↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結保証】カードゲーマーは運命に抗う  作者: まとかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

4-3 運命の歯車/星月夜に乞い願う

【カードゲーム[スターバトラー]のルール!】

・モンスターは下級・中級・上級の3種類あるよ!

 下級は無条件で毎ターン1体出せるよ!

 中級上級は出すのに一手間かかるよ!

・下級は出たターン攻撃できないよ!

・戦闘で同級は相打ちになるよ!

 格下には一方的に殴り勝てるよ!

・初期ライフは5つだよ!

 モンスターに殴られてライフが0になると死ぬよ!

 ──秋のある日。

 お兄ちゃんが帰ってこなかった。

 それ自体は割と今に始まったことじゃないけれど、今回は──何故か五稜さんが家に来た。


 五稜ソウマさん。

 お兄ちゃんがよく行くカードショップ【五芒星】の店長さん。直近ではお兄ちゃんと一緒に何処かへ行ってたみたいだけれど、どうして1人で帰ってきたんだろう。

 五稜さんは泣きながら、私に説明した。


 もうお兄ちゃんが帰ってこない事。

 そして、私は孤立してしまった、という事。


 私は──




──◇──




──◇────◇────◇──

[主人公の妹]赤坂ホムラ

【スターゲイザー】

 Life◇◇◇◇◇ hand5

 ──VS──

[宵闇のサイキッカー]黒コート

【耳長の絵描き】

 Life◇◇◇◇◇ hand5

──◇────◇────◇──


──[turn1.赤坂ホムラ]──




 事(・)件(・)の後。うろたえる五稜ソウマを問い詰めて全てを知った赤坂ホムラは、五稜ソウマの【五芒星】に転がり込むことにした。


 赤坂ホムラは今より5年後──高校生になった頃に、[スターバトラー]アニメ第二作目[スターバトラーNEXT]で出演するヒロインだ。

 だがその存在はアニメ[スターバトラー(無印)]中には殆ど出ていない。主人公赤坂グレンに妹がいる、というのはファンブックを読み込んだ一部のマニアしか知らない事だ。


 ──言葉を濁さず言えば、保険である。

 アニメ5年目にして初の主人公交代という前例の無い挑戦に際し、前作主人公の妹というキャラでファンを繋ぎ止めようとして無理やり起用されたようなものだ。


 あの赤坂グレンの妹。カードバトルは全戦全勝。公式戦初の黒星は二代目主人公によるもの。

 しかしその実力は中(・)学(・)生(・)時(・)代(・)に兄から教わったもので、成長性が凄まじく、事実二作目の3年間で何度も何度も強化イベントのあったものだ。


 ここで重要なのは。

 赤坂ホムラはアニメ二作目が始まるまで死なない事。

 そして──今の赤坂ホムラはまだ[スターバトラー]初心者であるという事だ。

 後に現実でも悪い意味で影響を与えた独特なデッキ【スターシーカー】は、今の赤坂ホムラの手にはない。

 だが──この世界で唯一主人公のデッキ【スターゲイザー】を握る者がいるのならば、それは彼女だろう。


「貴女の立場は把握しています。ですがこの時代では私の方が運命に選ばれている……!」


「運命なんて見てないわよ。

 私がこの時代にカードバトルなんてす(・)る(・)わ(・)け(・)な(・)い(・)じゃない」


 自分には未来がある──などと過信はしない。

 そもそも既に刻の止まったこの世界で未来などあるものか。


「ホムラちゃん。いつでも俺が代わるからなァ」


「三井さんじゃ勝てないわ。逃げてくれた方がいいのだけれど」


「ホムラちゃんがいくら強くて賢くて優しくてもなァ〜……ガキを1人にゃできねェよ」


「……ソウマもそうだけど。変な人たちね」


 気丈に振る舞う赤坂ホムラだが、この暫くの共同生活で三井サトルは理解していた。

 なんの変哲もない女の子なのだ。

 ましてや今は戦うためのデッキも持てない時代。

 というか未来でどう強くなる予定だろうがこの場この時の赤坂ホムラが強くなるわけではない。

 たとえ兄妹だからといって兄のデッキを使いこなせる訳がない。

 三井サトルは──最悪は運命に逆らってでも、あの黒コートと共に海に飛び込めるよう構えていた。


「私のターン、ドロー」


 最初の一手。この世界の原住民であるホムラはデッキの動かし方について知性デバフが入ってしまい、どうにも動かし方が不明瞭になる。テキストを読む目が滑る。

 この時代では弱かったという未来での設定が足を引っ張り、中学生になるまではこの最弱のままいなくてはならない。

 だが──兄である赤坂グレン(主人公)の戦いは、嫌というほど見てきた。そこに五稜ソウマ(異世界人)接触による認知の壁の破壊。ソウマのバトル指南についていけるほどには、動(・)き(・)を把握していた。

 効果がわからなくとも、兄が何(・)を(・)出(・)し(・)て(・)ど(・)う(・)し(・)た(・)か(・)だけならば覚えている──!


「[星見の踊り子]を場に出すわ!」


 現れるは主人公赤坂グレン終盤での定番モンスター。

 先程まで隣にいた踊り子が前に立つ。


「……本当にモンスターなのね」


「はい。宜しくお願いします、ホムラさま」


 兄がこれまで使ってきた踊り子。本当に使うようになったのは、時系列的にかなり最近のはずなのだが──五稜ソウマとの接触で認知の壁を破った赤坂ホムラは、この刻の止まった一年であらゆる矛盾に直面してきた。


 運命の整合性。踊り子は兄のデッキにずっと昔から入っていて、それはつまりずっと赤坂ホムラの様子もデッキの中から見ていたのだ。[星見の踊り子]が赤坂ホムラに向ける慈愛の目に偽りはない。

 ──思考を切り替える。今、回すべき頭はそっちではない。


【スターゲイザー】は多彩な防御カードで攻撃を守りながら高火力のドラゴンを通すデッキ。そこまでの速度は必要ない。

 兄と同様、下級モンスターを出してターンエンド。これが最善のはず。


「……私はこれでターンエンド」


「よし、それがいいぜェ」


 三井サトルも頷く。

 世界的に有名なカードゲーム[スターバトラー]において最も有名なヒロインカード[星見の踊り子]。

 その効果は三井サトルも知っている。当時にしては破格の性能だ。

 手札1枚を破壊の身代わりにできる除去耐性によってターンを跨ぎ、そして自分ターン開始時に手札の火のモンスターをタダ出しする。これで火の上級モンスターが2ターン目から殴りにいけるのだ。出した火のモンスターは相手に与えるダメージが1点減るが……。

 相手ターンを跨ぐ必要のあるシステムモンスターが除去耐性を持っているのはとても優秀だ。三井サトルが使い現実環境でも暴れた【レックスジャンプ】でも、中継地点の[孤高のダイナ-レックス]の除去耐性に悩まされたプレイヤーは少なくない。




[turn.1]

──◇────◇────◇──

[主人公の妹]赤坂ホムラ

【スターゲイザー】

 Life◇◇◇◇◇ hand5

[星見の踊り子]下級/光/人間

 ──VS──

[宵闇のサイキッカー]黒コート

【耳長の絵描き】

 Life◇◇◇◇◇ hand5

──◇────◇────◇──


──[turn2.黒コート]──




 黒コートは嗤う。

 何故こうなったのか。想定外の事態に戸惑う暇は無い。

 どうやら赤坂ホムラはこの世界の歪さを五稜ソウマに教えられたようだ。まだ子供だというのに巻き込む五稜ソウマの悪質さに憤るものの、それ以上の怒りが彼の腹の底に渦巻いていた。


「……五稜ソウマ。奴に振り回されて可哀想に」


「あ? シメんぞオラァ!」


「外野は黙っていろ。次殴ったら流石に痛い目に遭ってもらうぞ」


 赤坂グレンの妹。

 赤坂グレンのデッキの精霊。

 五稜ソウマに誘われた異世界転移者。

 ──腹立たしい。

 全て全て全て、五(・)稜(・)ソ(・)ウ(・)マ(・)が(・)元(・)凶(・)だ(・)!


「あいつの過ちがこの世界の刻を止めた。この世界が歪になったのは奴のせいだ!」


「訳わかんねェ事をベラベラとよォ〜……!

 じゃあちゃんと説明してもらおうかァ!?」


「よかろう。時(・)間(・)は(・)あ(・)る(・)。

 ──私は魔法[星月夜]を発動する」


 そのカードは、先程【五芒星】で見た闇のような絵画。

 何層にも塗り重ねられた夜闇の渦。

 ──それを三井サトルは知っている。現代にも通じるパワーカードだ。


 ──────

【耳長の絵描き】

 黒コートが使うデッキタイプ。

 原作アニメ[スターバトラー(無印)]のやられ役として活躍した黒コートは、下級モンスター[耳長の絵描き]を主軸に多種多様な魔法カードを使用する戦闘スタイルだった。

 これは当時その時にプッシュしたい新カードのお披露目のためのテーマで、既存のカードに強く新カードに弱いピンポイントなカードが多数あるアニメオリジナルのデッキだった。当時の現実側ではカード化はされていない。

 現実でカード化されたのは[スターバトラー]14年目。インフレ期と名高いその時代に、毎年恒例の過去アニメ作品未実装カードのカード化に抜擢された。

 ……が、敵組織したっぱの黒コートが使うご都合主義の微妙カード群ではあまりに集客効果が無さすぎる。故に単体で機能するようインフレ期に合わせて魔改造されて世に出されたのだが……。

 ──────


「[星月夜]なら俺でも知ってんぜ。テメェのカードだったかよ! つまりテメェは【星月夜】使い──」


「違う! [星月夜]はあくまで選択肢の一つだ!

 [星月夜]の効果で二体の絵画トークンを生成する!」


 現れるは絵の具の塊。カードバトル中に無から生成されるモンスター、即ちトークンモンスターだ。

 黒コートは激昂する。自分のデッキがど(・)う(・)使(・)わ(・)れ(・)て(・)き(・)た(・)のかも、彼は知らされた。


「次の私のターン開始時まで、絵画トークンを全滅させなければ、貴女は手札からモンスターを1体しか出せない!」


 本来は[耳長の絵描き]によって補助・強化されるカードだった。

 現実のカードとなった際にテキストが魔改造。目に見えた弱点である[耳長の絵描き]に依存せずに済むように、発動条件も何もかもが緩和された。

 しかしその結果現実では[星月夜]の単体性能のみが評価され、ただ強力なロックカードとして妨害特化デッキに組み込まれていた。


「手札から、1体まで……」


「落ち着けホムラちゃん。現実と違って相手は本家本元。そんなタチの悪い事ァ……しないよな?」


 ──そう。現実でどうであれ、この場にいる黒コートが使うべきは【星月夜】ではなく【耳長の絵描き】デッキ。

 なのだが──これが、"ブラック財団"の結論だ。


「このデッキは……この私が使う、このデッキは……!

 あぁクソ。全て全て五稜ソウマが悪い! あいつが悪しき前例を実演してしまったから、私がこんな実験をさせられるのだ……!」


 高らかに、忌々しく。黒コートが天に掲げるは──三井サトルもよく知るカード。


「[バッドエンドカウントダウン]発動!

 今より10ターン後、私は特殊勝利する!」


「結局【星月夜EW(エクストラウィン)】じゃねーかよォ〜!」


 ──────

【星月夜EW(エクストラウィン)】

[星月夜]実装に伴い生まれた多数のロックデッキの一つ。[バッドエンドカウントダウン]の特殊勝利まで[星月夜]と妨害カードのみで乗り切るデッキ。

 これに限らず、[星月夜]が実装されてからはモンスターでの攻撃をしない防御妨害特化のデッキが本格的に仕上がる事となり、後に[バッドエンドカウントダウン]と一部魔法サーチカードが1枚制限になる事でこのデッキタイプは消滅するが【星月夜】というデッキは種を変え品を変え現代まで使われ続けている。

 ──────


 道理に合わない。

 元々強力なデッキである【ディープアイ】を使う青葉ウミが【ディープアイ】を強化したり上手く使えたりしても本筋から逸れる事はない。

 だが──【耳長の絵描き】と【星月夜】は全く別物と言っていい。というか【星月夜】デッキには[星月夜]以外に黒コートの使うカードは入っていない。

 それはもう別のデッキ。たった1枚[星月夜]が入っていたところで、それを黒コートが使えるのか?


「……全ての元凶は五稜ソウマ。

 奴が赤坂グレンに干渉した事が全ての間違いだ」


 黒コートとてこんなデッキを使う事は不服だった。

 だがそれでもやらねばならない。五稜ソウマによって生まれた問題を解決しなくてはならない。


「さあ、ターン終了だ。……使うだろう、[星見の踊り子]の効果を」


「ホムラちゃん。[星月夜]のロックは次のヤツのターン開始時までだ。今出すと次のターンは何も出せなくなるぜェ」


「……出さない訳にはいかないわ。[星見の踊り子]の効果発動。[星見の踊り子]を手札に戻して──[スターゲイザー・ドラゴン]をタダ出しするわ」


 踊り子が転身──赫き焔を纏う蒼眼の巨竜が現れる。

 主人公赤坂グレンのエースモンスター[スターゲイザー・ドラゴン]。だが──その本領は発揮されない。




[turn.2]

──◇────◇────◇──

[主人公の妹]赤坂ホムラ

【スターゲイザー】(10t後敗北)

 Life◇◇◇◇◇ hand5

[スターゲイザー・ドラゴン]上級/火/竜

 ──VS──

[宵闇のサイキッカー]黒コート

【星月夜EW】

 Life◇◇◇◇◇ hand4

[星月夜トークン]下級/光/悪魔

[星月夜トークン]下級/光/悪魔

──◇────◇────◇──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。