと強くなければならない。そんな重りを背負っていても浮き上がれるほどにな。
ケイタシは自分の手を見て、再び黙った。
ムサシ——寝ろ。明日は生産的な一日になる。
ケイタシは傷を包帯し直し、寝た。
ケイタシにとって夜は苦痛だった。突然熱くなったり、傷がさらに疼いたりした。
だがムサシは一晩中目を閉じなかった。彼はケイタシが安らかに眠れるよう見守っていた。
パキッ。
森の中に誰かいる。
ムサシは視力を極限まで研ぎ澄まし、怪物の影に気づいた。それは排斥者だった。だがムサシはそれを普通の悪い妖怪だと思っていた。
排斥者はケイタシが横たわる場所に近づいた。ケイタシを引き裂き、その肉を味わおうとしたその時、予期せぬことが起きた。大きな破裂音が響き、排斥者は細かい破片に飛び散った。だがムサシは座ったまま、ミリ単位も動いていなかった。
ケイタシは爆音で飛び起きた。
ケイタシ——何があった!?
ムサシ——寝ろ。大丈夫だ。
ケイタシは数秒ムサシを見て、また寝た。
夜明けが来た。最初の太陽の光がケイタシの顔に触れた途端、ムサシは大きな手拍子で彼を起こした。
ケイタシ——もう少し寝てもいい?
ケイタシはつぶやいた。
その直後、ケイタシに棒が飛んできた。
ケイタシは叫びながら飛び起きた。
ケイタシ——痛っ!!!何するんだ?
ムサシ——訓練は待ってくれない。
怒りを込めてムサシは言った。
ケイタシ——行くよ行く!なんでそんなに殴るんだ?
ムサシ——余計なことをもう一言でも言ったら、二日と三晩腕立て伏せだ。わかったな?
ケイタシ——はい。
静かにケイタシは言った。
ムサシ——では基本から始める。何ができる?
ケイタシ——とても奇妙に聞こえるかもしれないが、俺は時間を操れる。
ムサシは怪しんだ。
ムサシ——時間を操るとはどういうことだ?
(ケイタシの思考)——『しまった、この時代に時間操作なんて概念はなかった。』
ケイタシ——見せた方が早い。
ケイタシは印を結び、ムサシの背後に現れた。
ムサシは瞬時に振り返り、ケイタシをじっと見た。彼は困惑していなかった。分析していた。
ムサシ——なるほどな。
(ケイタシの思考)——『まさか、こんなにすぐに理解したのか?』
ムサシ——ならば、俺と最大速度で戦ってみろ。
ケイタシは戦闘態勢をとった。ムサシは動かずに立っていた。ケイタシは踏み込んだが、ムサシは難なくかわした。
10分間、ケイタシはムサシに触れることすら試みたが、すべて無駄だった。ケイタシは息を切らした。
ケイタシ——くそ。あんた、普通の人間にしてはかなり速いな。
実は、ケイタシはいつも戦場の後始末ばかりで、まともに戦ったことがなかった。そのため、自分の速度のピークに達していなかった。現時点でのケイタシのエネルギー強化時の最大速度は時速800キロだ。
ムサシ——驚いた。俺の速度に少しでも近づいたのはお前が初めてだ。だがお前の潜在能力なら、今よりずっと速く動ける。
ケイタシは驚いた。自分には才能も潜在能力もないと思っていた。だがムサシは彼を敬意を持って見ていた。
ムサシ——お前の時間は能力ではない。リズムだ。それを感じられるようになれば、音よりも速く動ける。
ケイタシは大きな興味を抱いた。
ムサシ——では、俺の最大速度を見せてやる。
ムサシは足を広げ、刀を前に突き出した。
ムサシ——第五の輪の技。
ケイタシは瞬きをした。たった一度だけ。目を開けた時、ムサシはすでに二十メートル先に立っていた。だが最も恐ろしかったのはそれではなかった。彼の周囲の空気が歪んだ。空間そのものが引き裂かれたかのような、耳を劈く破裂音が響いた。そして遅れて、コンマ数秒後に、ケイタシの耳に音が届いた——雷鳴のように大きく、鋭い音が。
ムサシ——これは能力じゃない。ただの速度だ。
ケイタシは目を大きく見開いて彼を見た。彼は光よりも速く動くミツェルを見た。雷だったオロチを見た。だが今見たもの……それは純粋で原始的な熟練だった。ムサシは存在エネルギーを使っていなかった。彼はただ自分の体を、物理法則を打ち破る速度まで加速させたのだ。
(ケイタシの思考)——『そんなはずはない。俺が間違っていなければ、彼の速度は約30マッハに達した。』
突然、ムサシは再び消えた。
ケイタシはムサシがただ消えたと思った。だがその後、彼はそれを見た。
ムサシは走っていなかった。彼は空気を蹴っていた。彼の一歩一歩は見えない足場への打撃だった。彼は右手を前に突き出し、指で印を結ぶと、前方の空気が裂け、真空の通路ができた。まるで空間そのものを貫いているかのようだった。
彼の背後で空気が音速の壁を突破した時の衝撃音で爆発した。だが彼は止まらなかった。加速し続けた。10マッハ、20、30……
ケイタシは彼を見て理解した。もしムサシが今殴れば、自分は地面に叩きつけられて跡形もなくなるだろう。彼が強いからではない。彼の体が大量破壊兵器になったからだ。
一日が終わった。ケイタシは地面に横たわり、星空を見上げた。彼は疲れ果てていた。すべての筋肉が痛んだ。だが頭の中ではムサシの言葉が響いていた:『お前の時間は能力ではない。リズムだ』。
(ケイタシの思考)——『彼はエネルギーを使わなかった。ただ速かっただけだ。もしこれを学べたら……みんなを守れる。そしてヨシヒロ……俺が生き残ったのは無駄じゃなかったと、彼は見てくれるだろう。』
彼は目を閉じた。明日は新しい一日だ。そして新しい訓練が待っている。
すべてがそんなに悪いのか




