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【完結保証】カードゲーマーは運命に抗う  作者: まとかな


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2-1 禁止制限の重要性/ホビアニのヒロインは癖の塊

【カードゲーム[スターバトラー]のルール!】

・モンスターは下級・中級・上級の3種類あるよ!

 下級は無条件で毎ターン1体出せるよ!

 中級上級は出すのに一手間かかるよ!

・下級は出たターン攻撃できないよ!

・戦闘で同級は相打ちになるよ!

 格下には一方的に殴り勝てるよ!

・初期ライフは5つだよ!

 モンスターに殴られてライフが0になると死ぬよ!

 カードゲームアニメ[スターバトラー(無印)]


 舞台は現代科学が発展した荒翠(あらみどり)市。

 中心地は高層ビルが立ち並び、郊外住宅地は平屋が並ぶ……(20年前基準で)極めて普通な近未来都市。


 しかしここは三大欲求の四つ目にカードが入る狂気の世界。多分1〜3もカード。

 今日も朝から出勤通学中にそこかしこでカードバトルが繰り広げられている。遅刻するぞ。


「うん。今日もいい天気だ!」


 店先に立つは五稜ソウマ。

 異世界転移して2年が経つ、この道のベテランである。

 この世界におけるこ(・)の(・)業(・)種(・)は現実と違って、平日でも朝から開いている事が多い。なんなら24時間営業の店もある。五稜ソウマの店は朝8時から夜10時までの14時間営業だ。


「店長ォ〜。今日出すの、どの箱だったっスかねェ〜」


 店の奥から段ボール3箱を抱えて出てきたモヒカン男──アルバイトの三井サトル。

 先日の騒動の後、住み込みで五稜ソウマの店で働かせていた。


 運命によって勝敗や引きの良さが左右されてしまうこの世界で、この世界に元々存在していない異世界転移者は一切の運命補正を受けられない。それどころか、相手が原住民ならばカードの引きが悪くなるような運命に定められていたりもする。

 カードの強さで全てが決まるこの世界においては致命的。仕事も飯も家も手に入らず、都心のコンクリートジャングルで餓死するしか無い。故に五稜ソウマは三井サトルを迎え入れたのだ。


 言動外見は完全に世紀末のチンピラだが、この三井サトルという男、なかなかどうして賢い。要領もよく、外見通りに体力自慢。正直大当たりすぎる拾い物だった。


「一番上を開封してね。

 下二つはカウンターの下に置いておいて」


「了解っス〜」


 しかも聞き分けも良い。考えてみればこの時代に合わせて【レックスジャンプ】を一から組んで持ってくるような子だ。しっかり教育すれば化けるだろう。


 未来は明るい。

 ……運命さえ無ければ。


「さあ、開店だ!」


 暖簾を掛けて、店の扉を開く。

 【五芒星】の看板を店先に立てる。


 この世界において最も重要な職種──カードショップ。その店長である五稜ソウマは、今日も業務に勤しむのであった。




──◇──




 カウンターに五稜ソウマと三井サトルが並ぶ。

 それなりに大きめの店舗とはいえ個人営業。基本は何人かのアルバイトと、万引き対策の警備員で回している。

 だが平日の開店から昼間まではそこまで忙しく無いので、住み込みの二人が店員をやっていた。


「……しかしめちゃくちゃ大量にあるっすねェ、カードパック。毎日新弾が届くじゃないっすか」


「カードが世界の基盤になっているからね。一企業が刷るだけじゃ追いつかないよ」


 カードショップを開くためのライセンス所得に丸1年。この世界にとってカードショップとは宝石店……というより、剥き出しの現金が置かれている銀行のような……ともあれ、大人気な職種なのだ。バイトの倍率も激高だ。


 このアニメ世界において[スターバトラー]を生み出した企業そのものは【白瀬財閥】一つだけ。しかし数多の小売業種は自分達でカードを刷り、パックを発売している。

【白瀬財閥】はそれらのカード全てのデータを受け取り、カード認定を出す事で利益を得ている。勿論数ヶ月に一度【白瀬財閥】もカードパックを排出するし、そのパックは他のものと比べて人気が比じゃないのでショップが潰れるほどの大盛況になる訳だが……。


「アニメでは誰も知らないカードを使ったり、同じデッキを使う人があまりいなかったりするけれど……そもそも根本的にカード数の分母が僕達の世界とは大違いだからだね」


 カードショップ【五芒星】で取り扱っているカードパック、現在200種類を突破。

 この手当たり次第にカードが刷られる現象は、恐らく二つの現象を現実的に再現するためのものだ。


「アニメのキャラクターが特定のテーマを組んでいたり、誰も知らないカードを使ったりしているのはこのためだね。運命に選ばれた人は、なんとな〜く自分に合ったカードがパックから出るようになっている。ここの原住民はそれが当たり前のものだと思っている」


「めちゃくちゃ種類がある上に何が入ってんのかパック収録リストすら公開されてねェのは、そのランダム性を利用してキャラクターに特定のカードが出るよう運命が操作されてるって事っスか。

 汎用的な有名カードとかも満遍なく全人類に配れるっスよね。

 運命が出しゃばるとランダム性は全部意図的なモンになるって訳かよォ……」


「理解が速すぎる。まぁそういう事なんだけども。

 例えば僕はここ暫くずっと【サイクルビート】を握っていて、この周辺では"【サイクルビート】を使う堅実なプレイが得意な店長"って感じに思われている。

 そうなるとパックを剥けば……」


 おもむろに五稜ソウマはカウンター下の段ボールからパックを一つ取り出して剥く。

 ──当然のように[シグナルレッド]が1番上に入っていた。


「ほらね?」


「スゲェ。でも弱ぇ。

 めちゃくちゃ不便じゃないっスか?」


「うん。パックからカード集めるのは諦めたよ」


 そもそも【サイクルビート】を組むようになった切っ掛けは、この世界で売られていた構築済みデッキに【除去シグナル】があったから。

 五稜ソウマはとある事情で自分の持ち込んだデッキを使えなかったので、この構築済デッキを軸に街中のカードショップで相性の良いカードを掻き集め戦っていた。

 ……多分、その必死さが面白くてやや運命補正を得られりしていたのだろう。


「そ(・)う(・)い(・)う(・)人(・)と認知されると、この世界では途端に強くなる。だからまだ来たばかりの三井くんは運命補正が入らずメタクソに手札事故していたんだね。

 【レックスジャンプ】なんてド安定デッキ、事故でも起こさない限り負けようが無いんだから。運命側も困ってただろうねぇ」


「安定感で選んだのが仇となった訳かよォ……」


 現実世界のカードゲームでは、事故率の低下──安定性と再現性が最重要視される。

 だがこの世界では、その人そのデッキにおいてや(・)り(・)た(・)い(・)事(・)が再現できるのは当たり前なのだ。


「三井君の【レックスジャンプ】は多くのサーチ札で手札を枯らす(減らす)から妨害防御が多く積めない(入れられない)。でもこの世界ならサーチ札を全部妨害に回せるし、なんならピンポイントな防御札だって入れたっていい。運命がそう選ぶなら、大抵引けるからね」


「アニメのキャラクターが変にピンポイントな防御カードとか使ってたりの再現って事スかねェ〜」


 勿論運命によって弱体化していた事もあるが、現実のデッキのようなサーチや複数積みを前提とするデッキでは根本的に相手に対処するためのカードを入れる枠が足りなくなる。デッキに無いカードはどう運命が転ぼうとも引き寄せられないのだ。


 だが、ならばそれに合わせればいいのかというと、これもまた異なる。


「三井君とはここ数日、寝る前にカードバトルをしているけれど……君が勝ってるよね?」


「っス。マジであり得ねーくらい普通に勝ってたっス。てか店長が事故る事も多かったっスよね。

 今の所俺の勝ち越しっスけど……なんでなんスか?」


 そう。これまでの話は、運命が作用した場合の話。

 普通に戦えば【レックスジャンプ】はちゃんと三井サトルの評価通りの活躍をするのだ。


「運命の干渉には強弱がある。恐らくあの公園での一戦は、君か僕のこれからの運命を大きく左右してしまうものだったんだよ。

 多分君だと思うけどね。餓死寸前だったし」


「もし勝ってても警察来てたっスよねェ……。流石にこの世界でも金銭賭けるのは違法みてェだし。

 んでもって夜に異世界転移者同士がただ単純にカードバトルするだけなら運命も見向きしないって事っスか」


「その通りだよ。そしてそれはこの世界の住民同士にも言える事だ」


 特に何もない、なんて事ないカードバトルでは現実同様に安定したデッキが強くなる。

 だからこの世界の住民もそれが強いデッキだと信じているわけで……だが恐らく、運命の影響を強く受けるアニメメインキャラクターはその段階から運命が働いているのだ。


 だから強い人のデッキは現実的ではない構築で、それをコピーしたところで勝てる訳ではない。運命が働いていないのだから。


「……よく異世界転生とかであるけれどさ。生まれながらの魔力魔法や地位権力で全てが決まっちゃう世界。

 ここもそうなんだよ。生まれながらに運命に選ばれた人だけが成り上がって、それ以外はモブだ。

 街頭テレビに映るプロバトラーに憧れる子供は、絶対にそこに立てない。

 ……随分と酷いと思わないかい?」


 五稜ソウマは運命に抗う。

 異世界転移者はその足掛かりに必要で──しかし三井サトルは該(・)当(・)者(・)では無かった。

 今はまだじっくりと準備をしている最中。焦ることも急ぐことも無い。




「こんにちはー!」




 元気よく、がらんがらんと入り口のベルが鳴る。

 本日最初の客──その姿を見て、三井サトルは固まった。


 快活な少女。ハーフパンツにカーディガンで、健康的な脚が丸出し──であるが、そこではなく。




 競泳水着だ。




 何故か少女が競泳水着で街中を歩いていた。

 いや一応ハーフパンツでカーディガン羽織っているけども。青い髪に笑顔が眩しい美少女には、見覚えがあった。


 三井サトルは[スターバトラー]のアニメを見て育ったが、それは何作品もある内の後半の方。この世界である[スターバトラー(無印)]については未履修である。

 だが、知っている。何故なら大きなお兄さんに大人気だったから。アニメが終わっても定期的に(主に夏冬に)二次創作のイラストとかが増えるから。男なら多分誰でも知っているほどの有名ヒロイン。


[スターバトラー]の人気に一役買っていると言っても過言ではない(※過言です)、数多の少年の性癖を壊した小悪魔──[スターバトラー(無印)]ヒロイン、青葉ウミその人である。


「やあ青葉君いらっしゃい。学校は?」


「昨日水泳の地方大会だったから今日は休みです!」


「へぇ。結果はどうだった?」


「当然優勝です! えっへん」


「じゃあ5パックプレゼントしよう。優勝祝いだ」


「えー!? やったぁ店長さん好きー!」


 笑顔が眩しすぎる。消し炭になりそう。

 突然の美少女に脳内で瀕死になりつつある三井サトルだが、その一方で和やかに対応する五稜ソウマのなんと頼もしい事か!

 流石店長は大人の男。経験値が違うぜ──と尊敬する三井サトルだが、ふと気付く。


 店長、視線が泳いでね?


 ──ここ数日、三井サトルと五稜ソウマは事あるごとに[スターバトラー]について話していた。

 この世界では希少な、現代を把握している者同士。色々と齟齬もあるかもしれないと、お互いの境遇を語り合った。


 三井サトルは[スターバトラー]歴3年。最初はカードショップ店舗大会の景品狙いだったのがズルズルとハマっていった形だ。主にカードゲームとしての側面で[スターバトラー]を楽しんでいたため、アニメについては幼少期(と言うと五稜ソウマが落ち込んだが)に見たくらいで、そこまで明るくない。


 一方の五稜ソウマはゴリゴリの[スターバトラー]オタクである。

 子供の頃の娯楽から始まり、アニメは4シーズン13年リアタイ視聴。大人になってから公開された劇場版は10回は見に行った。

 友人と内輪で楽しみつつ、どちらかというと[スターバトラー]というコンテンツそのものを楽しんでいた。

 つまり熱心な[スターバトラー]のファンである。


 [スターバトラー]で育った男が青葉ウミに惚れない筈が無いのである。自明の理。


 五稜ソウマ(28)

 性癖:競泳水着・快活美少女


 原作キャラへの敬意と信仰心から、現在青葉ウミ(性癖)から全力で目逸らし中である。


「……そうだ! 三井君、折角だから一度青葉君とバトルしてみないか」


 これ以上は気が持たない。苦肉の策である。

 言い出してから考えたが、原作キャラ──ゴリゴリに運命に選ばれた青葉ウミがどれだけ理不尽なバトルをするのか、身体で覚えるいい機会でもあるだろう。

 うん。合理的合理的。冷静冷静。


「いいんスか?」


「バトルを挑まれたら断らないよー!

 一丁派手にキメちゃおう!」


 快活美少女が朗らかに笑う。

 後ろで店長が拝んでいる。こいつ本当は青葉ウミがカードバトルする所が見たかっただけじゃ無いだろうな。

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