見習いの欠勤簿
春市が終わると、河港の小工房で見習いが相次いで休んだ。病気ではない。新しくできた荷詰め場が高い日当を示し、少年少女を引き抜いたのだ。職人たちは腕を組んで困り、親たちは少しでも家計が楽になるならと喜んだ。シオンの古い工房からも二人が移った。
荷詰め場の主人ハーディは、短期契約で働かせた者へ食事と寝床を提供すると宣伝した。紹介状には町会の印に似た銀線が入っている。しかし町会は許可を出していない。シオンは縫い仕事を届けた際、賃金から布団代が引かれる細かな条項を見つけた。
少年の一人は字をよく読めず、説明も受けていなかった。シオンは主人に契約のことを尋ねた。ハーディは「嫌なら辞めればいい」と言う。だが辞めれば寝床を失い、布団代だけが残る。シオンは微笑んだ。あまりに貧しい言い訳が、かえって彼の神経を逆撫でした。
ハーディの門には『学べる仕事』と書かれた札があった。見習いの一人は、包装の結び方を習えると思って応募したという。実際は同じ荷を夜まで積み替えるだけだった。熟練の職人になる道を欲しがった少年に、主人は賃金と寝床しか示さなかった。父親はその違いを誰へ訴えるべきか分からず、札の前で立ち尽くした。
その日、少年の母が荷詰め場を訪ねた。息子に温かい夕食を届けたいだけだったが、門番は面会料を要求した。母は払わず帰り、町の相談所へ向かった。シオンが何かを起こす前から、同じ不審を抱く人間が増えていた。
夜、シオンはハーディの広告を壁から剥がし、裏面の契約条件を書き写した。人を縛る仕組みに美しさはない。だが彼が今すぐ門を壊せば、内にいる見習いたちの寝床まで奪う。黒い花の版を取り出し、印を押さずにしまった。明日、まず誰が賃金を握っているか調べるつもりだった。




