窓のない寝所
閉じた荷詰め場の奥には、窓のない小部屋があった。見習いたちは交代でそこで寝かされ、壁には一日分の作業量が炭で書かれていた。町会の調査員が入ると、少年の一人が「数が足りない日は晩ご飯が減った」と話した。衛兵は証言を記し、親を呼んだ。
シオンは調査員に同行できなかった。前科があり、利害関係者でもないからだ。外で待ちながら、窓のない部屋の戸板を思い浮かべた。彼が悪の王の伝記で好んだのは、広間に響く足音と誰も逆らえぬ静けさだった。貧しい少年たちの息を詰まらせるための小部屋ではない。
調査員が運び出した寝具には、粗末な縫い目が幾つもあった。何度も繕われ、洗う暇もなかったのだろう。シオンはそれを見て、ハーディが逃げることを許したくなくなった。しかし捕まえて殴りつけるだけで、見習いが失った賃金が戻るとは思えない。
閉ざされた寝所の戸には、夜中に内側から開けられぬよう外錠が付いていた。火事になれば逃げ遅れる危険がある。調査員はその事実を独立した違反として記録し、窓と非常口の設置を命じた。見習いの一人は寝台の位置まで覚えており、暗い部屋で眠れなかった夜を震えずに説明した。その静かさが、廊下の大人たちを黙らせた。
エダが夜間学舎へ寄付した衣類を届け、少年たちへ着替えを配った。彼女はシオンに会っても特別に話しかけない。店の給仕を続けながら余った布を集めたらしい。彼は衣類の山に新しい縫い糸を置き、受取人の名を確認して帰った。
閉鎖命令が出た夕刻、荷詰め場の看板は雨に濡れていた。『勤勉な若者に仕事を』という文字の端がめくれ、中の木地が見える。シオンはその看板を持ち帰らなかった。掲げられた約束と実際の扱いの差こそ、消してはならぬ証拠だった。




