七枚花弁の札
北街道の宿から、黒い花の札がまた見つかった。今度は花弁が七枚で、裏に貸金の取り立て先が記されている。以前の宿主が使った偽物と同じ版らしい。ハーディの逃亡先を知る者が、シオンの印を便利な恐喝の道具と考えたのかもしれなかった。
ヨエルは札を証拠袋へ入れ、持ち主を探した。貸金業者は札の意味を知らないと答え、取り立ては代理人に任せたと言う。代理人は姿を消している。町の木彫師は七枚花弁の版を作っていないと証言した。印を売り物にした少年も同じことを話した。
シオンは川向こうの旅芸人へ聞き込みをした。影絵で使う木版には花弁を増やす細工があり、誰でも似せられる。だが版の端に特徴的な欠けがあった。宿主が最初に使った札と今回の札は同じ欠けを持つ。別人が引き継いだか、版を売り払ったのだろう。
七枚花弁の札を持っていた農夫は、脅迫されたから買ったのではなく、夜盗避けになると勧められたと話した。彼の畑では作物が盗まれ、安い札でも心の支えが欲しかったという。ヨエルは札を没収せず、模様だけ写した。シオンは同じ木片が、ある場所では恐喝の合図に、別の場所では弱い祈りになることを知った。
夕暮れ、シオンは下宿の机に本物の五枚花弁を置き、七枚の写しと比べた。悪名が勝手に育つのではない。誰かがそれを金に換え、弱い者へ向けている。許しがたいのは模倣そのものより、名前を盾にして責任を逃れる手口だった。
翌朝、彼は初めて七枚花弁の札を集め始めた。買い集めるのではなく、見つけた場所と持ち主を記録する。紙を一枚盗み出すより時間が掛かる作業だ。彼は帳面を開き、持ち主の横に誰が損をしたかを書き添えた。




