穀物船の交渉
南の穀物船が入港すると、荷役組合と船主の交渉が難航した。船主は賃金を下げたい。組合は春の増水で危険が増した分、手当を求める。互いに仕事を失いたくないため、三日間も小屋で話し合った。シオンは窓掛けを直すため、その小屋へ出入りした。
船主の代理人は、最近の黒花の脅しを引き合いに出し、「港の治安が悪いなら賃金を抑えるべきだ」と主張した。組合長は不機嫌になり、警備費と賃金は別だと反論した。シオンは自分の印が、まるで便利な言い訳のように使われるのを聞いた。
窓の向こうでは若い荷役人が縄を編み直し、船頭は舟底の水を汲んでいた。交渉が止まっても、船は浮かぶために手入れが要る。シオンは議論に割って入らなかった。彼の名前が何を意味するかを知らせても、荷役人の賃金は上がらない。
交渉の間、港では一隻の帆柱が折れ、職人が昼休みを削って修繕した。組合長はその事故を手当の根拠として持ち出したが、船主は老朽化と作業危険を分けて考えるよう求めた。感情をぶつけ合うだけでは船が戻らない。シオンは乾かしていた窓掛けを裏返し、針を進めながら議場の数字に耳を澄ませた。
四日目、組合と船主は危険手当を増やし、普段の賃金は据え置くことで合意した。夜間作業の人員も増える。双方とも満足していないが、船は次の港へ向かえる。代理人は黒花の話を忘れたように、荷札を数え始めた。
シオンは空になった会議小屋へ入り、直した窓掛けを畳んだ。自分の悪名が争いを左右したと考えるのは簡単だ。しかし実際には、荷役人の腕と船主の費用が決定を支えた。彼は窓枠に残った小さな釘を抜き、道具箱へ戻した。




