西倉庫の食卓
公領との境に近い西倉庫で、見習いたちが働いた日の食事記録が見つかった。積荷の検査を担当した女性が、帳簿の紙質から同じ店の控えだと気づいたのだ。そこには一日三食の費用が記されていたが、実際には乾いたパンが二度出るだけだったという。
調査に来たリュシアの部下は、倉庫主の責任とハーディの偽装を分けようとした。倉庫主は通行料を取っただけで、見習いの管理を任されていないと答えた。彼が知っていたのは、夜に子供が荷を積んでいたことと、賃金をもらっていない者がいたこと。その沈黙も調査記録に残った。
シオンはカルナとともに倉庫へ布を届けた。窓辺の卓には温かい煮込みが置かれ、倉庫主の娘が夕食を待っている。家庭の穏やかさが、外の荷台で眠った少年の顔と重なった。彼は卓をひっくり返したくなったが、娘が何を知っていたか分からない。
倉庫主の娘は、食卓の向こうから父に仕事のことを尋ねた。父は忙しかったとだけ答え、詳しい話を避けた。娘は明日の宿題を見せ、母親は食器を片付けた。シオンは自分がこの家族を恐怖へ巻き込めば、父がしたことの代償を正しく払わせたことになるのかと考えた。答えが出る前に、カルナが彼を呼んだ。
カルナはシオンを倉庫の外へ誘った。「怒るなら相手を間違えるな」。その言い方は優しくなかった。彼女自身、昔は雇い主に賃金を踏み倒され、契約が切れるまで護衛を辞められなかったという。だからこそ手当たり次第に剣を振るわなかった。
夜更け、倉庫の女主人が台帳の写しを持って役所へ出向いた。夫の名が汚れるとしても隠せないと判断したのだ。シオンはその知らせを宿で聞き、ひとつの家でも考えが割れることを知った。悪と戦う者がすべて自分の味方になる必要はない。




