↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の美学――染物師の弟子は、最高のヴィランを目指す  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/156

砂色の革袋

春の小雨が続いた日、シオンの下宿へ見知らぬ老女が来た。砂色の革袋から取り出したのは、七枚花弁の札と、小さな骨製の笛だった。渡し場で恐喝した男たちは、笛を吹くと必ず集まったという。老女の孫は彼らに雇われ、姿を消したらしい。

「札の元を作ったのはあんただろう」。老女の声には責める響きがあった。シオンは五枚花弁の木版を見せ、偽物だと説明した。だが老女は顔をしかめた。「同じ黒い花なら、どちらでも怖いよ」。彼は言い返せなかった。印を最初に広めたのは自分である。

孫は十七歳のフォルで、石切場の仕事を辞めて港へ来た。母親を早くに亡くし、祖母の家を支えていたという。老女は彼が悪事へ加わったことも認めた。ただ戻ってきてほしいのだと告げた。シオンは孫の行為をかばわないと答え、その代わり行方を調べることを約束した。

老女はフォルの幼い頃を語った。壊れた靴を自分で縫い、祖母のために薪を割る優しい子だったという。シオンはそれだけで無罪にする気はなかったが、少年を見つければまず自分の口で話を聞きたいと思った。老女が帰るとき、下宿の急な階段を一段ずつ降りる音が長く続いた。

笛には魔術ではなく、船頭が使う音程の違う穴があった。河港の古い倉庫で合図として使われる型だという。シオンは船具屋へ行き、製造元を尋ねた。店主は十数年前に廃業した工房の品だと答え、もう手に入らないと話した。

夜、シオンは老女が置いていった札を机に並べた。七枚花弁には小さな傷が増えていた。人から人へ渡り、汚れた指で握られた跡だ。彼はその汚れを嫌悪した。だが札を作った者が誰であれ、自分の花が人を縛る道具になった責任から逃げたくはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。