布団代の算盤
荷詰め場の給金日、門前には十人以上の親が集まった。見習いたちに渡された額が、広告の半分にも満たなかったのだ。食事代、寝具代、道具の使用料。帳簿には細かな控除が並び、最後に受領者の拇印があった。ハーディは契約に従っただけだと説明した。
ネラは親たちの依頼で帳簿を調べ、控除の一部が二重計上されていると指摘した。役所の法務書記は契約の文面を確認し、未成年者の宿泊費を本人の承諾だけで増額できないと答えた。町会は営業許可を再審査することになったが、手続きには日数が要る。
シオンは門の外で様子を見た。ハーディは親の怒りを受け流し、倉庫の鍵を閉める。中に残る荷を別の運搬業者へ渡す算段を始めたらしい。売り物さえ移せば店を閉じ、責任から逃れられると思っているのだろう。
少年たちの布団は一枚ずつ番号を付けられ、退職時に返す決まりだった。番号の消えた布団については新品代を請求すると書かれている。ネラは古い品を新品として計上した行を見つけた。保護者の一人は怒りに震えたが、係員はまず現物を保全してほしいと頼んだ。粗末な布まで、返金のための証拠になる。
夜、シオンは運搬業者の荷車を訪ね、隠された二重帳簿の所在を尋ねた。業者は知らぬと答え、手を引っ込めた。袖口に新しい傷がある。荷詰め場で箱を運んだ際に切ったのだという。彼もまた賃金を待つ側だった。
翌朝、ハーディは急病を理由に休業した。少年たちの寝床は閉じられ、親は子供を迎えに走った。シオンは空の宿泊室を覗き、薄い布団が幾つも置き去りになっているのを見た。ぼろ布の値を釣り上げて人を縛った男は姿を消し、勘定だけが残った。




