4-4 運命の歯車/運命の袋小路
【カードゲーム[スターバトラー]のルール!】
・モンスターは下級・中級・上級の3種類あるよ!
下級は無条件で毎ターン1体出せるよ!
中級上級は出すのに一手間かかるよ!
・下級は出たターン攻撃できないよ!
・戦闘で同級は相打ちになるよ!
格下には一方的に殴り勝てるよ!
・初期ライフは5つだよ!
モンスターに殴られてライフが0になると死ぬよ!
[turn.2]
──◇────◇────◇──
[主人公の妹]赤坂ホムラ
【スターゲイザー】(9t後敗北)
Life◇◇◇◇◇ hand5
[スターゲイザー・ドラゴン]上級/火/竜
──VS──
[宵闇のサイキッカー]黒コート
【星月夜EW】
Life◇◇◇◇◇ hand4
[絵画トークン]下級/光/悪魔
[絵画トークン]下級/光/悪魔
──◇────◇────◇──
──[turn3.赤坂ホムラ]──
「赤坂グレンは我らが"ブラック財団"と最終決戦をする予定だった。
赤坂グレン、白瀬ショウ、黄島ハルト、青葉ウミ……そこに混ざった部外者が五稜ソウマだ。
奴は最初は大人しかったが……最後の最後で余計な事をした」
黒コートは語る。
【星月夜EW】が成立するためには、後はただ凌ぐのみ。語る暇などいくらでもある。
特殊勝利まであと9ターン。
赤坂ホムラに残された時間は5ターン。
ホムラにターンが回ってくるが、既にモンスターを出したホムラは、[星月夜]の効果によってこのターン手札からモンスターを出せない。
トークンを[スターゲイザー・ドラゴン]で倒す事は出来るが──2体倒さなくては[星月夜]のロック効果は解除されない。
カードを引くホムラ。打開策は……引けない。
「ホムラちゃん。少しでも手数を揃えるんだ。
[星月夜]は盤面に2体以上出しておけば戦闘破壊でロックを簡単に解除できるからよォ。
このターンは捨てて、次のターンから構えるんだ」
「……そう、そうね。このターンはもうモンスターを出せない。
バトルに入るわ。[スターゲイザー・ドラゴン]でトークンに攻撃!」
赤熱の竜の腕は、霧を払うように。トークンは霧散するも、まだもう一体残っている。
毎ターン都合良く[星月夜]を引けるはずも無い。そもそもそのリカバリー手段ばかり入れれば妨害札が足りなくなってしまう。ならばトークンを減らす事には意義がある。
──というのは、あくまで現実の話である。
[turn.3]
──◇────◇────◇──
[主人公の妹]赤坂ホムラ
【スターゲイザー】(8t後敗北)
Life◇◇◇◇◇ hand6
[スターゲイザー・ドラゴン]上級/火/竜
──VS──
[宵闇のサイキッカー]黒コート
【星月夜EW】
Life◇◇◇◇◇ hand4
[絵画トークン]下級/光/悪魔
──◇────◇────◇──
──[turn4.黒コート]──
「赤坂グレン達との戦いは熾烈を極めた。
我ら四天王も突破され、残されるは我らが王と──外部顧問のみ。
その場でカードバトルできたのは赤坂グレンと、共に行動していた五稜ソウマのみ。
そう。外部顧問もまた異世界転移者。なればこそ、外部顧問は五稜ソウマが倒すべきだったのだ」
「……あなたのターンよ」
「そうだぜお喋り野郎がよォ〜。特技は独り言かァ?」
挑発こそすれ、赤坂ホムラも三井サトルも黒コートの話には聞き入っていた。
三井サトルは疑問に思っていた。
この世界がアニメの世界だとして、どのあたりなのか。
4年続いたアニメ[スターバトラー(無印)]のどの時期なのか、そこまでアニメに詳しくない三井サトルには分からない。
分かる事はひとつ。自分でも知っているあの初代主人公──赤坂グレンの姿だけが、どこにも無いという事。
「魔法[絵描きの筆]を発動する。
墓地から[星月夜]を回収し、再度[星月夜]を発動する」
[絵描きの筆]は黒コートの使う[耳長の絵描き]に関連する芸術関連のカードをデッキか墓地から手札に加えるサーチ&サルベージ魔法。
自身に関わる[耳長の絵描き]関連のカードは運命力によって好きに引き込める黒コートだが、使用済みの[星月夜]を再利用するために必須のカードである。
つまり、実質2種類の[星月夜]を限度枚数いっぱいまで使える。赤坂ホムラは特殊敗北するまで毎ターン[星月夜]の影響を受ける事が確定した。
[turn.4]
──◇────◇────◇──
[主人公の妹]赤坂ホムラ
【スターゲイザー】(7t後敗北)
Life◇◇◇◇◇ hand6
[スターゲイザー・ドラゴン]上級/火/竜
──VS──
[宵闇のサイキッカー]黒コート
【星月夜EW】
Life◇◇◇◇◇ hand4
[絵画トークン]下級/光/悪魔
[絵画トークン]下級/光/悪魔(星月夜効果対象)
[絵画トークン]下級/光/悪魔(星月夜効果対象)
──◇────◇────◇──
──[turn5.赤坂ホムラ]──
「五稜ソウマは戦わなかった。正史に存在しない外部顧問を恐れ、自分では敵わないと考えた。
部外者は部外者が処理すればよいものを。愚かにもあの男は、赤坂グレンにデッキを託した」
「知らない相手がいるなら警戒するのは仕方なくない?
ソウマが戦うよりお兄ちゃんが戦った方が強いわよ」
「そんな事はない。異世界転移者は遥か未来のカードを扱うのだから、我々より強くて当然だろう。
何が運命か。見えないものを恐れ、自ら全てを壊したのだ」
赤坂ホムラの視界が揺らぐ。
カードが全てであるこの世界で、相手は超能力者だ。特殊敗北のカウントダウンが心身に影響を及ぼしている可能性はある。
毎ターン[星月夜]を発動されるのなら、戦闘でのトークン撃破に意味は無い。だが、手数さえあればトークン処理の後に黒コートの直接攻撃でライフを削り勝利できる。
すぐに攻撃出来ない下級の[星見の踊り子]を出すより──ホムラは攻撃を選んだ。
「[スターゲイザー・ドラゴン]で絵画トークンに攻撃。その時、効果発動!」
星見の竜は天高く飛び上がり、赤坂ホムラの手札へと帰還する。
主人公赤坂グレンのエースモンスター。その効果は、攻撃時に手札の上級モンスターとの入れ替え。
[星月夜]適応中は場のモンスターの総数が変わらないが──出すモンスターによっては話が変わってくる。
現れるは六足の巨獣。星を喰む悪食の獣。
「[星食いベヒーモス]と交代! そのままトークンを破壊するわ」
絵画を踏み潰し吠える凶獣。[スターゲイザー・ドラゴン]の早着替えに4年間付き合ってきた黒コートとしては見飽きた光景だ。
──故に[星月夜]を閃いた。
そうだと思っていた。
それは運命にそう定められただけだった
[turn.5]
──◇────◇────◇──
[主人公の妹]赤坂ホムラ
【スターゲイザー】(6t後敗北)
Life◇◇◇◇◇ hand7
[星食いベヒーモス]上級/火/獣
──VS──
[宵闇のサイキッカー]黒コート
【星月夜EW】
Life◇◇◇◇◇ hand4
[絵画トークン]下級/光/悪魔
[絵画トークン]下級/光/悪魔(星月夜効果対象)
──◇────◇────◇──
──[turn6.黒コート]──
「お互いのターン開始時、ベヒーモスは星屑トークンを生み出すわ」
凶獣の食べ残した星屑が集まり一つになる。
これでもちゃんと攻撃可能だ。下級特有の召喚酔いはあるが、相手ターンに出したこのトークンなら関係無い。
「絵画トークンは攻撃不可なんだよなァ?
手札から出さなきゃロックも関係ねェよなァ〜!」
「想定していないとでも?
そも[星食いベヒーモス]は赤坂グレンが私の[星月夜]を乗り越えるために使ったモンスターだ」
本来なら、本来の黒コートのデッキならば。毎ターン増殖する星屑トークンを処理できず敗れるだろう。
だが黒コートは運命を知り、デッキを調整された。
「五稜ソウマが赤坂グレンに授けたデッキは、赤坂グレンと何の関係も無い未来の環境デッキだった。
──運命はそれを良しとしなかった。
どんなデッキでも使いこなし勝利する赤坂グレンは、何も出来ず無惨に敗北した」
「信じないわ、そんなの」
「信じるしかないだろう。私はこの目で見た。
……見てしまったのだから……!」
自分を散々打ち負かしてきたあの赤坂グレンが、目の前で何もできずに負けた。しかも外部顧問との戦いで。
最終決戦にすら辿り着かなかった。赤坂グレンを置いて、五稜ソウマ達は逃げ延びた。
「2枚目の[星月夜]を発動。そして生き残った絵画トークンを1体破壊し、魔法[交通規制]を発動する。
次のターン相手はモンスター1体でしか攻撃できず、モンスターを犠牲に発動した場合このカードは手札に戻る」
攻撃も制限すれば、トークンを処理する手段は減る。
既に赤坂ホムラは追い詰められていた。
──あとは、時が流れるのみ。
[turn.6]
──◇────◇────◇──
[主人公の妹]赤坂ホムラ
【スターゲイザー】(5t後敗北)
Life◇◇◇◇◇ hand7
[星食いベヒーモス]上級/火/獣
[星屑トークン]下級/光/岩石
──VS──
[宵闇のサイキッカー]黒コート
【星月夜EW】
Life◇◇◇◇◇ hand4
[絵画トークン]下級/光/悪魔
[絵画トークン]下級/光/悪魔(星月夜効果対象)
[絵画トークン]下級/光/悪魔(星月夜効果対象)
──◇────◇────◇──
──[turn7.赤坂ホムラ]──
ベヒーモスが新たな星屑トークンを生み出す。
だが、いくらトークンがいても攻撃制限がある。
「お兄ちゃんはどうなったの」
「我々の方で保管している。死んではいない。
残されたのは逃亡者達の始末。だが赤坂グレンの惨敗を目の当たりにした我々も考えを改める必要があった。
線引きを探ったのだ。この世界に生きる我々ができる、デッキ改造の限界線を」
未来の知識は外部顧問がいる。だがそれだけを頼りに強いデッキを握るならば赤坂グレンの二の舞だ。
主人公である赤坂グレンでさえ、運命に見捨てられるのだ。その事実を見てしまったからこそ、慎重になる。
「我らがボスは敗北の未来から解放された。だが、世界の刻もまた同時に止まってしまった。
この時代は何だ? 輝かしい未来なのか──捨てられた並行世界なのか?」
「それで一番したっぱの貴方が実験台になっているのね。ご苦労様」
「事実、私はこのデッキを使えている。腹立たしい事に、だ。
こんな世界は必要か? 私が考えた赤坂グレン対策は既に運命に定められたものだ。我々は運命の奴隷か?」
「知らないわ。とりあえずお兄ちゃん返してよ」
「そうだぜ普通に誘拐だろォがよ」
「刻を動かさなくてはならない。我々の都合のいいように。そのためには赤坂グレンが必要なのだ」
運命は黒コートに傾いている。
それでも赤坂ホムラは諦めない。
「魔法[流星群]! 相手のモンスターを全て破壊するわ」
「妨害魔法[漁夫の両損]発動。2体以上のモンスターを破壊しようとする効果を無効にし、私は2枚ドローする」
届かない。
黒コートの美学に反する事でも、運命は彼がそれを使う事を許容している。
黒コート自体の思想など、運命には関係ない。
「ああ、呪いだ。
我々"ブラック財団"は運命という呪いから解放されたいのだ。
さあ、ターンを回せ。自らの手で自分の首を絞めろ!」
三井サトルは気付いている。
赤坂ホムラの脚が震えている事を。
どんなに大人ぶろうとも、彼女はまだ子供なのだ。
──これ以上は、見捨てられない。
多分何をしても都合のいい返し札を使われる。運命がカードバトルの結論を決めるのなら──
「そこまでだ!!!」
倉庫の壁が、爆発する。
過剰なライトに照らされて現れるは──ヒーロー。
「銀閣寺ヒイロだ!!! 通報を受け参上した!!!
出たな黒コート!!! 逮捕だ!!!!!!!」
「面倒臭い……いやもう本当に面倒な奴が来たな!
出たのはお前だろう!」
カードバトルが続行できる状況ではない。その隙を三井サトルは見逃さなかった。
「ホムラちゃん。踊り子ちゃん。今のうちに逃げるぜェ……!」
2人くらいなら抱えて逃げられる。バトル中に無理矢理乱入すればどんな影響を受けるか分からないが、今ならばゴタゴタに乗じてなぁなぁで何とかなるかもしれない。
「サトルさま。ホムラさまが気を失っています!」
「大丈夫っスよ。このくらい軽いもんだからよォ。
よく頑張ったぜ本当よォ〜……!」
こっそり逃げる三人。
その道は、暗がりでは無く。
──星夜の世界。
「──逃すか!」
「クソァ! 反則だろそのチート技はよォ!」
黒コートの絵画世界。またしても転移だ。
抵抗むなしく、三人はまた闇に呑まれ消えてしまった。




