舟番の古い仕事
古い骨笛の持ち主を知る船頭が、河港の西にいた。退役した舟番ダンツで、若い頃は川の濃霧で船を呼び戻す仕事をしていたという。笛は危険の知らせではなく、積荷を移す番を交代させるためのものだった。河岸には今もその音を覚える老人がいる。
シオンが笛を吹くと、ダンツは眉をひそめた。「三度目が高いな。あれは荷を横へ移せという合図だ」。盗品を別の舟へ載せ替える者が使ったのかもしれない。彼は河港の地図を広げ、かつての荷捌き場を三つ挙げた。
その一つは今、町会の共同倉庫になっていた。出入りするのは組合員だけで、夜には鍵が掛かる。ヨエルは非番の船頭から証言を集め、勝手に踏み込まぬようシオンへ警告した。以前、証拠を盗んで調査を止めた者の助言は信用されない。それは当然のことだった。
ダンツは笛を口に当てる前、穴の縁を布で拭った。古い道具でも人の息が直接触れるものだからだ。彼は笛を取り上げず、シオンへ返したうえで「使えば聞いた者も動く」と告げた。舟番だった頃の合図は、一度間違えれば荷だけでなく人も川へ落とす。シオンは音を武器にする危険を想像した。
ダンツは夕暮れに小舟を漕ぎ出し、古い桟橋の杭を調べた。新しい縄の擦り痕があり、夜間の荷の移動が続いているようだ。しかし小舟を出した者が犯罪者とは限らない。漁師も夜に舟を動かす。証拠を増やさねば誰かを濡れ衣で縛る。
シオンは桟橋の杭へ黒花を押す誘惑に駆られた。そうすれば相手が警戒し、姿を現すかもしれない。だがフォルがまだそこで働いているなら、真っ先に殴られるのは彼だろう。印のない杭を指で確かめ、シオンは舟番の家まで濡れた地図を運んだ。




