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【完結保証】カードゲーマーは運命に抗う  作者: まとかな


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13/14

5-2 溺れるほどに熱く/蒼焔の悪魔

【カードゲーム[スターバトラー]のルール!】

・モンスターは下級・中級・上級の3種類あるよ!

 下級は無条件で毎ターン1体出せるよ!

 中級上級は出すのに一手間かかるよ!

・下級は出たターン攻撃できないよ!

・戦闘で同級は相打ちになるよ!

 格下には一方的に殴り勝てるよ!

・初期ライフは5つだよ!

 モンスターに殴られてライフが0になると死ぬよ!

──[スターバトラー]シーズン4


 [スターバトラー(無印)]を除き、3年毎のアニメ展開に合わせてシーズンが切り替わっている。シーズン4は13〜15年目、アニメは4作目。


 悪名名高い超インフレ時代である。


 背景ストーリーは、シーズン2の背景ストーリー主人公が遺した遺産を巡る物語。

 シーズン3に登場した舞台が廃墟として登場したりと過去作要素が多く、初の背景ストーリー解説ブックが発売されるなど背景ストーリーそのものの人気が高かった。

 遺産を巡る先で、その遺産によって封印された炎の悪魔が解放されてしまう。遺産を奪い合った原住民達は手を取り合い、遂には炎の悪魔を討伐する──といったストーリーだ。


 悪魔の名は【アビスゲート】。

 シーズン4のラスボスにして、実に主人公側テーマ8種類(その内2テーマは途中から合一化したため実際は7種類)をたった1テーマで相手にした強大なる存在。


 門が開けば【アビスゲート】登場の余波で周囲の森は全焼。なんなら主人公側の1テーマはその余波で吹き飛んで壊滅状態になっている。

 最終的に星の7割を焦土にして戦いが終結したのだが──こんな厄ネタを、この世界で使ったらどうなるか。


 アニメ[スターバトラー]オタクである五稜ソウマは、背景ストーリーである【アビスゲート】がアニメ本編に登場していない事を知っている。

 背景ストーリーのカードをアニメのモブキャラが使うという事はままある話だが、【アビスゲート】に関しては五稜ソウマの記憶では1枚も出た事見た事は無い。背景にチラッと映ったカードさえリスト化して確認している変態的なオタクである五稜ソウマの記憶でさえ、である。


 つまりこっちの世界での【アビスゲート】がどういった立ち位置になるか不明なのだ。

 五稜ソウマにとっては[スターバトラー]人生の全てを注ぎ込むほど溺愛している【アビスゲート】。異世界転移に伴い当然のように持ち込んだそれは、とても気軽に使えるものでは無かった。


 ──だがここならば。

 海のど真ん中ならば、もし【アビスゲート】が暴走しても多少は何とかなるだろう!


 多分!




「墓地の【アビスゲート】1体を墓地から追放領域に置く事で──[アビスゲート・ナヘマヌート]を墓地から場に呼び戻すよ」


 業火。蒼焔がガラクタを纏い現れるは、五稜ソウマよりも大きな巨大ネズミのような悪魔。

 海を焼きながら海面に立つ、第十位の悪魔。


「墓地から……!」


「同じ要領で残りも呼び出そう。

 [アビスゲート・リリィツプス][アビスゲート・アンドロメダ][アビスゲート・ヴァールクブ]!」


 第九位、巨大なリスの悪魔リリィツプス。

 第八位、巨大なアリの悪魔アンドロメダ。

 第七位、巨大なハチの悪魔ヴァールクブ。


 【アビスゲート】の下級モンスター4種類が出揃う。

 下級モンスターであるが故に出たターンは攻撃出来ないが──地獄の先兵に隙はない。


「リリィツプスは自身に攻撃不可の制約を課す事で下級モンスターを破壊できる。ヴァールクブも同様に、下級モンスターを手札に戻す。絵画トークン二人には退場願おうか」


 猛る業火が絵画を焼く──カードとして存在しないトークンは、手札に戻る場合は消滅する。実質的な除去だ。


「対応。自分のモンスターが2体以上場を離れた時、手札から魔法[失意の失墜]を発動する。

 私は相手のモンスターの数だけドローさせてもらう──4枚だな」


【星月夜】の基本スタンスは、戦闘を視野に入れない事で大量に妨害を入れられるというもの。手札が増えれば増えるほど、妨害の質も上がっていく。

 だが──それを許す悪魔達ではない。


「更に対応! 墓地の[アビスゲート・アデスアゼス]と[アビスゲート・スターアディ]を、場のアビスゲート2体ずつを追放する事で場に出す!」


「場からも追放できるのか……!」


 アビスゲートの共通ルール。出すために追放するアビスゲートは、手札でも場でも墓地からでもよい。

 現れるは中級──必要な犠牲は2体。


 第五位、翼を持つクマの悪魔アデスアゼス。

 第四位、翼を持つゾウの悪魔スターアディ。


 場のモンスターが4体から2体になったことで、黒スーツのドローも2枚まで減らされてしまった。


「中級すらこうも容易く──」


「墓地から出たアビスゲートは全員このターン攻撃出来ないから安心していいよ。

 ……死期が遠のくだけだけどね」


 下級より更に巨大。既に見上げるほどのサイズである中級の悪魔達。

 だが、所詮は攻撃すら敵わないウドの大木だ。


「ちなみに。言わないのはズルいから言っておくね。

 スターアディがいるとバウンス(手札に戻す)効果はお互いに無効化されるよ。

 【星月夜】の除去はバウンスに寄ってるからね。手札から出せなくするデッキだものね」


「──ぬ」


 五稜ソウマの語る通り、黒スーツは相手モンスターを手札に戻す魔法[タービュランス]を持っていた。

 黒スーツが運命に選ばれているからこそ引けたが、五稜ソウマはそれを後出しで予防してきたのだ。


「さて。地獄はまだ終わらないよ。墓地のアビスゲート2体を追放して[アビスゲート・ベルフツール]を呼び出すよ!」


 第六位、翼持つサメの悪魔ベルフツール。アビスゲートの中級悪魔が出揃った。


「ベルフツールがいると、お互いに攻撃以外でライフを増やしたり減らしたりできない。

 あとアデスアゼスがいるとそっちの攻撃先を僕が決める事ができる。

 そして中級のアビスゲートは相手ターン終了時、墓地のアビスゲートと入れ替える事ができる」


 地獄の門が開く。夜闇の海は蒼焔に照らされる火炎世界に変貌していた。

 ──まだ五稜ソウマの墓地は尽きない。


「更に更に! 墓地から3体のアビスゲートを追放して──っ、[アビスゲート・ベルゼリ]を墓地から出すよ!」


 第二位、大蛇のような蒼焔の悪魔ベルゼリ。

 中級悪魔を遥かに凌駕する──海上故に比較物が無いが、高層ビルを見上げるかのような巨躯巨体の上級悪魔。遥か高みから、釘で刺し貫かれた瞳で戦場を俯瞰する。


「ベルゼリは、お互いの手札を全て破壊する!」


「──対応! 魔法[つまずき]! モンスターの出た時の効果を無効にする!」


「墓地の魔法[追放免除]を追放して対応! このターン10枚以上カードが追放領域に置かれている場合、なんでもカードを無効にできる!」


「墓地からだと……っ、更に対応! 無効効果を無効にする[カウンターカウンター]でその効果を止める!」


「墓地にはまだ[追放免除]があるよ。対応して更に無効!」


 怒涛の応酬は五稜ソウマに軍配が上がる。

 だが──この対応に込められた意味を三井サトルは理解した。

【アビスゲート】などの大量の墓地を利用するデッキは、ここまで派手に墓地が溜まれば無敵と言える。

 だが墓地からの妨害は手札からの妨害と比べるまでもなく少なく、発動条件も厳しいものばかり。万能無効の[追放免除]を無駄遣いする訳には行かないが……。


(それでも相手は黒スーツ(運命力持ち)だからよォ〜……1枚でも手札残したら、逆転されかねねェって事かよ。理不尽が過ぎるぜ)


 一片の容赦も油断も無い。厄災を従える悪魔の王となった五稜ソウマは、しかしまだギリギリの位置にいる。

 なるほど、豪快な墓地肥やし(落とし)でデッキのほぼ全てを墓地に置けば、引き運の問題は解決される。だがそれでも根本の疑問が残った。


 ──そもそも墓地肥やしのカードを、どうやって初手に揃えたのか。


 三井サトルが知る限り、【アビスゲート】は確かに強いが現代環境に名乗りを上げるほどではない。稀に入賞の報告が上がって"気合い入ってるなぁ"と感心するようなくらいだ。


 原因は至ってシンプルに事故率の高さ。

 そも墓地肥やしが必要なデッキとは、一度墓地に落としてからでないと動けないという事。

 墓地に落とすカード自体は、ただ墓地を増やすだけでしかないという事。

 つまり普通のデッキと比べ、墓地肥やしでワンアクション挟まる事自体が事故に繋がるのだ。まず墓地肥やしカードを引かなくては動けず、引いたとしてそれ1枚分の損失も背負わなくてはならない。だから墓地で動くデッキというのはいつの時代もなかなか結果を残せない。


 普通に使っても手札事故は必至。だのに五稜ソウマは何故、ここまで都合良くカードを引けたのか──




[turn.2]

──◇────◇────◇──

[運命の破壊者]五稜ソウマ

【アビスゲート】(8t後敗北)

 Life◇◇◇◇◇ hand0

[アビスゲート・ベルフツール]中級/火/悪魔

[アビスゲート・アデスアゼス]中級/火/悪魔

[アビスゲート・スターアディ]中級/火/悪魔

[アビスゲート・ベルゼリ]上級/火/悪魔

 ──VS──

[運命の叛逆者]黒スーツ

【星月夜EW】

 Life◇◇◇◇◇ hand0

──◇────◇────◇──


──[turn3.黒スーツ]──




 【アビスゲート】の危険性を考慮して2年間使って来なかった。愛想尽かされていたらと思ったけど、ちゃんと動いてくれるみたいだ。

 

燃える海面の熱が頬を焦がす。間違いない。【アビスゲート】はマジの悪魔だ。ただのカードじゃない。

 ベルゼリを出した時の頭痛。どうにも僕の精神を削る性質があるのかな。まぁ悪魔だし、仕方ない。


 【アビスゲート】を使うためには、必要な要素がある。

 ただでさえ事故と隣り合わせのデッキ。しかも墓地送り、追放、墓地蘇生などなど必要なアクションの全てが現代においてはあらゆる妨害を受けてしまう。相手が原住民だろうと異世界転移者だろうと、こうも目に見えた弱点があるならば運命はそれを悪用するだろう。超安定の【レックスジャンプ】でさえ事故らせるんだから。


 だから、運(・)命(・)が(・)僕を見るようにしなくちゃいけない。


 僕が最後の歯車だったんだ。

 [スターバトラー(無印)]の物語をなぞるこの世界で、僕は致命的な失敗をした。

 ──だから、僕が取り戻すしかない。


「銀閣寺君には陸を任せた。今、君を止められるのは僕だけだ」


「なんだと……」


「君に……"ブラック財団"にグレン君のデッキが戻れば、状況は変わらなくなる。世界はまた停滞する。

 だから、お(・)ま(・)え(・)は僕に力を貸さなくてはならない」


 ──黒スーツ君、ではない。

 存在しているのかも分からない。

 この言葉が届いているのかも分からない。

 だが、それでも。


「僕が赤坂グレン君を取り戻す。

 そしてもう一度、最終決戦まで運命を戻してみせる。

 ……だから、僕に力を貸せ。くそったれの運命!」


 瞬間。

 五稜ソウマの姿が、明(・)瞭(・)に(・)な(・)る(・)。

 それまで確かにそこに存在していたものの、どこか朧げだった──居ても居なくてもいい存在が、まるで実体化したかのように。


「運命を取り戻す、だと……! 貴様が壊したのにか!」


「壊したから、僕が戻すんだ。

 気付いているだろう。僕のデッキが運命に導かれている事に」


 この場この状況では、五稜ソウマが勝たなくては物語がまた停滞してしまう。だのに【アビスゲート】なんていう博打を持ってくるものだから、運命はとりあえず手札に干渉して[デンジャラスハラキリ]を初手に与えた。

 だが今回はそれとは異なる。


 ──運命は、五稜ソウマと契(・)約(・)した。


 赤坂グレンを取り戻し、本来あるべき場所へ戻す。

 そのために五稜ソウマを、赤坂グレンの代(・)理(・)として運命力を与えたのだ。


「ふざけるな。部外者の乱入など許すものか。

 貴様、貴様が貴様の勝手で壊した世界に! どの面下げて混ざり込もうというのか!

 貴様とて、運命に翻弄されていただろうに!」


「それでも、決めたんだ。止めたければかかっておいで。

 今の君のデッキでは、もう無理だろうけどね」


【星月夜】はロック性能を[星月夜]に任せて残りは妨害・除去に委ねる。たった1枚のドローで逆転できるようなカードは、無い。


「──クソ。ターンエンドだ──」


「ベルフツールとアデスアゼスの効果。ターン終了時、墓地のアビスゲートと入れ替わる。

 さあ、これで最後だよ。[アビスゲート・ルキフグス]──[アビスゲート・サタン]!」


 出ずるは第三位、ベルゼリと並ぶ巨人ルキフグス。

 そして──門を打ち砕き現れるは最高位。蒼焔に焼かれ然し爛れる事ない、光と闇の翼を広げる天使(悪魔)──サタン。


 海面が揺れる──五稜ソウマの視界も揺れる。

 胸の奥が焼けているかのようだ。外気が冷たい。

 運命に導かれた五稜ソウマは──この世界にない深淵の悪魔達を従える存在になった。まだ気を失うわけにはいかない。


 ターンが帰ってくる。この一戦において運命は全て、五稜ソウマに集っていた。黒スーツがたった1枚で逆転する事はない。


 急がなくてはならない。

 五稜ソウマはカードを1枚引いて──サタンを見上げる。

 悪魔の最高位は、無感情に五稜ソウマを見下げる──指示を待っているのか、それとも自らを縛るプレイヤーという鎖が斃れるのを待っているのか。

 五稜ソウマは、小さく笑う。


「──手加減、してね」


 悪魔達は嗤う。

 ──それもまた一興。


 蒼焔の洪水が、全てを焼き尽くす──




 ──◇────◇──

 五稜ソウマ win!

 ──◇────◇──

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